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事案の中身

「あのー楓さん、どうしてここに?」

 その狐の顔は……狐っぽい顔の人間という意味でなく、本当に首から上が狐なんだけどな。

 目の前にいたのは、楓さん。

 俺の運命を変えた運命のひと?まぁつまり、狐の巫女様だった。

「そなたの話を聞いて、うわさの海の者に()うてみたくなってのう。

 さっそく、知り合いに話をつけ紹介してもらい、ここにたどり着いたというわけじゃな」

「……ありゃ、なんかご心配をおかけしましたか。すみません」

「いやいや、気にすることはない。

 実は、ここの管理人は知り合いでな、ここもだいぶ前に来たことがあるのでな」

「そうなんですか?」

「おまえさんのような者は時々出るからのう」

「……そうですか」

 つまり、今の俺みたいに人外の世界に接点のできたヤツってことか。

 なるほどなぁと納得していたら、サワナさんが言葉を続けた。

「マコトさん、すごい方とご縁があるんですね」

「え?いや、俺のはただの偶然だから」

 たまたまあの日、単車で上野広小路にいて、そして楓さんが行きたい神社のことを知っていただけ。

 そういったんだけど。

「めぐり合わせとはそういうものじゃよ」

「そうなんですか?」

「うむ。

 この世に偶然がまったくないかどうかは、わしも知らぬ。

 知らぬが、ほとんどの事象が偶然に見える必然に過ぎぬというのは本当のことじゃ」

 そういって楓さんはうなずくと話を続けた。

「ま、そんなことは今は良い。

 そなたがここの者に関わっている事と、抱えておる問題について聞いたのじゃよ。

 それで、そなた車の免許はあるのか?」

 ああ、例のハイエースの件か。

「あります、ハイエースも運転できますよ……ただし乗ったことあるのは古いマツダのトラックなんですが」

 バイト先で使っていて、俺も少し乗り回したことがある。

「すると慣れの問題か?」

「はい、そうなります。

 あと、自分の車として乗り回してたのは、古い軽四なんですよ。

 しかも都心じゃなくて、交通量もなくて広い北国での話なんです」

 仕事の都合で二年ほど過ごした寒い土地。

 乗り慣れた単車では冬に困るということで、安い車を探していたら出てきたもの。

 近年のオートマ車の広がりで、乗り手がなくなり廃車待ち状態だったマニュアル車の軽四。

 俺はそれを事実上の冬タイヤ代と酒一本で譲ってもらい、乗り回した。

 

「車はよく知らぬが、マニュアル車はオートマより運転が難しいのであろう?ならば、そのマニュアル車に乗っておったそなたなら問題ないのではないか?

 サワナ嬢、問題の車は」

「はい、ATです」

 そもそもマニュアルのハイエースってあるのか?まぁバンタイプなら設定あるだろうけどさ。

 いやいや、問題はそこじゃない。

「オートマにはオートマの癖と問題がありますけど……レンタカーで多少乗ったことありますから、慣れれば何とかなると思いますよ。

 それより問題は大きさに慣れてないことと、人の多い都会で乗り回した事がないってことです。

 俺なら最悪でも誰かにぶつかるだけですけど、子供を運ぶわけですから」

「なるほどなるほど、それは確かに難題であろうのう。

 慣れない大きな車というだけで神経を使うのに、さらにこの、人だらけの東京で乗るのじゃからのう」

「はい」

 そこまで言ったところで、楓さんはすごい事を言い放った。

「ならば、人がいないところで練習すればよいのではないか?」

「……はい?」

 俺は楓さんの言いたいことがよくわからなかった。

 そんな俺に楓さんは笑うと、懐から鈴のようなものを取り出した。

「これをやろう」

「……えっと?」

「これは結界鈴の一種じゃ」

「けっかい、すず?」

「簡単にいえば、例の、人のいない場所を通ることのできる通行手形のような道具じゃよ」

「あの道を……マジですか?」

「うむ。

 まぁ残り一年ほどしか使えぬし、せいぜい武蔵国(むさしのくに)下総国(しもうさのくに)限定程度でしか使えぬが、どうじゃ?

 道はあれど人のいない、あちら側の武蔵野と下総で大柄な車体に慣れ、そして上総(かずさ)常陸(ひたち)の国で現実の道路交通と人にも慣れればよい。一年間。

 どうじゃ?

