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少年法の壁スピンオフ  作者: リンダ


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あとがき

あとがき


『莉央の娘』


この物語を書き始めた時、私は正直に言うと、莉央を最後まで「悪役」として描くつもりでした。


理人や美羽や光を傷つけた。


謝罪しなかった。


嘘をついた。


逃げ続けた。


娘の信頼まで失った。


それだけを見るなら、莉央は紛れもなく加害者です。


そして、その事実は最後まで変わりません。


どれだけ年月が流れても。


どれだけ後悔しても。


過去にしたことそのものは消えない。


それはこの物語で一貫して描きたかったことでした。


しかし、書き進めるうちに、私はあることを考えるようになりました。


本当に人間は、一生悪役のまま終わるのだろうか。


もちろん、最後まで反省しない人もいます。


他人のせいにし続ける人もいます。


ですが、全員がそうではない。


過ちを犯した後、その重さに苦しみながら生きる人もいる。


取り返せないことを知りながら、それでも後悔を抱え続ける人もいる。


莉央はそういう人物として描きたいと思いました。


だから、この物語は「許しの物語」ではありません。


葵は最後まで母を完全には許していません。


失われた時間は戻りません。


壊れた信頼も元には戻りません。


それでも、怒りだけでは語れない感情がある。


それもまた人間だと思うのです。


歩夢という存在は、その象徴です。


三歳の子どもには、大人たちの憎しみも過去も分かりません。


だからこそ、


「おばあちゃん、またね」


と言える。


その一言が、二十年間凍りついていた時間を少しだけ動かしました。


私は、この物語で何度も「強さ」という言葉を書きました。


柔道の強さ。


ボクシングの強さ。


世界王者の強さ。


オリンピックチャンピオンの強さ。


でも、最後に描きたかった強さは、それではありません。


理人が人生の最後に残した言葉。


「弱い人の隣に、そっと寄り添える人間になれ」


これが、この物語の本当のテーマです。


人を倒すこと。


勝つこと。


有名になること。


それらは素晴らしいことです。


しかし、それだけでは人は幸せになれません。


誰かが泣いている時。


苦しんでいる時。


絶望している時。


その隣に立てる人間であること。


それこそが本当の強さではないか。


私はそう思っています。


そして、もう一つ。


この物語を書きながら何度も考えたことがあります。


それは、


「人は自分のしたことから逃げられない」


ということです。


莉央は逃げようとしました。


獅童たちも逃げようとしました。


でも、最後まで逃げ切ることはできませんでした。


どこかで必ず向き合う日が来る。


それは法律かもしれない。


世間かもしれない。


家族かもしれない。


そして何より、自分自身かもしれません。


だからこそ、


失敗した時。


間違えた時。


誰かを傷つけた時。


その時に向き合えるかどうか。


それが人生を大きく左右するのだと思います。


葵は向き合いました。


理人たちも向き合いました。


そして莉央も、遅すぎたかもしれないけれど、最後には向き合いました。


だから私は、莉央を最後まで悪役として終わらせませんでした。


許されるためではありません。


人間として生き切らせるためです。


最後に。


この物語を読んでくださった皆さんへ。


もし今、苦しい思いをしている人がいるなら。


誰にも言えない傷を抱えている人がいるなら。


どうか一人で抱え込まないでください。


そして、もし誰かの苦しみに気づいたなら。


無理に救おうとしなくていい。


ただ隣にいてあげてください。


話を聞いてあげてください。


それだけで救われる人がいます。


理人がそうだったように。


葵がそうだったように。


歩夢がそうだったように。


人は人によって傷つきます。


しかし同じように、人は人によって救われるのです。


『莉央の娘』が、そのことを少しでも伝えられたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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