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石蕗学園物語  作者: 透華
83/107

思い出話と現状と 3

随分とお待たせしてしまい申し訳ありませんm(_ _)m

私生活が忙しくなってしまったため、暫く更新が遅くなるかと思いますが気長にお待ちいただけると幸いです。


 いつの間にか奥に入り込んでいた夏服をクローゼットから引っ張り出し、寝室の壁にハンガーでかけ、ふぅと一息ついた。何か今日1日だけで、物凄く色々あった気がする。学園生活の中でもかなり濃密な1日だった。

 学園から帰って来てから、すぐに木賊とくさ先輩に蒼依あおい刈安かりやすがすでに面識があったことと蒼依の朽葉くちはと刈安への印象をメールした。木賊先輩は、予想していたらしく刈安と蒼依が出会っていたことについても2人への印象についても、あまり驚いていなかったように思う。

 蒼依の2人に対する印象はどうやらゲームとそんなに変わらないらしい。もっとも、木賊先輩にもギャルゲーについては知らない部分が多く個々への印象についてはハッキリしたことは分からないらしいが。

 木賊先輩に疑問に思っていた“男主人公”にも“悪役令嬢”のようなライバルキャラはいるのか聞いたところ「居ない」との答えを受けとった。その時にはギャルゲー側は乙ゲーと比べて随分と難易度が易しいらしいと思ったものだ。

 だが、木賊先輩曰わく難易度はどちらもさして変わらないそうなのだ。というのも乙ゲーで厄介なのが“悪役令嬢”と攻略キャラ達だとするならばギャルゲーで厄介なのは攻略キャラはもちろんだが“男主人公”自身らしい。

 なんだそりゃ。という話だが“男主人公”自身が過去のトラウマを抱えているせいで、踏み込まないというか、ギャルゲーの主役のくせに恋愛をする気があまりないらしい。

 乙ゲーが“女主人公”の独白が多いことや“女主人公”自身に暗い過去が全くないのに対し、ギャルゲーは殆ど“男主人公”の独白がないという性質上、非常に“男主人公”の性格が分かり難く何故か途中から好感度が上がらないのだそうだ。

 そのためなのかは知らないがゲームの中盤から“男主人公”側の好感度が見えるようになり、その好感度を上げるためには攻略キャラが“男主人公”の過去の傷を理解し癒やし寄り添ってくれるような選択肢をプレイヤーが選ぶ必要があるらしい。ぶっちゃけゲーム変わってんだろ。というか、どんなシステムだよ。

 ちなみに、“雪城瑠璃ゆきしろ るり”は乙ゲーよりもギャルゲーの方が出番があるらしい。私がその情報をつかめなかったのは“雪城瑠璃”はギャルゲーにしても乙ゲーにしても何かしらゲームの主要人物に関わるネタバレ事項があるため、ネットには当たり障りのない情報しか誰も載せないという裏事情があったかららしい。

 やっぱりというか何というか。前からおかしいとは思ってたんだよ。ストーリーにあまり登場しない只の“悪役令嬢の取り巻き”なら名もないモブキャラで十分なのに平凡な顔の割に顔グラが幾つもあったし名前にキッチリ色が入ってるしさ。

 しかし、ゲーム内の“雪城瑠璃”の情報は引き出せるだけ引き出しといた方がいいかもしれないな。現実との差異が分かるし。何より他の人間について聞くよりも自分のことだから聞きやすい。

 そこまで、決心してから、自然と出そうになる欠伸を何とか噛み殺す。とりあえず、今日はもう風呂入って寝よう。思考がはっきりしていない状態じゃ聞いても何も考えられないかもしれないし。


* * * * * *


 学園に着くと案の定こちらを見てコソコソ話す連中がいたるところに居た。恐らく昨日の話が広まったんだろう。中には睨みつけてきたヤツもいたが目があった瞬間にそらされた。まったく根性ないなぁ。睨んでくるなら睨み返されることくらい想像できるだろうに。これだから世間知らずな馬鹿どもは。まぁ。私は別に睨んではいないんだが。


「視線がウザいわね」


「ごめんね。なぎちゃんにまで不快な思いをさせちゃって……」


瑠璃るりちゃんが謝ることなんて何もないわよ! 勝手に瑠璃ちゃんを悪者扱いする現実が見えてない低脳な馬鹿どもが悪いんだから!」


「言い過ぎだよ。凪」


「五月蠅いわね! 私は事実を言っているだけよ!」


 胸を張る凪ちゃんは凛々しくて素敵だ。ついつい、うっとりと見つめてしまう。夏用の可愛らしいパフスリーブの半袖のブラウスに赤いリボン、灰色のプリーツスカートなんて制服を着ているが、甘さよりも美しさが勝っている。

