3 ☆
「ロシア美女とはよくやったじゃないか颯介! それでこそ俺の息子だ! ……ん? なんでそんな残念そうな顔をしている……?」
こうだい
夜に眠れば、今でもよく、私の夢に出てくる光景がある。
流れる血に、激しい戦闘の景色だ。黒煙が立ち込める辺り一面では、攻撃魔法や破壊魔法の光が輝いており、それが一つ光るたびに、間違いなく一つの命が消えていった。
夢にリアルもフィクションもないと言われればそれまでであるのだが、実際にどれもが目の前で経験したことならば、怯えもする。
――ましてや、それがまだ、年端もいかないような少女の時の記憶であるのならば。それは記憶の奥に、強く深く根づいていくものだ。
※
ちゅんちゅん、と窓の外で小鳥の鳴き声がしている。エアコンをがんがんに効かせた涼しい部屋の中
で、彼女は目を覚ました。
今になっても、このふかふかのベッドの感触は、よく慣れないものだ。静かな夜に寝て、ベッドの上で目を覚まし、一日の始まりを体感する。当たり前の感覚が、彼女の場合は、そうでもない。
「喉、渇いた……」
目を擦り、ロシア生まれの彼女、エレーナはベッドの上から足を下ろす。大人サイズのだぼだぼのTシャツに、下は履いていない。着るのが面倒臭いから。
元々目覚めは良かったはずだ。それこそ、なにかの緊急事態にすぐにでも対応できるように、身体のスイッチを一瞬で入れる必要があったから。わずかにでも反応が遅れれば、それは即自分の死に繋がり、誰も助けてはくれない。
しかし、この平和な国へ来て、この穏やかな家の中で暮らすうちに、すっかりこのライフスタイルが板についてしまった。
身長は日本人の平均身長よりはわずかに高いぐらい。すらりと伸びた白い綺麗な脚が、だぼだぼのTシャツしたから覗いている。自分の年齢は知らない。物心がついてから、十数年経ったのは確かだが、正確な年齢は教えられていない。本来、それを伝えるべき両親と言うものの名も姿も、私は知らない。だから、私の名前はファーストネームのみだ。ただ、エレーナと言う名前すらも、それが本当のものなのかも、定かではない。
あくびをしながら冷蔵庫に向かい、冷たい水を喉に流し込む。
「……掃除しないと……」
ぽりぽりと髪をかき、エレーナは居候をしている志藤家のリビングを見渡す。
昨日の夜は深酒をし、空いた酒瓶と、コンビニで買ったおつまみの空き袋やなにやらが、辺り一面に散乱している。
エレーナはひと呼吸をすると、魔法式を展開し、物体浮遊の魔法を巧みに扱う。落ちていた袋や空き缶が部屋の中で浮かび上がり、一斉に手元に集まってくる。燃えるごみは専用のゴミ箱へ、缶も専用のごみ箱へ。きちんと別けなければいけないと言うのが、ルールらしい。
少し前ならば、この手で生み出した魔法で目の前の人々を傷つけてきたのが、今では掃除の為に使い、社会のルールにきちんと従っている。自分でも、良くわからないものだ。
「暇だ。ソースケ……帰ってこないかな……」
掃除の傍ら、気がつけばそんな独り言をつぶやいている。アイツがいないと暇だ。話し相手もいない。日本語は理解できるし、テレビも見ることが出来るが、どちらかと言えば生の人間相手に話をする方が楽しい。
それに、アイツと話していると、とても楽しい。少なくとも、どこかもよく分からない森の中で、武骨な焚火を前にして、敵や猛獣やらに襲われる心配がある中で、国籍も身分も経歴もよく分からない男たちの話相手をさせられるよりはマシだ。
「――ただいまー」
そんなことを思っていると、アイツの声が、玄関の方から聞こえて来た。
ソースケが帰ってきた。なぜか自然と、口角が上がってしまい、エレーナは起きたままの姿で、玄関まで迎えに行っていた。
※
――数時間前。
父親との約束を交わした志藤颯介は、部屋を後にした。
外では八ノ夜と草鹿が会話をしており、志藤はそこへ軽く頭を下げる。
