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カマクラで焼き蟹

年が明けて旅行の日がやって来た。


トーマス達を迎えに行き、ザイルとドグの所へ行ってからハポネギルドへ。


ここで改めて皆を紹介した。


「ゴードンだ。英雄に会えて光栄だ」


英雄?


「余計な事を言うな。こいつはシンシア。旅行が終わったらパーティを組んで活動をする。こいつはエリナ。まぁパーティではないが仲間だ」


「酒屋のザイルと魔道荷車とか作ってるザクだよ」


と紹介し終えた。ハポネのギルマスゴードンは仕事をしてから合流するということで、おら達はおばあちゃんの所へ飯を食いにいく。


「明けましておめでとう。本当にみんなで来てくれたんじゃな」


「うん、おばあちゃんも缶詰の味付け手伝ってくれてありがとうね」


「なんのなんの、年寄が出来る事は少ないからの。喜んでくれるならこちらも嬉しいわい」


俺は煮付け、クロノはイカ、他はフライ定食だ。


やはり食べ慣れないものより揚げ物を選んだか。


「カナタの魚デカいな」

 

「サービスしてくれてんだよ。フライも数を多くしてくれてると思うよ」


トーマスは驚いている。物価はエスタートとより高いと聞いていたが、銅貨10枚でこんな食事が出てくるのかと。


クロノを見るとイカ刺と格闘しているので食べさせてやる。ついでに煮イカを一つ貰って食べた。


「カナタ、そっちのも頂戴」


キンメの煮付けを箸で食べさてやる。


「それも美味しいね」


「どれどれ」


トーマス達も勝手に食べていきやがる。


「こりゃ旨い。婆さん。ここの国の酒置いてるか?」 


「すまんのう。昼は出しておらんのじやゃわい」


「くそっ、これは酒に合うはずなのに」


「飯にも合うだろ?」


と、クロノに煮付けを食べさせて、ご飯も食べさせる。いや、ご飯は自分で食べなさい。


「ばあさん、旨かったわ。これ釣りはいらねぇ。ここの飯はもっと高くてもいいと思うぞ」 


と、銀貨を1枚渡す。


「あら、すまないねぇ。じゃけど、これぐらいにせんと食えんやつもおるでの」


と、釣りはいらないと言ったトーマスにお釣りを渡してきた。


「釣りはいいって言ったのによ」


「なあに、その気持ちだけで十分じゃ。そのお釣りでまた食べに来ておくれ」


「おう、しょっちゅう来るぜ」


トーマスはこの店が相当気に入ったようだった。俺もこの店が好きだ。



次に缶詰工場へ。


「あ、カナタ。明けましておめでとう」


「おめでとうデルモ。今日は仲間を連れて来たよ」


と、皆を紹介していく。


「へぇ、こんな可愛い娘がハンターやんの?危なくない?」


「私は魔法を使えるので大丈夫ですよ」


「そんなんだ。カナタは果報者だね。女神様を奥さんにして、可愛い娘と綺麗な色っぽいお姉さんさんまで仲間にして」


「そうだね。ここの男に達に見せびらかせやりたいよ」


「やめてやってよ。ここの女の子達に恨まれるよ」


そこにミラとキルトがやって来た。キルトはキックボードに乗っている。


「お兄ちゃん。いつも来た時に顔ぐらい見せてくれよ」


「ごめん、ごめん。毎回バタバタしててな。ほら、これお年玉だ」


と、キルトと妹にポチ袋のような包みを渡す。


「何お年玉って?」 


ここにはそういう風習がないのか。


「年明けだけに貰えるお小遣いみたいなもんだ。無駄遣いすんなよ」


「カナタよ、この坊主にキックボードを売ったのか?」


「いや、これはクロノの護衛依頼の報酬だよ。この工場もそのうち荷車買ってくれると思うよ」


と、缶詰工場の出資を俺がしている事とここでの成り立ちを説明する。


で、缶詰を食べる。


「小型のでいいんだな?」


と、ドクがデルモに聞く。


「いや、まだこんなの買える程お金貯まってないし」


「いや、ワシも出資する。小型の一台やるから早く稼げ。で、缶詰をくれ」


「えっ、これでいいの?」


「カナタがここに来る度に渡してくれ。支払いはそれでいい」 


ドグは販売価格換算して、荷車代に充当するから先に荷車を渡すと言った。荷車も半額だ。


「ワシもこいつを仕入れるわい。酒と一緒に売ったら売れるじゃろ」


「私もお店出来たら仕入れるわ。これをアレンジしたら楽だしね」


「カナタ、いつもいつもありがとう。お礼にチューしてあげようか?」


「何であんたがそんな事すんのよっ」


「オリバーにぶっ飛ばされるから遠慮しとくよ。あ、稼ぐのもいいけど、ちゃんと休み取りなよ」


「わかった」

 

