表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石蕗学園物語  作者: 透華
60/107

修学旅行までの道のり ある優しそうな先輩の独り言

 今年の修学旅行先は、石蕗つわぶき学園にしては珍しく国内の「京都」なんだって、聞いた時は本当に、びっくりしたなぁ。私は幼稚舎からの内部生組だけど、修学旅行にしても校外学習にしても、ほとんど外国で校外学習なら、兎も角、修学旅行を国内でするなんて、石蕗学園の歴史の中でも、かなり珍しいことだと思う。特に高等部ならなおのこと珍しいんじゃないかな?

 そのことについて、どう思うかは人によって全然違うみたい。たまには国内でもいいって人もいれば、国内に決まった理由が気に入らないって人もいるし。そうそう。瑠璃るりちゃんは「パスポート持ってないから国内でよかったです。今回に関してだけは、桃園ももぞのさんに感謝です」って言ってたかな。なんとも瑠璃ちゃんらしい言葉だなって、ちょっと笑っちゃった。

 そう今回の修学旅行が国内になったのは転校生の桃園姫花ひめかさんが原因何だって、みどりちゃんが言っていたわ。桃園さんは色々と問題を起こしている子で、そんな子を海外に学園行事の一環で行かせることを理事会が問題ありと判断したらしいの。翠ちゃんは「他の二年生にとっては可哀想な気はするけど仕方ない」って言っていたけど本当は凄く責任を感じているんだと思う。

 だから、瑠璃ちゃんだけでも「国内で良かった」って言ってくれて嬉しかったんだ。その時、翠ちゃんも一緒に居たけど、少しだけホッとした顔をしていたんだもん。私達特別委員会の役員にも二年生が居るけど、文化委員長の藍川菜実あいかわ なみちゃんは不機嫌な顔をしていたし、図書委員長の夢宮藤乃ゆめみや ふじのちゃんはよく分からないけど、多分いい気はしていなかったんじゃないかな?

 翠ちゃんは責任感が強いから風紀委員長である自分が桃園さんを更正できなくて周りに迷惑をかけ続けていることを気にしているの。桃園さんが蒼依あおい君に迷惑をかけているっていうのも責任を感じる理由の一つなのかな? 翠ちゃんは蒼依君が好きだから。私も蒼依君に恋をしているけど、蒼依君が好きになった相手が翠ちゃんなら諦められる気がするの。翠ちゃんは昔から私を助けてくれる優しい子だから。まぁ。たまに暴走してしまうのは、考えものだけど。

 そうそう。蒼依君と言えば、修学旅行での班を組むときに、争奪戦になっちゃって大変だったって言ってたかな。私達の時もけい君とあかね君と同じ組だったから2人の争奪戦が起きちゃって大変だったんだよね。結局2人と付き合いの長い私と翠ちゃんが同じ班になったんだけど、修学旅行中、ずっと翠ちゃん螢君が険悪な空気を醸し出してて、ちょっと困っちゃった。蒼依君は最初から組んでた水瀬みずせ君と2人の取り合いに参加してなかった瑠璃ちゃんと水瀬さんと同じ班になったみたい。

 蒼依君と瑠璃ちゃんと水瀬さんは同じ中学から入学して来た外部生だけど、蒼依君と水瀬さんは仲があんまりよくないって聞いたけど瑠璃ちゃんは大丈夫かな? 蒼依君は素敵な人だし水瀬さんも真面目ないい子だから、どうして仲良く出来ないのか私は不思議なんだよね。水瀬さんは従兄弟の水瀬君とも微妙な仲みたいだけど、本当にこの組み合わせで大丈夫なのかな?

 心配になって茜君に聞いてみたけど、茜君は「あの2人はどっちも瑠璃ちゃんの言うことは聞くみたいだから大丈夫だと思うわよ?」って言ってた。それって瑠璃ちゃんの負担が凄いんじゃないかな? でも、当の瑠璃ちゃんは修学旅行を楽しみにしてるみたいだし、案外本当に大丈夫なのかもしれない。翠ちゃんや螢君によく言われるけど、私は心配性なのかもしれないね。

 そういえば、修学旅行について変な噂が流れてきたんだよね。噂はやっぱり桃園さんが中心なんだけど、いきなり「パリじゃないと修学旅行に参加しない」って言い出したんだって! そのせいで、菜実ちゃんも藤乃ちゃんも唯でさえ不愉快に思ってたのに悪化しちゃったみたいで、他の二年生の子達も皆口々に桃園さんの悪口を言ってるみたいなの。翠ちゃんも「あの馬鹿転校生は何言ってるんだか」って怒り通り越して呆れてたかな。

