↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
36/46

女子高生と王子と2

本日二回目の更新です。

早々に王位につく。


マクシミリアンは意味が分からず怪訝な顔を浮かべた。

「私が王位に着くのはまだ先になる。父上はまだご健在だ」

「うん、だから早々に国王やめてもらってあなたに継いでほしいんだよね」

恐ろしい事を平然と口にしているが、冗談ではなさそうだ。マクシミリアンは困惑して無意識に声音を小さくする。


「なにを言っているんだ。そんなの無理に決まっているだろう」

「なんで? あの王様、毒にも薬にもならないでしょ。たまたま荒れた時代の王様になって、棚ぼたで国が救われただけでしょ? 聖女様に助けられたくせに自分の手柄だと勘違いしてる、名前ばっかりの役立たずじゃん」

「なにを…っ!」

激昂しかけたマクシミリアンは咄嗟に口を噤んだ。


マクシミリアンが反論しようとした瞬間、濃密な殺気が膨らんだからだ。

この部屋にいるのはマクシミリアンと少女だけだ。この異常なまでの殺気を放っているのがマクシミリアンでなければ、目の前にいる少女しかいない。

空間を支配するような強烈な殺意に、マクシミリアンは身じろぎ一つできなかった。


少女の瞳は怒りに燃えていた。その焔の強さは、今まで隠されてきた闇を照らすかのように光っている。


「15歳の少女1人に、この国はどれだけの重圧を背負わせた? 誘拐した上で監禁し、望まない洗脳教育を施し、危険に晒して目的を果たせばまた監禁。それなのにあなたはまた一つ誓約を破り、桜さんを傷つけた。その上であなた達は、彼女に民を背負えと言う」

そこに先ほどの揶揄うような色はない。優しい聖女とは違い、少女は容赦なく罪を突きつけた。


「何千万もの民がいて、何度も同じ歴史を繰り返して、なぜ未だにこの国が聖女に頼らねばならないのか教えてあげようか。それはこの国が依存することしか知らない底抜けの馬鹿どもの集まりだからだよ。聖女が来れば救われる。それに甘んじて他の解決策も取らず、ただ漫然と時間稼ぎをして聖女を待つ。本能で解決策を見出す野生の動物の方がよっぽど賢いよね」

嘲るように吐き捨てられ、マクシミリアンは苦しげに少女を見つめた。


「それは、他にどうしようも…」

「誰が、何を、どう試して、どうしようもないって判断したのかな? 時間稼ぎで戦う以外、婚約者くんはなにをしてたの?」


言われてマクシミリアンは口を噤ぐ。

自分達は命を賭して戦っていた。とにかく国民を国を守ろうと戦った。


聖女を待ちながら。瘴気が限界に達するのを、待ちながら。


少女はそんなマクシミリアンを静かに見つめた。

「なにもしてないよね。聖女が来る前提でしか、この国は動いてない。何百年もずっと。目の前に解決策があるなら大丈夫、そう思ってたんだろうね。だって現実にならなければ、他人事なんだから」

切り捨てるように少女は言う。マクシミリアンは反論も出来ずに唇を噛んだ。


「人間1人の人生で解決できるなら安いもの。国のためだから仕方ない。そうやってあなた達は桜さんを散々縛った。優しい彼女を情という檻に閉じ込めた。ふざけるのも、大概にしなよ」


マクシミリアンの脳裏に涙を流す少女の顔が浮かんで、たまらず拳を強く握った。

「それは! 本当にすまないと思っているんだ。誘拐は許されることじゃない。私が犯した間違いも、許されることじゃない」

己の罪を悔いるマクシミリアンを、少女は冷ややかに見つめた。


「私、償いの用意されてない謝罪って嫌いなんだよね。都合が良すぎて反吐が出るから」

冷ややかな表情のまま、少女は笑う。


「心から謝罪する人間ってタチが悪いよね。騙されたお前が悪いって言う方がよっぽど良心的だよ。だって桜さんみたいなタイプって、心からの謝罪ならどれだけ苦しくても許しちゃうからね。ねえ、償いもせずに謝罪するのって、どんな気持ち?」


突き刺さる言葉にマクシミリアンは何も答えられなかった。


己の罪が苦しくて、許されなくてもいいからと謝罪を口にした。

だが目の前の少女は言う。その謝罪になんの意味があるのかと。

その通りだ。マクシミリアンはただ苦しさに耐え切れず謝罪したにすぎない。


「でもね、私はただ婚約者くんを責めに来たわけじゃないんだよ。あなたがどれだけ誠意を見せられるのか、聞きに来たの」

少女は言いながら、テーブルに二つの何かを置いた。今まで何も持っていなかったはずだ。

しかし聞けるような雰囲気ではない。マクシミリアンは大人しくテーブルに目を向けた。


一つは、無色の液体が入ったガラスの小瓶。

もう一つは、手で抱えるには少し大きめの木製の箱だ。


少女はチェスを持つように、コトリと小瓶をマクシミリアンに差し出した。

「これは、あなたが王位に着くために必要なもの」

少女は次に、木製の箱をツイと差し出す。

「これは未来の国を救い、未来の桜さんを出さなくて済むもの」


二つの何かを眼前に突きつけて、少女は優しく笑った。

「これを使えばあなたは咎を背負う事になる。でもあなたが本当に国を思い、桜さんに申し訳ないと思うなら、これを受け取ってもらうよ」


謝るなら、覚悟はできてるんだよね?


少女の目は、冷静に、冷徹に、マクシミリアンに問いかけていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。