第229話 一人で新宿C級ダンジョン探索
学校を出て新宿探索者ビルに向かった。
石神駅から電車に乗り、池袋で乗り換えて新宿へ。
駅を出て、少し西に向かうと新宿探索者ビルに着いた。
池袋西探索者ビルよりだいぶ遠いな。
新宿C級ダンジョンは、第2階層の魔物・コカトリスの石化毒が厄介で、効果時間2時間の中和薬を事前に飲んでおかないと、石化してからでは間に合わない。
3階の探索者ご用達の店に行き石化中和薬を20個大人買いした。
つい忘れちゃったなんて時に、いつでも飲めるようにスライムの胃袋の中に保存しておく。
新宿探索者ビル2階にもパーラーがあり、テイクアウトもやっていた。
俺は、テイクアウトのチーズハンバーグ弁当を買いクロークへ。
装備を取り出しロッカーで着替える。
第1階層のミノタウロスは余裕過ぎるが、まずは第1階層を隅々まで探索しておこう。
ダンジョンの入り口から入ると暗い下り坂になっている。
所々で照らす電球だけが明るく輝いているが、それだけでは薄暗かった。
遠くに明るい出口が見えるが、そこが第1階層で、そこは光輝石に照らされた広い草原フィールドだ。
俺の気配察知がミノタウロスの存在を教えていた。
「入り口近くにけっこういるな......」
不思議に思って思わず口から声が出た。
10匹くらい集団でいるのは、先週はみなかったパターンだ。
ミノタウロスレベル1のステータスは、
HP 30
MP 0
力 25
防御外皮 30
知力 10
速さ 20
器用さ 25
スキル ブーメランスロウ
ドロップアイテム 鋼の手斧
なので、スチール1回で瞬殺できるから、20連スチールで余裕で倒せるけど......まさかスタンピードの予兆じゃないよね。
目の前に光る出口が迫ってきた。
出た途端に戦闘だなと思いつつ、左手で大剣を抜いた。
第1階層に1歩踏み出す。
10メートル先から10匹のミノタウロスが駆け寄ってきた。
目の前で鋼の手斧を振り上げるミノタウロス達。
だが、何もあせることはない。
「スチール!」
分割思考20連でスチールを唱える。
10匹のミノタウロスが煙を上げた。
脳内にメッセージが響きだし、右手に鋼の手斧が現れる。
それを即座にスライムの胃袋に収納する。
10匹のミノタウロスは魔石に変わった。
魔石を拾って廻り、スライムの胃袋に収納する。
とりあえず地図を確認しながら、ドローンを上げた。
綾華との待ち合わせは、学校が終わり次第にこのビルのエントランスホールでなので、移動時間を考えるとだいたい5時くらいだ。
今から、7時間近く潜っていられる。
もう10匹倒しちゃったから、滅茶苦茶稼げそう。
やっぱり一人で探索すると金になるよね。
どんどんミノタウロスを倒しながら地図を塗りつぶすように探索していく。
ミノタウロスのレベルが2になり、そして3になる。
他の探索者とたまに出会うが、ほぼ全部がパーティで行動していた。
一人でドローンを上げている俺を見て、誰もが驚いたような表情を見せる。
他の探索者パーティを見たら、素早く先に進んで戦闘を見られないように間隔を取った。
ミノタウロスのレベルが4になり、そして5に上がる。
ミノタウロスレベル5といえども強さにたいした違いはない。
ミノタウロスレベル5のステータスは、
HP 34
MP 0
力 29
防御外皮 34
知力 14
速さ 24
器用さ 29
スキル ブーメランスロウ
ドロップアイテム 鋼の手斧
で、各ステータスがレベルアップごとに1上昇しただけだ。
今の俺にとってこのくらいの差は、誤差の範囲でしかない。
いずれにせよスチール1発で倒すことができる。
そのうちにダンジョンの壁にぶち当たり、ここが第1階層地下空洞の端だということが分かる。
ドローンも付いてきているし、地図と照らし合わせても、ここが地下空洞の端で間違いなかった。
壁に当たったり、分かれ道で迷ったら、右に行くことに決めているので壁に沿って右に向かった。
現れるミノタウロスレベル5を次々に倒していく。
ミノタウロスでは手ごたえがなく、まるで敵がいないみたいだ。
さっき買ってきた、テイクアウトのチーズハンバーグ弁当を食べそのまま探索を続けた。
第1階層はかなり広い。
1日では回り切れないかもしれないと思いながら、地図で探索したところを確かめた。
うーん。
半分くらいはみてまわれたかな?
ドローンの移動スピードに合わせたので、半分しか回れなかったとしても仕方がないんだよね。
綾華との待ち合わせに遅れないように、クロークまで戻ってきて魔石と鋼の手斧を買い取ってもらった。
現金でもらっておけば、とーちゃんに手渡せる。
あり過ぎて渡し切れないほどあるけど、ATMから引き出してるのが面倒だからね。
スライムの胃袋に入れておけば、すぐに取り出せるし盗まれることもないんだぜ――メチャ便利。
少し出てくるのが早すぎたので、2階のパーラーでお茶でもしよう。
中学生がコーヒーを飲むのは生意気だろうか?
パーラーは空いていたので待たずに座れた。
メニューを調べて、アイスカフェラテを注文する。
そういえば、女将の静さんって、やくざがらみの借金があるって言ってたよな。
――とーちゃんが300万貸してやるんだって言ってたけど、それじゃあ金利にしかならないって。
とーちゃんは、静さんの借金を全部払ってやるつもりだろうか?
もしそうなら、その金額はいったい......?
1億くらい渡すつもりでいた方がいいのかな。
資金の出どころは、俺しかありえないもんね。
......ていうか、俺が出さなかったら、とちゃんが盗みで稼いだ金しかないじゃん。
それはダメだよ。
だから、今度会ったら――今晩飯を食いに行ったら全部おれが出してやろう。
よし――そうと決まってすっきりしたぜ。
金で解決できるのなら簡単だぜ。
そろそろエントランスホールに行っておこう。
俺はパーラーを出て1階に下りる。
エントランスホールにそこそこ人はいるが、綾華はまだ来てはいない。
この前待ち合わせたあたりで待つことにした。
20分ほど待っていると、綾華と門松さんが歩いてくるのが見えた。
綾華が手を振って近付いてくる。
俺も胸のところで小さく手を振り返した。
「天心君。おまたせー!」
「たいして待っていないよ」
「今来たところ?」
「実は、学校を早引きして、第1階層を探索してた」
「ちゃんと学校に行かなくっちゃダメじゃない」
「まあ、いろいろあってね」
「ふーん。いろいろあるんじゃ仕方ないか」
妙に物分かりがいいんだね。
「第1階層の半分くらいは回ってきたよ」
「あと半分は、見てないのね?」
「まあ、そういうこと。
で、......綾華は今日、何階層を探索したい?」
「やっぱり第3階層くらいじゃないと、相手が弱過ぎちゃうよね?」
「分かった。じゃあ、第3階層を探索しよう」
「分かったわ
それじゃあ、着替えてクロークの前に集合ね」
「了解!」
俺たちは、またダンジョンに向かった。
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