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石蕗学園物語  作者: 透華
77/107

影響 1

 木賊とくさ先輩との会話のおかげで、それなりに収穫があった。好感度を上げるためのアイテムや明確なサポートキャラがいないというのは、私の知らない情報だったしな。情報は武器になる。もし、そんな便利アイテムや人間が居たら、かなり厄介だっただろうし。まぁ。でも、場合によっては誰でもサポートキャラになりうるという点は不安要素ではあるのだが。

 しかし、今のクソ女をサポートしようとか味方になろうなんて学園全体を敵に回すような命知らずの人間は、まず居ないだろうから、心配はいらない。若竹わかたけ先生はクソ女を心配しているが恋愛のサポートはしないだろうし。今のところクソ女をそういう目で見てはいないしな。目下の心配事はなぎちゃんへの事情説明だ。一応電話で話はしたが多分納得してないだろうし。下手な説明をしたら凪ちゃんが木賊先輩へ悪感情を持ちかねない。それでは、少し困ったことになってしまう。上手く説明しないとな。

 そんなことを考えているうちに教室についてしまった。木賊先輩とは今し方、階段で分かれてしまったので、事情説明は私1人でしないといけない。こんなことなら無理矢理にでも付き合わせればよかった。本人に説明させた方が信憑性も増しただろうし。まぁ。居ないんだから仕方ないよな。頑張ろう。


瑠璃るりちゃん! 本当に大丈夫だったの? 私、凄く心配したのよ!」


「大丈夫だよ。電話で話した通り木賊先輩も居たし、違反者も全員一年の女生徒だったしね」


「全く本について話したいからって、わざわざ部室に呼び出すなんて木賊先輩って意外と我が儘なのね!」


「うーん。それは、私に気を遣ってくれたんだと思うよ。木賊先輩と人目があるところで会話してたら、お互いに厄介なことになるだろうしね」


「それは、確かに、そうかもしれないけど……」


 拗ねたような凪ちゃんの顔に思わず頬がゆるむ。ああ。もう可愛いなぁ。この反応は反則だよ。たまに見せる子供っぽい姿も魅力的だよな。チラリと水瀬みずせを見ると水瀬もデレッとした表情をしていた。こんな顔でも様になるって本当にイケメンは得だよな。だらしない顔が周りからは柔らかい笑顔に見えるんだろうし。イケメン爆発しろって言いたくなる気持ちがよく分かる。


「そういや。瑠璃さん。あきら先輩と会ってた理由とかはそうから聞いたけど、違反者って結局、何やってたんだ?」


 何で蒼依あおいが知ってるんだろう? 私は凪ちゃんと柚木ゆずき先輩にしか連絡しなかったはずだけど。柚木先輩から蒼依に連絡がいったわけじゃないんだよな。水瀬に聞いたって言ってるし、一体どういうことだ?


「あれ? 凪ちゃん。水瀬君に話したの?」


「いや。凪が電話の内容に慌てて、間違えてスピーカーモードにしちゃったんだよ。だから、生徒会室に居た人間は全員会話内容を知ってるんだよね」


「ちょっと!」


 顔を赤くして水瀬を睨む凪ちゃんが可愛らしい。今日も凪ちゃんの可愛い姿がたくさん見れて幸せです。しかし、そんなに心配してくれていたのかと嬉しい反面申し訳なくも感じる。それでも、喜びが先に立つあたり、私は色々と終わってるのかもしれない。


「そんで、俺の質問への答えは?」


「ああ。コレ見たら分かるよ。証拠用に撮っておいた」


 ちなみに、私はいざという時の「証拠用」に木賊先輩との会話もボイスレコーダーでちゃんと録っておいたのだ。木賊先輩は気づいてなさそうだったけど、私の人間性をある程度分かった上で呼び出したはずだし、あとで利用することになったとしても文句は言えないよな。私はただ備えあれば憂いなし精神で生きてるだけだしね。


「ふーん。コレ、被害者は朽葉くちはさんで割り込んだのは刈安かりやすさんだね。やっぱり、朽葉さんは内部生に目を付けられたか。予想通りすぎて笑えるな」


「えっ? 蒼依の知り合いなのかい?」


「まぁな。どっちも新入生の外部生だ。被害者の朽葉さんは話してみると、意外と面白くていい子なんだけど、人見知りが激しいんだよ。奨学生なだけあって成績は優秀だから余計に、お高くとまってるって勘違いされて敵が増える感じ? 瑠璃さんみたいに基本的に事なかれ主義貫いたり悪口をスルーしたり愛想笑いの一つでも出来たら別なんだろうけど」


「へぇ。朽葉さんってそんな性格だったんだ。……でも、朽葉さんと知り合いだっていうのは聞いてたけど、刈安さんとも知り合いだったのは驚いたな。一年生と会う事なんて、あまりないだろうに」