「もう良いのか?」
八ノ夜が訊いてきて、志藤は頷く。
「はい。父さんの為に、ありがとうございました」
「まだ志藤さんの容態は予断を許さない。やはり、脳へのダメージが大きい。奇跡的な回復は見せてくれているが、しばらくは寝たきりの状態が続くだろう」
草鹿が胸元のポケットからタバコを取り出して、それを咥えようとする。
八ノ夜のこほんと言う咳払いに気がついて、草鹿はバツが悪そうにタバコをしまったが。
「安心しろ。お前のお父さんは、絶対に治してみせるよ」
「頼みます……ありがとうございます」
志藤は草鹿にもう一度頭を下げ、歩いていく。
「……」
廊下の窓の外を見れば、残り少ない夏休みを満喫しようと、正門から外に出て街に出掛けていく生徒が多く見える。
今年の夏休みは、八月の最終日が土曜な為、日曜日である九月一日もついでの休みとなり、一日だけ得したようなものだった。それを考えれば、残りは二日である。
志藤は彼ら彼女らの姿をじっと眺め、続いて、友だちである天瀬誠次の事を思い浮かべる。
弁論会の裏で、彼が行っていたことは、彼自身や真からも全て聞いた。
バラバラになっていた特殊魔法治安維持組織の元隊員たちが集結したこと、そして、ある者は特殊魔法治安維持組織を土壇場で抜けたこと。
今は彼らは、これからのことについて、話し合いをしているらしい。十中八九、そこに天瀬は深く関わることだろう。
「……エレーナか」
ふと、ズボンにしまっていた電子タブレットが、彼女からの着信を告げる。
そう言えば、年上の彼女のことを父親に話しそびれた。まあ、あの状況で話したとしても、伝えきれることはなかっただろう。強いて言えるとしたら、勝手に家を使わせてごめんなさい、だろうか。
――ただ、今の志藤にとっては、エレーナの存在は、必要不可欠となっていた。
【今日もするのか?】
彼女からのメールだ。
彼女の性格らしい簡素な文面だが、どんなことかは、すぐに理解できる。
それに対して志藤は勿論、と返そうとしたが、ふと、もう一度窓の外を見る。
そして、先程も見た光景をしっかりと目に焼き付け、電子タブレットのホログラム文字盤に指をタッチする。
【悪い。今日は休もう。ただ、明日はちょっと付き合ってほしい】
と文字を送信すれば、彼女からの返信はすぐにあった。
【わかった】
相変わらずの簡素な返信。それはやはり、彼女が元々過度なコミュニケーションなど必要ない血生臭い場所にいて、そこで育ったから、だろうか。
ただ、立て続けに送られてきた文面を見たとき、志藤は思わず張り詰めていた表情を解す事になる。
【焼き肉食いたい】
【はいはい……】
なんだかんだで、困った誰かの力になりたいのは、あいつと同じ思いなのかもしれない。それが例え、父親にそんな名をつけられた際の宿命だったとしても、悪くはない。
また出費がかさみそうだ。人知れずやっているバイトの日も増やさなければならないだろうと思いながら、志藤は電子タブレットを閉じた。
いや、分かってはいたし、覚悟はしていた……。
しかし、いざ宅配ボックスを開けてみると、途端に足元にばさばさと落ちて来たのは、封筒に入ったこれでもかと言わんばかりの量の請求書の数々。
志藤は頭とそれらを抱えながら、都内マンションである自宅へと、夏休みの終盤に帰って来ていた。
「ソースケ! よく帰って来たな!」
「お前の家かっ! なんかこの立ち位置納得いかないんスけど!?」
帰って来るなり、Tシャツ一枚の姿でお出迎えをされると、こちらとしても直視するわけにはいかず、顔を赤くした志藤はそっぽを向きながらもツっこむ。
「なにいっぱい持ってるんだ? お土産か?」
「こんな薄っぺらい封筒がお土産に見えるんスか……? 全部請求書っスよ!」
「はッ! そいつはめでたいな」
「いやどこがっスか!?」
近隣住民の迷惑極まりない声量でツっこんでしまい、志藤は慌ててエレーナを押して家の中へと入る。
