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盗賊と吟遊詩人

吟遊詩人用の武器であるリュートを奏でながら歩いているとどこからか人の声らしきものが聞こえてくる。


この世界に来て初の人の気配だ。


「うおっしゃあっーーー」


とたんに声の聞こえた方向へと全速力で走り出す。


吟遊詩人だけあって気合いの声は無駄に美しく、大きい。


ゲームでの<天使の歌声>や<声量上昇>等のスキルの効果だろう。


このシングの体の元になったゲーム、【エターナル・アルカディア】での吟遊詩人は他のゲームでの吟遊詩人というジョブとはひと味違う。


まず、普通のゲームでの吟遊詩人は後方支援職を思い浮かべるだろうが【エターナル・アルカディア】では魔法使い寄りの魔法剣士といったかんじだ。


通常攻撃は楽器を奏でることにより起こす衝撃波でMPを消費することなく遠隔攻撃を行うことができる。


それだけ聞くと強そうだが、もちろん欠点がある。


まず、吟遊詩人が行う攻撃の全てが基本”音”属性の攻撃であるということだ。


特殊なアイテムや武器を持っていない限り他の属性での攻撃はできない。


だから、ぶっちゃけ”音”耐性のある敵にはかなり弱い。


さらに全てのジョブのなかで吟遊詩人だけはアクティブスキル(自分の意思で発動するスキル)をレベルアップでは習得できず、”楽譜”というアイテムを手に入れて習得するしかない。


さらに攻撃魔法の数が少なく、魔法のほとんどが支援魔法である。


支援魔法は種類は多いが、それらも”楽譜”を手に入れなくちゃ覚えられない。


結果、吟遊詩人は【エターナル・アルカディア】において人気のないジョブだった。


しかし、俺は全ての楽譜を手に入れているため、好きにスキルを使えるし、先ほど出ていた<天使の歌声>や<声量大>などのパッシブスキルも全て習得している。


そんなことを考えているうちに、人の声にどんどんと近づいていく。


高い丘を登ったところで下に人がいるのが見えた。


高さは十メートル程あり崖のようになっていて、歩いて降りることは難しそうだ。


だがしかし、俺はためらうことなく、叫びながら丘から飛び降りる。


「俺の歌を聴けーーーー!!」


ズドンッと音をならして着地し、リュートをかまえ、歌おうとする前に聴衆に目をやる。


商人と護衛らしき人々が盗賊らしき人々と戦っている途中で動きを止めて、目を丸くして俺を見ていた。


やっべー、俺場違いじゃね?


しかし、引き下がらないっ。


俺は歌を聴かせたいんだ。


人々が唖然としているお陰で静かだし、むしろ好都合とさえ言える。


「んんっ。 あー、あー、 よし歌います。<むなしき戦>」


状況にあっているので、戦闘意欲減少の歌を歌う。


ゲームでは歌っている間、自分のレベル以下のモンスターをノンアクティブモンスターに変える効果があった。


これで最後まで歌を聴いてくれるんじゃないだろうか。


そうして、戦闘中で固まっている人達の横で歌っているという、カオスな状況が生まれた。

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