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石蕗学園物語  作者: 透華
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体育祭 5

 昼食を食べ終わってもかなり時間が余っていたので、冷たいドリンクをもらって寛ぐことにした。私は葡萄ジュース。なぎちゃんはソーダを頼んでいた。応援合戦について会長達にも、それとなく聞いてみたが、やっぱり誰も内容を把握していなかった。

 そして、始まった応援合戦は予想通りカオスだった。まず、牡丹組は何故かソーラン節を学ラン着た男が踊り、終わったと思ったら女がチアリーディングをし始めた。しかも、やたらとクオリティが高く。学ランやチアリーディング用の衣装もレンタルしてきたらしい。

 そして、薔薇組は演劇部部長がセンターになり今時のアイドルの曲の振り付けを多分完コピして踊っていた。お坊ちゃんやお嬢様でもアイドルの曲聴いたりするんだな。ちなみに演劇部部長は女装をしていた。他の男は、まぁ。うん。とりあえず、普通の格好ではなかった。だが、やはり、異常にクオリティが高かった。

 結果的に勝ったのは、薔薇組だった。僅差だったが、斬新さと男共が体をはっていたところが、点につながったらしい。あれだけ体をはって負けていたらショックが大きかっただろうから、勝ててよかったな。ただ、見に来ていた御家族の方々が哀れでならないが。

 そうそう烏羽からすば先生はスーツ姿だったので、てっきり出場しないと思っていたら、教師対抗リレーに出場するらしい。しかも、スーツのままで。ちなみに、コレは牡丹組、薔薇組関係なく均等に教師をわけてするリレーのため、応援合戦から部活動リレーに出場する人の時間稼ぎのようなものだ。


「烏羽先生と若竹わかたけ先生は、やっぱり別チームなんすか?」


「そうだと思うよ。あの二人はずば抜けて運動神経がいいからね。同じチームだとバランスが崩れるしね」


「しかし、教師対抗リレーで時間稼ぎとは豪勢だな」


「本当よね。学園きっての人気教師に走らせるんだもの」


瑠璃るりちゃん、烏羽先生って足早いの?」


「えっ? 何で瑠璃先輩にそんなこと聞くの?」


 たちばなの指摘に「まずい」と言いたげな顔をした凪ちゃんに苦笑する。そういえば、凪ちゃんはかなめさんと私が昔馴染みだって知ってるんだっけ。まぁ。簡単に誤魔化せるから問題ないけど。苦い顔をしてても凪ちゃんは美少女さんだな。一年の時は学園でこんな風に表情を出してなかったから何だか嬉しい。


「それは、私達の一年の時の担任が烏羽先生だったからですよ。私は奨学生でしたし、複雑な環境で育ったのもあって色々気にかけてもらいましたから……」


「じゃあ。凪先輩より瑠璃先輩の方が烏羽先生と仲良しなんだね!」


「それは、どうとも言えませんが、どちらかと言えば、ね?」


「そうね。私より瑠璃ちゃんを可愛がってるわよね」


 話をあわせてくれた凪ちゃんに微笑む。基本的に「家庭環境」を持ち出せば、この学園では深く話を聞かれることはない。なんせ金持ちの家は意外とドロドロしているところが多いからだ。だから、暗黙の了解として家庭については、深入りしない。想像通り会長達は何も聞いては来なかった。


「あっ、始まった」


「あら、本当。確か、教師対抗リレーって、走る距離は自由だっわよね?」


「ああ。教師によって年齢が変わるからな。全員同じ距離にすると問題が出るんだろう」


「そうだよね。お年寄りの先生もいるし」


守山もりやま先生とかね」


「「あぁ」」


 水瀬みずせの言葉に頷くと、第一走者が走り出した。どちらもお爺ちゃん先生なので、直ぐにバトンが第二走者に渡る。この調子だと、烏羽先生と若竹先生はアンカーだろうな。2人とも若い上やたらと運動神経いいし。

 この教師対抗リレーは出場者が結構多いから、先生達の出番はまだまだ先だな。部活動リレーは各部ユニフォームで走るから、着替えるのに意外と時間がかかるんだよね。文化部はそういうの気にしなくて良いみたいだけど。でも、茶道部と華道部は着物着なきゃいけないから大変なんだっけ?