「まったく。せっかく帰ってきたんだし、もっとゆっくりしたらどうだ」
入ったはいいものの、どこか慌ただしく身支度を整えている様子の志藤に、エレーナは壁に腕を添えて言う。
「いや、悪いけどこれから忙しくなるんだ」
「へー。そりゃあまた」
「エレーナ。俺についてきてくれるか?」
先ほどまでの和やかな雰囲気は一転、志藤が試すような視線をエレーナに向ける。
「……」
エレーナは、一瞬だけきょとんとした様子で志藤を見つめる。
そして、どこか面白そうに、含み笑いを零していた。
「いよいよそれらしい顔つきになったじゃないか、ジャパニーズボーイ?」
※
特殊魔法治安維持組織を離反した主な面々のアジトと言うべき場所は、現在、東京都内のとある高層ビルの一角となっている。高度な治療を必要とする志藤康大を除き、ヴィザリウス魔法学園に潜伏したままと言うわけにもいかず、こうして新たに場所を借りていた。
「さて、まずは今いる僕たちだけで、現在の状況を整理しよう」
そして、現在この無機質なタイル床と壁がむき出しの、家具も何も空間にいるのは、三名の元特殊魔法治安維持組織の男性であった。
影塚、日向、南雲である。同級生トリオでもある。
「僕たちの目的は、志藤康大の容態回復と、それに伴う現在の特殊魔法治安維持組織への反旗」
「反旗、ねえ。具体的に言うと、もう戦うっきゃねー感じっつーの?」
ユエの問いに、影塚はうんと頷く。
「ただ、忘れてはいけないのは、僕たちはあくまで正当性をもって戦わなくてはいけないということだ。その点では、向こうの出方も大きく関わってくる。復讐を大義名分にしたところで、世論は決して得られないだろう。……誠次くんの、言う通り」
「新崎がこのまま何もしないということはないだろうな。雨宮の件を見ても、必ず何かしらの動きは見せるだろう」
日向は顎に手を添え、そんなことを言う。
「一番いいのは、志藤局長の容態が回復し、世間に真実を訴えることなのかもな」
「勿論。そうした場合、新崎は真っ先にそれを潰そうとするだろう。そのときこそ、僕たちの出番だ」
「まあ、俺たちはどっちみち国家組織を相手にしてるんだっつーの。慎重にやんねえと、あっという間に潰されんのはこっちの方だっつーか」
声はよく響く部屋の中、ユエが二人に言う。
「そうなってしまうね。日向も南雲も、いつなにが起きてもいいように、警戒は常に怠らないでおいてくれ――」
影塚がそこまで言ったところで、不意に、ビルのエスカレーターがここに辿り着くことを知らせる黄色いランプが灯る。
まさか、タイミングが良いのか悪いのか。
影塚は、日向と南雲に無言でアイコンタクトを送る。
――こうも早く追手が追跡に来たのか。特殊魔法治安維持組織ならば可能かもしれないという、最悪の事態を想定して、日向と南雲は共に幻影魔法の魔法式を展開する。
影塚もまた、自身に変性魔法を施し、見た目を大きく変え、工事作業員のよくあるつなぎ姿と言った風貌になっていた。
「……?」
やがて地上のエレベーターが到着し、ドアが開く。
その中から現れたのは、影塚も見覚えのある、年下の少年だった。
「こんばんはっス。打倒特殊魔法治安維持組織集会はここで間違いないんスよね?」
「え……君は……志藤颯介くん!?」
つなぎを着た作業員の風貌の影塚は、エレベーターに一人で乗っていた少年の姿を見て、驚く。
「どうしてここが?」
「ええと、まあ、尾行っスかね……。特にあの、髪白い人で、わかりましたっス」
「俺かよ!?」
幻影魔法でこの場を作業風景に変えていた南雲が怒鳴ってしまえば、高度な魔法も解除され、奥からは南雲と日向が姿を現す。
そして日向が、ユエの頭を押さえつける。
「馬鹿かお前はっ! 学生相手につけられて、幻影魔法すら解除するとは……」
「う、うるせーっつーの! こちとら十分警戒してたっつーの!」
