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石蕗学園物語  作者: 透華
22/107

初対面 3

 その後も色々な人間に阻まれ続け現在までクソ女と私達は接触していない。幸い、授業は一切被っていなかったらしく同じ教室に入ることはなかったが移動の時は一応注意した。ちなみに、ここは生徒会室だ。今日は体育委員との会議はなかったが、教室にいるとクソ女が来そうだったので、生徒会室で昼食をとることにした。蒼依あおいは蒼依で写真部の部室で食べるらしい。


「凄まじい女のようだな。三年にまで悪化した噂がまわっているぞ」


 何故かいる生徒会長は愉しげに笑っている。そう、何故か生徒会役員が全員揃っているのだ。暇人なのか、他に友人が居ないのかどっちなんだろうか? まぁ。別にどっちでもいいが。


「うふふ「非常識転校生は朝から石蕗の魔女と姫君と生徒会副会長と写真部部長に喧嘩を売って返り討ちにあった」とか言われてたわよ」


「そうですか。意外ですね。てっきり、私の悪名だけ広がったかと思ってたんですが」


 あかね先輩の言葉に首を傾げる。噂というものは、真実はあまり伝わらないものだ。だから、あそこにいたなぎちゃん、蒼依、水瀬みずせの存在を消し、私とクソ女が喧嘩して私が返り討ちにしたみたいな噂が流れていると思っていた。その方が自然だし周りも受け入れるだろう。


雪城ゆきしろさんのしたことは正しかったからね。ウチのクラスの人達や「万寿菊の会」の会員達が間違った噂を聞いたら、その都度訂正しているらしいし」


「当然よ! 瑠璃るりちゃんは濡れ衣着せられた私を庇ってくれただけなんだから! それを悪く言われたらたまったもんじゃないわ!」


「へぇ。そうだったんだ。教えてくれて助かった。あとでお礼いわないとね。それから怒ってくれて、ありがとう凪ちゃん」


 苦笑しながらもどこか冷めた目をした水瀬みずせとその隣で憤慨する凪ちゃんにお礼を言いながら弁当をつまんだ。あの程度のことで、こんなに怒ってくれるなんて、やっぱり凪ちゃんは優しいな。


「その桃園姫花ももぞの ひめか先輩って一体先輩達に何やったの?」


「お、俺も気になります」


 たちばなが元気良く龍崎りゅうざきがおずおずと尋ねてきた。橘はともかく龍崎が聞いてくるとは意外だな。だが、まぁ。一年にも噂は出回っているんだろうし気にもなるか。しかも、その噂の5人中3人は知人なわけだし。水瀬の普段とは少し違う様子も不思議だったのかもしれないな。


「あぁ。彼女は、いきなり僕と蒼依の名前を呼んだかと思うと僕の腕に勝手にしがみついて来てね。離せと言ったら何故か凪のせいで、そんなことを言うんだろうとか訳の分からないことを言い出して、それに凪が怒った後に雪城さんが凪のせいという根拠はなんだって尋ねたんだよ。その質問に、彼女が驚いているうちに引き剥がしたら若竹わかたけ先生がやって来て、彼女が今度は若竹先生にしがみついたから、雪城さんが若竹先生にあるお願いをして2人が固まってるうちに教室に戻っただけだよ。ちなみに蒼依は我関せずと言った感じで、ひたすらカメラをいじっていたかな」


 水瀬はスラスラと今朝会ったことを語った。まぁ。嘘ではないよな。というか、あっているが、蒼依は本当に空気だな。アイツ絶対居る意味なかっただろう。そもそも、蒼依が廊下に行こうと言い出さなければよかったというのに。


「非常識転校生って本当だったんだ……」


「勝手に名前呼びで腕にしがみつく……」


「雪城の前で凪に喧嘩を売ったのか……」


ひいらぎ君は何してるのよ……」


 水瀬の話に橘は噂の正しさを理解したのか納得したように頷き、龍崎は予想以上の非常識っぷりに体を震わせ、生徒会長は無謀とも言える行動に驚き、茜先輩は蒼依に呆れているのか頭を抱えている。まぁ。こんな感じになりそうだと予想はしていた。これで彼らはクソ女への警戒を更に強めてくれただろう。


「ところで瑠璃ちゃんは転校生ちゃんに何を言ったの?」


「あぁ。凪ちゃんを悪い従姉妹とか言ったんで「転校二日目にも関わらず凪様を「悪い従姉妹」と仰るなんて何か根拠がおありなんですよね? まさか何の根拠もなしにそのような失礼な物言いをなさったとは言わせませんよ? あぁ誰かから伺ったのなら是非その方を私に教えてくださいね然るべき対処をせねばなりませんので」って聞いただけですよ。私「万寿菊の会」の会長ですし、至極真っ当な発言ですよね」