 えっと、午後からの競技は障害物競争が一番か。確か橘が出場するんだったか? その次が借り物競争で蒼依あおいが出場かぁ。妙なことしなければいいけど。三番目が二人三脚で会長とあかね先輩が抜けるんだよな。長距離走(1000m)は短距離走と同じく生徒会役員からは出場者なし。短距離走とか全く記憶にないけど玉入れの次にやってたんだっけ? チーム代表リレーは……多分私と凪ちゃん以外は全員出場するんだろうな。


「瑠璃ちゃん。烏羽先生達が見えてきたわよ!」


「あっ。本当だ。って、やっぱりスーツなんだね。着替える時間あっただろうに」


「凄いわよね~。でも、そんなところが、す・て・き!」


 何が茜先輩の心に響いたのか分からないが、茜先輩は「きゃー」と乙女のように頬に手をあてている。何故だろう完璧に女子力で負けている気がする。とりあえず、凪ちゃんがこんな仕草したら間違いなく私は写真に残すな。だって、絶対可愛いに決まってる。

 きゃーと茜先輩以外の黄色い悲鳴が響き渡る。本当にこれで何度目だ。そんなツッコミを入れながらグラウンドを見ると烏羽先生はスーツとは思えないほどのスピードで疾走し、若竹先生は端から勝てると思っていないのか、烏羽先生の後ろを走りながらファンサービスとばかりに手をふっている。

 やっぱり、烏羽先生の運動能力はおかしいと思う。何で、グラウンドを疾走して息一つ乱してないんだろう? しかも、シャツの第一ボタンをしめてネクタイまでキッチリしてるのに。あれか、鍛えてるからか? 応援するまでもなく、勝ちが分かってるって何なの。

 そんなことを思っていると、気づけば教師対抗リレーは終わり部活動リレーが始まりをむかえていた。もう、どうにでもなればいい。吹奏楽部のドラムメジャーを先頭に歩き出す。石蕗つわぶき学園吹奏楽部はマーチングもしているのだ。その後ろを文化部、運動部と言う順番にパフォーマンスを行いながら歩いていく。何故、コレが「リレー」なのかが体育祭における一番の謎だ。

 まぁ。本気でリレーなんてしたら陸上部や野球部やサッカー部なんかが勝つに決まってるしな。ちなみに同好会扱いのファンクラブは部活動リレーには参加していない。多分人数がヤバいことになるからだろうな。

 そうそう。各部が行うパフォーマンスは様々なものだ吹奏楽部はマーチング、演劇部は寸劇、茶道部はエア茶道、美術部は即席デッサン、手芸部は編み物、空手部は型、柔道部は投げ技、サッカー部はリフティング、バスケットボール部はドリブル、水泳部はまだ肌寒い中水着に裸足で水泳のクロールやバタフライ等をしていた。まだまだ部活はあるのだが、別に入る気もないので割愛する。ちなみに蒼依が部長を務める写真部は写真を撮る仕草をしていた。

 このリレーに出場するのは、各部のレギュラーないし部長や副部長等の中心人物だ。美術部や手芸部にはレギュラーとかないしね。しかも、どの部活も意外と人が多いので全員並ばせたりすると大行列になるのだ。特に運動部は三軍とかまである部活ばかりだし、全員となると凄いことになる。

 各部のレギュラーや部長達は人気者が多いので、周りからは当然のように歓声があがる。本当にどいつもこいつも元気だな。黄色い悲鳴も野太い叫びも五月蠅いったらない。ため息を吐きながら、私は早くこのリレーにもなっていないリレーが終わってくれることを祈った。



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