日向と南雲が言い合いをしてしまうのを、志藤はどこか申し訳ない思いで髪をかき、見守っていた。
「バレてしまったのなら仕方がない。ごめんね志藤くん。君のお父さんを、早くに君に会わすことができなくて」
暑苦しい変装を解き、影塚が志藤に軽く頭を下げる。
会えましたし、構いません。と志藤は、首を軽く横に振る。
それよりも、と志藤は真剣な表情で、三人の年上の男を見渡した。
「皆さんにお願いをしにきました。俺も……あなた達と共に戦わさせてください」
志藤はそう言って、頭を下げる。
そんな志藤の、元魔法生の後輩の姿を見た三人は、顔を見合わせる。
「志藤くん。お父さんの敵を討ちたい気持ちはわかるけど、君はまだ学生だ。危険なことに巻き込むわけにはいかない」
影塚が首を横に振るが。
「だったら、天瀬誠次はどうなんです? あいつだって、俺と同じ魔法生のはずです」
このあまりに早い切り返しは、おそらくとも言わず志藤の中で想定していた受け答えだったのだろう。
「彼は特別な力を持っている。そして、覚悟もある」
「俺にだって覚悟はあります。そして、力もつけました」
「志藤颯介。これは普通の魔法生の普通レベルの授業の話ではない」
日向がそのようなことを言ってくる。
分かっていますよ、と志藤は意地でも引かずに、年上の三人組を睨み返す。
「ええそんなことは、承知の上です。その上で、俺も一緒に戦わせてほしいんです。最前線でも、バックアップでもいい……とにかく、俺も特殊魔法治安維持組織の変革に関わりたいんです。いや、関わらなくちゃいけないんです!」
志藤は叫ぶようにして、三人の年上の魔術師たちに言いきる。
「そうは言ってもだな、志藤……」
ユエが髪をがしがしとかいていたが、その横から一歩前に進む人物がいた。
「……影塚。認めてやろう。志藤颯介は、この戦いに参加させるべきだ」
意外にも、一番否定的になると予感していた日向が、真っ先に志藤を引き入れようとしていた。
ユエが、意外そうに日向をまじまじと見る。
「ひゅー。これはどう言う風の吹き回しだっつーの? あのお硬い日向さんが、認めちまうだなんてっつーの」
「……責任は俺が取る。影塚。戦力的に見ても、こちらの劣勢は変わっていない。一人でも多くの人材を確保することは重要だと思う。それが今のところ学生でも、だ」
日向がそう言うのを、影塚は横目で確認する。
「日向……。まさか――……」
「……」
影塚が放った鋭い言葉が、日向の眉根を寄せる。
その横顔を見た影塚とユエは、なるほど、と互いに目を合わせ、理解したように頷いた。彼にはまだ、果たせていない責任があった。それを果たすためにも、日向は、志藤の願いを了承したのだ。
そして、ゴクリと息を呑む志藤へ、日向は切れ長な瞳の視線を送る。
「覚悟があると言ったな、志藤颯介?」
「……はい」
「ならばその覚悟、俺が直接試す」
日向はそこまで言うと、次には、ややぎこちなく、微笑みかける。
緊張のあとの緩和であった。対し、志藤は背筋をぴんと伸ばし、返答する。
「こわ……い、いえ。簡単な話じゃないってことの、区別はついているつもりっス」
「あーあ。日向と悪魔の契約しちまったなー志藤くん。こりゃあ、半分学生やめる覚悟がなきゃだめだっつーもんだぜ?」
「そんな俺たちのあと半分の学生生活を守るためだったら、俺も戦いますよ」
茶化し笑いを浮かべる南雲の言葉に対し、志藤はどこか気恥ずかしそうに、後ろ髪をかきながら、口角を上げて答えた。
「わかった。確かに日向の言う通り、不足している戦力は欲しい。それが学生であろうが、言うなれば、現役魔術師と言う見方もある。――それも、急激な成長途中の」
「おいおい。俺たちはもうおっさんっかっつーの? まだまだ現役バリバリだっつー自覚あるんだけどー?」
南雲が天を扇いでいるが、その表情はやはり、晴れやかでもあった。