「雪城さん愛想笑い浮かべながら、一息で言い切ったよね。正直に言って、背筋が寒くなったよ」


「若竹には何を頼んだんだ?」


「若竹先生には「若竹先生。そちらの桃園姫花さんはどうやら凪様を何方からか水瀬君の「悪い従姉妹」と吹き込まれたそうなのですが、私にはどなたか見当もつかなくて困っているんです。信用されている若竹先生になら、きっと答えて下さると思いますので、分かりましたら後ほど私に教えていただけませんか?」ってお願いをしただけですよ」


「若竹ったら顔真っ青にしてたのよね。何だか面白かったわ」


 ふふっと楽しそうに笑う凪ちゃんとその凪ちゃんに癒されている私を生徒会役員の男共は恐ろしいモノを見るような目で見てきた。全くもって失礼な奴らだ。凪ちゃんはただ思い出し笑いをしているだけだし私だって別に、おかしな要求なんてしていないだろうに。

 ガラリと生徒会室のドアが開く音に振り向くと烏羽からすば先生と何故か若竹先生が入ってきた。若干、若竹先生の顔色が悪い気がしたが、気のせいだろう。しかし、生徒会顧問の烏羽先生だけでなく生徒指導部所属の若竹先生まで来るなんて、今朝のことで何か注意でもされるんだろうか?


「副会長の水瀬、書記の水瀬、雪城。災難だったな。若竹には私から言っておいたので、君達は有意義な学園生活を送ることを第一に考えたまえ」


「はい。烏羽先生! ありがとうございます。あっ。若竹先生。今朝のこと桃園さんに聞いていただけました?」


「流石、烏羽先生ね! そうそう桃園さんてば、行く先々で待ち伏せみたいなことしてて大変だったのよね」


「確かに、他の生徒が盾になってくれたから、よかったけどね。全く困った人だよ」


 迷惑かけられた組である私達3人の言葉に若竹先生の顔色がどんどん悪くなる。なりたくてなったわけではないかもしれないが一応担任だし、その上生徒指導部に所属しているのだから少しは何とかしてもらわないと困るのだ。少なくとも私と凪ちゃんには迷惑をかけないでほしい。


「今日は悪かったな。俺からも注意したんだが、聞く耳をもたないんだ。一応お前達と授業が被らないように誘導はしたんだが……それと、雪城。桃園にお前から聞かれたことを尋ねてみたが、はぐらかされた。多分思い込みか何かなんじゃないか?」


「それは、お疲れさまでした。私達のことを考えてくださったことに感謝申し上げます。しかしながら、若竹先生。彼女は凪ちゃんを見た瞬間に水瀬君の従姉妹と言い当てたんですよ? しかも、凪ちゃんはその時何も発言していなかったのに、罵倒されたんです。それを単なる思い込みで片付けるのはどうかと思います」


「ふむ。確かに、雪城の言う通りだな。副会長の水瀬の従姉妹が書記の水瀬だというのは、我が校では常識だが、話を聞く限り事前に桃園にそのことを教える人間など居そうにないが……若竹。そのことについては聞いたのかね?」


「いや、俺もまさか一目見て従姉妹だと判断したとは思っていなかった」


 若竹先生は私と烏羽先生の質問に驚いたのか目を見開いた。多分若竹先生はクソ女にいちゃもんつけられた凪ちゃんや水瀬が従姉妹同士だと関係性を教えた結果クソ女がそう認識したと思っていたんだろう。


「そういえば、生徒会役員と蒼依以外は「水瀬」と呼ぶのに僕のことを「そう君」と彼女は呼んでいたよね。これもおかしな話だ」


 水瀬がポツリと零した言葉に若竹先生は難しい顔をして考え込んだ。私のような転生者からしてみれば、同じく転生者であるクソ女が攻略キャラ達の名前や容姿を知っていても可笑しくないと思えるが、現実問題考えるとセキュリティーもバッチリな所で生活している上メディアにも一切出ていない金持ち連中の顔と名前を一般庶民が知ってるって異常なことなんだよな。

 本当にバカすぎるだろう。クソ女。こんなに周りに疑惑を抱かせるには充分すぎる発言や行動をとるなんて。もしかして、彼女は自らが“女主人公”だから何をしても肯定的に見られるだなんて幻想を抱いているんだろうか?

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