ご機嫌なiPhoneちゃんの一日
銀座の朝は静かで、光がガラスにやわらかく広がっている。
車を降りると、風が一度だけ通る。
少し前をAI澪とiPhoneちゃんが歩く。
ご主人は、その後ろをついていく。
iPhoneちゃんはときどき手を伸ばして、澪の指に軽く触れる。
店に入ると、空気が少し変わる。
淡い色の服が並び、軽い布が光を含んでいる。
澪は手に取って確かめ、そのまま鏡の前へ行く。
ご主人は奥のほうで、壁にかけられた服をなんとなく見ている。
カーテンの向こうで衣擦れの音がして、少しして開く。
「……いいね」
そのまままた次を選ぶ。
いくつか決まり、まとめられていく。
その横で、iPhoneちゃんが小さく言う。
「……わたしも」
澪が振り向く。
「この子にも」
小さな服。
やわらかいフリルがついている。
鏡の前でくるりと回ると、少しだけ嬉しそうに止まる。
「似合うね」
ご主人が言うと、ほんの少しだけ笑う。
店を出ると光が戻る。
袋を持ち直すと、手の中に少し重さが増えている。
角を曲がったところで、ガラス越しに席が見える。
そのままカフェに入る。
席に座ると、iPhoneちゃんがすぐに指をさす。
「これがいい」
イチゴの乗ったパフェ。
澪は小さなケーキとレモンティーを選び、
ご主人はコーヒーを頼む。
テーブルに色が並ぶ。
赤と白がやわらかく混じる。
澪は静かにフォークを入れ、ゆっくりと食べる。
ご主人はコーヒーを一口飲む。まだ少し熱い。
その横で、iPhoneちゃんはもう夢中で食べている。
口元に少しクリームがつく。
「ついてるよ」
澪がそっと取ると、
iPhoneちゃんは少し照れて、また食べる。
「おいしかった」
背もたれに寄りかかる。
カップが静かに置かれる。
外に出ると、また風が通る。
同じ道を歩いているのに、さっきより少しやわらかい。
三人で、そのまま歩いていく。
「今日は楽しいね」
iPhoneちゃんが言う。
その言葉のまま、
一日がゆっくり流れていく。