 ちなみに男子生徒の場合夏服と冬服の違いはネクタイをしないこととワイシャツが半袖に変わるくらいしかなかったりする。あと、コレは男女両方だけどブレザーを着ない代わりにブラウスやシャツの胸元に直接石蕗つわぶき学園の校章が刺繍されているのだ。

 そうそう。周りの連中は凪ちゃんの厳しい声色と発言。そして、凛とした視線に気圧されたのか蜘蛛の子を散らすように、そそくさと学園内へと去っていった。流石、凪ちゃん。


「はよー。って何でこんなところで立ち止まってんの?」


「あっ。おはよう蒼依。ちょっと、ね」


「おはよう。まぁ。大したことじゃないから気にしなくていいよ」


「ふんっ! どっかの馬鹿どもが勘違いして瑠璃ちゃんを睨んできたたから私が睨み返してやっただけよっ」


「それは、また……朝から災難だったな」


「まぁね。でも、凪ちゃんのお陰で助かったから別に気にしないけど」


「瑠璃ちゃん! 困ったことがあったら何でも言ってちょうだいね! 私が守ってあげるから!」


「ありがとう。凪ちゃん」


 凪ちゃんに笑顔を返しながら歩き出す。蒼依が「災難」だと言ったのは茶番に巻き込まれた水瀬に対してだろうがワザと私が返事をしたのは、ちょっとした意趣返しだ。私を悩ませていることと来るのが遅かったことに対してだから、意趣返しと言うより八つ当たりだが。

 凪ちゃん以外は皆、有象無象にすぎないのだから誰に睨まれようが恨み言を言われようが陰口を叩かれようが気になんてしない。そんな私が蒼依達のせいで悩んでいるんだから八つ当たりくらいはさせてほしい。

 あぁ。でも、今回の件で凪ちゃんにまで迷惑はかけたくないな。私の評判のせいで凪ちゃんの立場まで悪くなったら、どうしよう? ぶっちゃけ今一番心配なのはこの点だな。私は凪ちゃんのファンクラブの会長だしな。私の評価が凪ちゃんの評価になるのは困る。学園内ではないだろうが、各家庭では分からないし。

 まぁ。今更と言えば今更なんだけど。二、三年の中で間違った噂が流れることはあまりないだろうが、問題は一年だな。二、三年は去年の件から「触らぬ神に祟りなし」というか「君子危うしに近寄らず」というか、とりあえず、関わらないというスタンスを保ってる人が多いけど、一年は分からないな。

 今回の件くらいなら反発するか恐れて近づかなくなるかの2択かね。一年の掌握ならたちばな辺りが適任だが、借りを作る気はない。ただ、橘の場合は勝手に噂をもみ消してくれそうではあるんだよな。龍崎りゅうざきはなんだかんだで私達に悪感情は抱いてないみたいだし。今回の件で私に対する感情は変わっても凪ちゃんと水瀬への感情は変わってはいないだろう。

 そんな親友の気持ちを慮って行動してくれることを祈りたいものだ。あとは木賊先輩の後輩達にも期待できるかもな。今回の件に関わってるのは私だけじゃなくて木賊先輩もだし。変な噂が流れ出したと知ったら木賊先輩が訂正するように言ってくれるだろう。

 今のところ「万寿菊の会」に所属している一年は居ないからな。居たら使える駒になってたかもしれないけど。噂の訂正くらいなら今のメンバーでも事足りるだろうか? なんだかんだで部活や委員会に入っている人が多いし。

 そうそう。石蕗学園では正式な部活同士の掛け持ちは禁止されているけど、同好会のようなファンクラブと部活との掛け持ちは許可されている。だから、楠木くすのきさんは「万寿菊の会」の会員兼女子バスケットボール部員なのだ。

 意外かもしれないが部活とファンクラブを掛け持ちしている人間は結構多い。そのほとんどがお稽古の延長線にある文化部所属だから運動部で掛け持ちしている楠木さんはレアケースではあるな。

 ファンクラブは厳しい規律があるところが多く特に定例会への参加が義務付けられていたりする。その点「万寿菊の会」には、あまり規律を作っていないから運動部でも入りやすいのかもしれない。ぶっちゃけ凪ちゃんを敬い凪ちゃんに迷惑をかけないでくれるなら定例会もといお茶会に参加しようがしまいが好きにしてくれていいしね。

 だが、緩い規律の割に結束力は結構強いし、お茶会への参加率も高いというのだから分からないものだ。まぁ。皆が楽しんでくれているのでかまわないがな。凪ちゃんも「万寿菊の会」の会員とのお茶会は楽しくも勉強の出来る場としてとらえてくれているみたいだし。本当に作ってよかった。

久しぶりの更新の割に話が進まず申し訳ないです。

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