 これなら安心して女子どもを乗せつつ訓練できるのではないか?」

「……」

 思わず絶句してしまった。

 そりゃそうだ、俺には願ってもない話じゃないか。

 

 期間限定とはいえ、誰もいない都内の道でハイエースを乗り回し練習できる。

 そうして大きさと取り回しに慣れつつ、サーナちゃんを海につれていくこともできる。

 

 確かに、全ては解決する。

 するのだけど、ひとつだけ言いたい事ができた。

 

「ひとついいですか?」

「なんじゃ?」

「わざわざ、こんな期間限定の道具まで用意してもらって、お礼のしようもないんですが」

「ん?いや、たまたま遊んでおった結界鈴を再利用しておるだけじゃが?」

「こんなピンポイントで?」

「……うむ、そうじゃとも」

 ははは、目が泳いでますよ楓さん。

 

 たぶん再利用そのものは事実なんだろう。

 でも練習のためか何か知らないけど、場所と期間を狙ったように限定した力の付与など、それなりに手をかけたのはおそらく間違いないんじゃないだろうか?

 

 まったく。

 すごくありがたいけど、こんなん返せねえぞ。

 

「ありがたいと思ってくれるなら、そなたらにひとつ頼みがあるんじゃがな」

「というと?」

「マコト、そなた最近、出先で河童やら烏やら助けておるじゃろ?」

「……なんで知ってるんですか?」

「下総に来た烏が、そなたのことを報告しよったんじゃよ。

 きけば、似たような話が出るわ出るわ。

 男が相模から武蔵野・下総にかけて、カラカサの家を探したり猫と談笑したりとな。

 うむ、なかなか善行をしておるようじゃないか?」

「あれは、たまたま気まぐれです」

「そりゃそうじゃろ、義務や強制でやるのは善行とは言わぬ」

「……」

 いや、そうかもしれないけどさ。

 俺にだって、その日の酒はうまいってメリットがあるわけでさ。

 でも、楓さんは聞いてくれない。

「やってほしいのは、要はソレの延長じゃよ。

 そなたの運転するワゴンに便乗したい者がいたら、快く載せてやってほしい。

 ああ言っておくが、嫌な相手や怖い相手まで乗せなくともよいし、相手にあわせて目的地を変える必要もないぞ?

 今まで単車でやってきた事そのまんま、あくまで『ついで』で良いんじゃ」

 ああ、そういうことか。

「今まで通りでいいってんなら別に俺はかまいませんよ。

 ただ俺の車じゃないんで、今の持ち主がよければですが」

「はい、いいですよ」

 こっくりとサワナさんがうなずいた。

 

 

 さっそく、鈴をハイエースにとりつける事になった。

 アパートの建物から出て別棟の車庫に移動する。

 そこには先日と同じように数台の車があり、その中にハイエースも鎮座していた。

「ルームミラーのところにぶら下げるが良かろう」

「はい」

 サワナさんが鍵をあけてくれた。

 俺はサワナさんに鈴を渡そうとしたが、首を横にふって「マコトさんがつけてください」と言われた。

 言われるまま、ルームミラーに鈴をとりつけたんだけど。

「?」

 なんか、車内で何かがピシッと鳴ったような気がした。

「どうしたんですか?」

「いや、何か鳴ったような気がしたんだけど、気のせいかな?」

「それは、車がそなたを認識したのだろうよ」

 へ?認識?

「わからぬなら、今はわからぬでもよい。

 ところで、どうせ鈴をつけたのなら、このままお出かけすればよいのではないか?

 どうせ週末であるしのう。

 そなた出勤予定はあるのか?」

「……ないです」

 俺はためいきをついた。

「これ、起動する時はどうするんですかね?注意点とかあります?」

「起動には『移動したい』という気持ちをこめ、鈴を指で叩いて鳴らせばよい。

 ただし周囲にいる者を巻き込む事があるから、それだけは注意するんじゃぞ?」

「なるほどわかりました。時間制限とかあります?」

「別にないがひとつだけ。

 一年後、効力が切れる前兆になったら違和感で気づくと思うが、その場合はなるべく早く現世に戻っておけ、よいな?」

「……もし戻る前に切れたら?」

「唐突に元の世界に戻される事になる。

 それ自体は問題ないが、戻った先に車があったら事故は避けられぬし、高速道路上なら困る事になるやもしれぬぞ?」

「あ、そうか」

 そりゃそうだ、やばいわ。

「了解しました、それだけ注意します」

「うむ」


先日の連休中、南総方面に行ってまして。

久しぶりに単車(誠が乗ってるのと同じレブル250ABSモデル)で上総の灯籠坂神社の方にもいったんですけど、珍スポットとして取り上げられてしまったようで、なんかの撮影みたいなのが来ててゆっくりできず。

また今度、ゆっくり再訪してみる予定です。

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