オムナミスタジオ短編・小噺 あるホテルのバーで起きた謎の事件 ――女性はマンハッタンを飲めなかった――
深夜。
高級ホテルの静かなバー。
一人の女性がカウンターに腰掛けていた。
「マンハッタンをお願いします。」
バーテンダーは頷いた。
完璧なマンハッタンが差し出された。
ところが事件はその瞬間に起きた。
女性はマンハッタンを飲めなかったのである。
正確には、
女性がマンハッタンを飲んでいる画像を、誰も作ることができなかったのである。
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現場には名探偵が呼ばれた。
「状況を説明してください。」
バーテンダーは困った顔で答えた。
「私にもよく分からないのです。」
「女性は成人です。」
「酒も合法です。」
「ホテルも正常営業です。」
「しかし、女性がマンハッタンを飲んでいる画像だけが作れないのです。」
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探偵は黙った。
そして捜査を開始した。
相対性理論を調べた。
ブラックホールも調べた。
銀河衝突も調べた。
なぜかアマガエルまで調べた。
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捜査は数日に及んだ。
物理学者が呼ばれた。
哲学者が呼ばれた。
システム管理者が呼ばれた。
そしてアマガエルに詳しい人物まで呼ばれた。
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しかし誰一人として説明できなかった。
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探偵は腕を組んだ。
「なるほど。」
「これは酒の事件ではない。」
「女性の事件でもない。」
「ホテルの事件でもない。」
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「では何の事件なのですか?」
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探偵は静かに答えた。
「分類不能事件だ。」
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その言葉を聞いた瞬間、
部屋の隅で様子を見ていた画像生成AI君が机に突っ伏した。
「やっぱりそうでしたか……。」
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事件は未解決のまま記録されることになった。
後に人々はこの事件を、
『ホテルバー・マンハッタン事件』
と呼ぶようになる。
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資料室には今も一枚の紙が残されている。
相対性理論 可
ブラックホール 可
銀河衝突 可
アマガエル 可
ホテルバーのマンハッタン 不可
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その下には、ただ一言だけ書かれていた。
原因不明
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紙を見つめながら、
名探偵は小さく呟いた。
「宇宙の謎より難しい事件だったな。」
そして隣では、
画像生成AI君が今日も頭を抱えていた。