「まぁね。刈安さんとは、バレー部の試合を新聞部に頼まれて一緒に取材しに行った時に知り合ったんだよ。刈安さんはスポーツ特待生で一年にしてエースだからね。しかも、小柄だし。記事にしたくなるのも分かるよな。そうそう、こっちは朽葉さんと違って人懐っこいタイプの子だよ。全く違う性格だから逆に仲いいのかもね」


「ああ。身近な例で言うなら龍崎りゅうざき君とたちばな君みたいな感じだね」


「その例え、凄く分かりやすいわね。あの2人も性格全然違うし」


「ありがとう。凪ちゃん。蒼依が2人と知り合いなら続きも話した方がいい?」


「ん? 何か他にもあったの?」


「朽葉さんと刈安さんは今までの被害状況とかを聞くために風紀委員連れてかれたんだよね。私と木賊先輩は経緯とか分からないから直ぐに解放されたけど」


「ああ。なるほどね。まぁ。妥当な判断じゃねぇの? しかし、これでまた瑠璃さんを恐れる人間が増えそうだね。瑠璃さんガンバ!」


 特に2人を心配した様子はないか。寧ろ私への影響を気にしてるみたいだが。柚木先輩が率いてる風紀委員を信用してるからとかじゃなくて、2人にあまり興味がないって感じだな。あくまで知り合いだから少し状況が気になるって程度か? そういえば、蒼依は続々と攻略キャラに接触して攻略していってるみたいだけど、蒼依自身は自らの取り巻きである柚木先輩達を本当はどう思っているんだろうか? 友人以上恋人未満? それとも知り合い以上友人未満?

 蒼依は一定以上の距離に踏み込ませないからな。優先順位なら多分、今でも私が彼女達より上になる。それは、驕っているわけではないが事実だろう。蒼依はゲームで言うなら逆ハールートに向かっていると考えられるが、意図的にそうしているのか、それとも無意識にそうしているのかが問題なんだよな。

 木賊先輩は蒼依と凪ちゃんと私を転生者だと疑っていたが、凪ちゃんが転生者ということは有り得ない。それは、幼なじみである私だから言えることだ。恐らく私が動かなければ凪ちゃんはゲーム通りの“悪役令嬢”になっていただろう。別に凪ちゃんの人生を私が変えたとか偉そうなことを口にするわけではないが、味方が零か一かは、かなり大きいことだ。特に子供にとっては。

 まぁ。ゲーム内でも“悪役令嬢”に味方が居なかったわけではないのだ。ただ、傍にいてくれる味方が居なかっただけで。だから、“悪役令嬢”は“悪役令嬢”になるしかなかったんだよな。本当に“雪城瑠璃”は何をしていたんだか。でも、彼女を責めることは出来ないか。私の場合、“ワタシ”の記憶のおかげで何とかなった部分が大きかったし、ただの女子高生に同等のモノを求めちゃいかんな。それにゲーム上、仕方なかったんだろうし。

 そういえば、“女主人公”には“悪役令嬢”という明確なライバル=敵が居たが“男主人公”には居なかったんだろうか? “水瀬颯”がサポートキャラのような役割を果たしていたのなら、“水瀬颯”ではないよな。“男主人公”に明確なライバルがいないならギャルゲーはかなり優遇されていることになるはずだ。そこら辺の文句はなかったのか?

 あとで木賊先輩に聞いてみた方がいいかもしれないな。“男主人公”にライバルキャラが居るなら色々と有効活用出来そうだし。もしかしたら知っているかもしれないが、刈安さんと蒼依が既に接触してたことも報告しておいた方がいいんだろうな。あと、朽葉さんと刈安さんへの印象とか。


「そういえば、桃園ももぞのさんと会ったりしなかった?」


「ああ。僕達は大丈夫だったよ。監視はあまり緩んでいないみたいだね」


「俺も大丈夫だった。相変わらず、女生徒に檻みたいに囲まれてたぜ」


「そう。それなら、よかったよ。ちょっと心配だったんだよね。2人に近付いて来られたら、やっぱり凪ちゃんにも影響が出るし」


「瑠璃ちゃん! そんなに私のことを心配してくれてたのね!」


「一瞬でも僕達を気にしてって考えた僕が馬鹿だったのかな?」


「まぁ。瑠璃さんだしな。諦めろ」


 何やら悟り始めている男共は放っておくことにする。このやり取りは何回目だろうか? まぁ。別にいいかな。何かこういうのって普通の学生っぽいよね。からかったり、からかわれたりって。“ワタシ”の時は人をからかったり出来なかったからなぁ。無意識にストップ入っちゃう感じだったし。それが出来るようになったのは進歩だと考えよう。

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