 菜実ちゃんや藤乃ちゃんに聞くのは、ちょっと怖かったから、実際、周りはどんな反応なのか瑠璃ちゃんに聞いてみたんだけど、瑠璃ちゃんは「女生徒は特に桃園さんに対して怒りを覚えているみたいですよ。ただ最終的に、若竹わかたけ先生頑張れになりますけど」って話してくれたの。若竹先生は桃園さんの担任で生徒指導部所属な上風紀委員会の顧問までしているから立場や心情的に色々大変みたい。

 桃園さんは修学旅行に参加しないと在学できるか危ういところまで来ているみたいだし、若竹先生にしてみれば出来るだけ桃園さんを退学に追いやりたくないから必死なんだって。翠ちゃんは「熱血お人好し教師」って笑ってたけど、少し心配そうだった。若竹先生が頑張ってるのは知っているけど、生徒の中には「なんで、あんな問題児を庇うんだ?」って思っている人もいるから、若竹先生が悪く見られないか翠ちゃんは心配しているんだと思う。

 生徒会顧問っていう権力者である烏羽からすば先生が我関せずを貫いているから、2人を比べると若竹先生がどうしても甘く見えちゃうのかな? 螢君は「烏羽先生は放任タイプだからな。だが、救いを求められたら手を貸す人ではある。まぁ。今回は話が別だけどな。あの転校生に非がないのなら、ともかく、明らかにあの転校生に問題があるのに本人が自覚していないという現状では手を貸す気にはならないんだろう」って言ってたから、烏羽先生が桃園さんの件に関わらない理由は分かるけど、少しだけ若竹先生が可哀想な気がする。

 若竹先生と烏羽先生は学生の頃からの友達だって若竹先生から聞いているから、私のわがままでしかないけど、烏羽先生だけでも味方でいてあげて欲しいって思っちゃうな。でも、烏羽先生の立場じゃ味方しちゃいけないっていうのも分かるから複雑な気持ちになる。若竹先生も烏羽先生も学園内でかなりの影響力があるから……。

 せめて桃園さんが少しでも反省してくれてたらよかったのに。修学旅行が国内ってことぐらい普通なら我慢出来ると思うの。桃園さんの家なら海外旅行くらい出来るだろうし、最終的には修学旅行に行くしかないんだもん。それにしても、体育祭の時も藤乃ちゃんや体育委員の人に突っかかったり、暴言を言って課題が増えたり学園奉仕活動が長引いたりしたのに、どうして反省しないんだろう? 皆が困ってるってことも、少し周りに目を向ければ気づけるはずなのにな。

 同じ外部生でも、蒼依君や瑠璃ちゃんや水瀬さんや大熊おおぐま君とは全然違ってて、本当に吃驚しちゃう。周りからは問題児として見られている部分がある蒼依君も瑠璃ちゃんも何もなければ思慮深くて、優しい人達だし。成績だって優秀で瑠璃ちゃんにいたっては一年生の頃から、ずっと学年一位を維持し続けてる。私の周りの外部生が優秀で人柄のいい人達ってだけじゃないし、やっぱり、桃園さんは不思議な子だな。

 そういえば、桃園さんが転校してきてから同じクラスの蓬生ほうしょう君の様子が少し変わった気がするんだよね。前までは、いつも周りに女の子を侍らせて甘い言葉を囁いていたけど、最近は何だか悩んでいるみたい。桃園さんにも興味があるって言ってた割に会いに行ったりはしていなかったし。でも、翠ちゃんは、この前蓬生君に警告に行ったらしいんだよね。

 最初は、どうしてか分からなかったけど、翠ちゃん曰わく「蓬生はそれなりに上流階級の人間だから、アイツに目をかけてもらってるとか思われたら困るのよね。ただでさえ若竹先生が甘やかしてるし」ってことみたい。だけど、私はもっと深い理由があるんじゃないかって思っているの。そうじゃなきゃ、風紀委員長である翠ちゃん直々に警告に行く必要なんてないはずだから。螢君も蓬生君には厳しい目を向けているようだし、翠ちゃんだけじゃなくて螢君も何か私に隠してる気がする。

 少しだけ寂しいけど、2人が言わないなら私は聞かないでおこうって決めてるから我慢する。本当に大切なことなら、ちゃんと話してくれると思うから。隠し事は多分、蓬生君と桃園さんのことだけど、幸い蓬生君も桃園さんも私とは、あまり親しくないから、聞かなくても大丈夫だと思うし。瑠璃ちゃんが関わってたりしたら話は別だけど。瑠璃ちゃんは私のお友達だし、もしも、瑠璃ちゃんにも関わりがあるって分かったら実力行使で聞いてもいいよね?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