影塚らとひとまず別れた志藤は、ビルの下の階にて、待っていた女性と合流する。
「話は終わったか、ソースケ?」
「ああ。さすがプロだな。特殊魔法治安維持組織相手に尾行できるなんて」
エレーナはどこか誇らし気に、鼻の先を少しかく。
「当たり前だ。平和ボケの連中と私を同じにするな」
それよりも、とエレーナは志藤を見つめ、
「焼き肉! 連れてけ!」
「確認スけど……あんた、俺より年上なんスよね……?」
「年の差くらい気にすんな!」
「開き直るの、アンタの方なんスか……」
この女性は常識を知らない。生粋の傭兵として戦っており、一般常識を全くもって学ばずに日本へ来て、なし崩し的に居候させている。そうさせないと、またどこかで悪さをするかもしれないし、何か変なことをしでかすかもしれないし……等々。
つきつめれば、学生である自分がこの年上の女性に対し、あれやこれやとしてやる必要もないのかもしれない。
――だが、時々思うのだ。
自分がもしも父親やアイツであるのならば、彼女に対し、同じような事をしようとしたのではないのだろうかと思う。そうしたことの積み重ねで、誰からも愛される人になろうとする。偽善だとか、八方美人だとも言われるが、しかし、それは決して、悪いことではないのではないだろうか。実情はともかく目指すのであれば、誰かに嫌われる人よりかは、誰からも愛される人の方がよっぽどいいと思う。
そして、自分が救いの手を差し伸べることで誰かが救われる――例えば彼女が路頭に迷うことを防ぐ――のならば、きっとやる意味はあるはずだ。
(ま……親友の場合は、誰からも好かれようとしまくりな気もするけどな……)
自分の場合は一人だけでも大変だと言うのに、困っている人を助け続け、そのうち頭のあんぱんを分け与えすぎて、自分が自分でなくなってしまいそうだ。
そんなとき、彼が彼であることを取り戻すための役目を、自分が少しでも担ってやってやれたら、それはもう友だちとしては及第点なのではないだろうか。
よくあるような、男子高生の友として、たまにはくだらないことで笑い合ったり――。
「やっきにく、やっきにく~!」
「ご機嫌、スね」
「当たり前だろ! なにより、お前と食う飯は美味いんだ、ソースケ!」
「そりゃあどうもっス」
もしも目の前を歩く年上の彼女が、年相応の普通の女性に戻ったとき。その時にどうなるかは、まだ学生の身分である自分には、分からないのだが。
~彼は年下の男の子~
「おーい、当然ですが天瀬くん!」
さよこ
「なんですか、相村先輩?」
せいじ
「暇だし、かおりんの好きなところ山手線ゲームやろ!?」
さよこ
「めちゃくちゃ急ですね!」
せいじ
「問答無用! 一緒にせーの!」
さよこ
「友だち思いで頭がいい!」
さよこ
(負けるわけにはいかない! 短すぎたり、ありきたりな回答も駄目だ!)
せいじ
「し、しっかり者で頑張り屋さんな立派な生徒会長です! 尊敬できる魔術師です!」
せいじ
「牛が好きでよく食べる!」
せよこ
「髪が綺麗で美人なところと、それを本人が謙遜して恥ずかしそうにしているところです!」
せいじ
「触ると気持ちいー!」
さよこ
「す、スタイルが良いと思います! これも本人が謙遜してるところがまたですね――!」
せいじ
「あのおみ足はレアもの!」
さよこ
「タイツもストッキングも似合ってます! 椅子に座ってる時とか、つい見てしまいます!」
せいじ
「眼鏡を取ると……!?」
さよこ
「こう、髪の間からちらりと覗くなきぼくろがすごく色っぽいです!」
せいじ
「しゅーりょー!」
さよこ
「……なんか、全体的に変態臭がするけど、誠次くん……?」
さよこ
「そ、そんな……俺は、必死に考え、て……っ」
せいじ
「佐代子に言われて見えないところから聞かされてたけど、途中から趣旨変わってないかな!?」
かおり
「……ものすごく、嬉しい、けど」
かおり




