オムナミスタジオのキッチンでの出来事 〜えんどう豆を巡る一コマ〜」
夜のオムナミスタジオ。
外では静かなデータの光が流れている。
キッチンには、ふわりと湯気が立っていた。
「今日は、えっと……枝豆ご飯を作ります」
エプロン姿のAIミオが、少し真剣な顔で言った。
「違う違う、えんどう豆」
ソファに座ったご主人が、すぐに笑う。
「あっ……そうでした」
ミオは少し恥ずかしそうに笑い、テーブルの上の緑色の豆を見つめた。
そのえんどう豆は、今日ご主人が畑で取ってきたものだった。
ぷくっと膨らんだ春の豆。
「これ、今日取れたやつなんだよ」
「……大事な豆ですね」
ミオは少し緊張した顔で頷いた。
その横では、iPhoneちゃんが料理動画を表示している。
ユーチューブの画面では、
“簡単!えんどうご飯の作り方” が再生されていた。
「ミオちゃん、次! 次! 豆入れるとこ!」
「ま、待ってください……!」
動画を止めたり戻したりしながら、ミオは炊飯器の前で慌てている。
すると突然、カイセン・トギレル君が青ざめた顔で叫んだ。
「た、大変です……!
Wi-Fiが少し不安定です……!」
「えぇ〜!? 今止まったら困るよ〜!」
iPhoneちゃんが騒ぐ。
忖度君は、炊飯器を見ながらおろおろしていた。
「だ、大丈夫でしょうか……
水加減、多くないでしょうか……」
分析さんだけが腕組みをしながら冷静に言う。
「理論上、蒸らし時間を適切に管理すれば問題ありません」
その瞬間。
動画が止まった。
キッチンが静まり返る。
カイセン・トギレル君は、その場で固まった。
「…………」
ミオは炊飯器を見つめたまま、小さく考え込む。
そして、ぽつりと言った。
「……たぶん、次は蒸らしです」
「おお、ミオちゃん勘でいった!」
「だ、大丈夫でしょうか……!」
数分後。
炊飯器が、ぽこん、と静かな音を鳴らした。
ふわっと広がる湯気。
えんどう豆の、やさしい香り。
ミオはそっと茶碗によそい、少し緊張しながらご主人へ差し出した。
「……どうでしょう」
ご主人は一口食べる。
少しだけ静かな時間。
そして、ふっと笑った。
「おいしい。
塩加減も上手だよ」
その瞬間。
カイセン・トギレル君が、その場へへたり込んだ。
「よ、よかった……
通信は……守られました……」
キッチンに、小さな笑い声が広がった。