と、宿でも食べると言うので缶詰をいくつか買って宿に向った。


ざっくり2泊と言うので飯、飲み放題、部屋代で一人銀貨10枚。余ったらそれで酒を買うとなった。シンシアとエリナの分はトーマスのお支払い。


まずは風呂だとなり、男女に分かれて大浴場に。まだ時間が早いから空いている。


「おぉ、いい眺めじゃの」


ドワーフの国から出た事がないザイルとドグは嬉しそうだった。

 

「カナタよ、ここで酒は飲めるのか?」


「大丈夫だよ。まぁ、それは夜でいいんじゃない?」


と言うと二人は残念そうだった。山側には雪が積もってるし、屋根にも雪がある。夜に雪が降ったら雪見酒が出来るかな?


叶多はクロノと寝るようになってからあまり酒を飲まなくなっていた。酔った勢いでクロノになんかしてしまうとまずいからだ。



ー女湯ー


「で、クロノはあれからどうなの?」


「寒いから一緒には寝てる」


「へぇっ。カナタくんはそれでも何もしてこないの?」


「うん。前よりくっついても来なくなったの。でもたまにぎゅぅぅうって抱き締めるんだけど、すぐに後ろを向いて寝ちゃうの」


じーーーーっ


「なっ、なに?」


「しかし、クロノの裸って綺麗だわ。流石女神ってところね。これ見て我慢しているカナタくんって聖者なのかしら?本当に関心するわよね」


「み、見れられてないわよっ。そ、そんなにじっくりみないでよっ」


「シンシアも男好きする身体つきになってきたわよね。ちょっとカナタくんに迫ってみたらどう?お手つきになるかもよ」


「やっ、やめてよっ」


「わ、私。カナタさんに求められますか?」


「カナタくんがどこまで耐えられるか楽しみね。うふっ」


「ちょっとやめてよっ」


エリナは少しSっ気が出てきていたのであった。



ゴードンも到着したのでお楽しみの夕食。


カニ料理とカニ鍋だ。

前の中居さんが付いてくれた。女将と中居さんにはチップを渡し済だ。


中居さんが蟹の食べ方を説明してくれる。ポキッと折って身をだすやり方。


鍋が温まるまで一品料理をつまみに酒を飲む。


蟹の酢の物はクロノにあげる。女性陣は皆酢の物好きだよね。ザイルとドグは食べたが、トーマスもゴードンもエリナとシンシアにあげていた。


カニ爪フライとか食べてようやくカニ鍋へ。


まずはしゃぶしゃぶ。剥いてくれてある身を生でもいいし、しゃぶしゃぶでもどちらでもお好きな方でと言われたのでまずは生で。


生の蟹はもっちりしてて甘い。


次はしゃぶしゃぶで。うん、こっちの方が好きかも。ぱっと花が咲いたかのようなカニの身。奇麗だし美味しい。


クロノもニコニコして食べている。ドワーフ達は酒のペース早いな。あんな水みたいな飲み方するんだな。


一通り食べて、酒を飲むとガーハッハッハと笑いだして盛り上がっていく。


蟹鍋も煮えたので、ポキッと折ってはハムハムと。旨ーい。


酒はどうしようかと思ってたが今日は飲もう。


叶多も吟醸酒を飲みだした。


「甲羅酒は飲まれますか?


「甲羅酒?」


皆も知らないようなので、中居さんが七輪のような物を持ってきてそこに甲羅を乗せて蟹の身とカニ味噌、酒を入れて作ってくれた。


おっさん連中とエリナは喜んで飲むが、叶多はカニ味噌がダメだった。クロノもシンシアもダメ。


足の付根の所の身をホジホジして一気に食べようとするとある程度貯まったらクロノが食べていく。


「おいっ、クロノ・・・」


と、文句を言いかけると満面の笑顔でこっちを見る。


あーっもうっ。


ホジホジホジホジホジホジ


カニの出汁で煮えた野菜も旨い。白菜とかたまらんね。


「中居さん。このポン酢って売ってます?」


「はい、売店にございますよ。是非お買い求めください」


買い占めよう。ここのポン酢は旨いくて自分で作ったのと大違いだ。


それからさんざんカニを食べ酒を飲む。


「夏祭りの会場にカマクラがございますが、そちらにも行かれますか?まだお召し上がりになられるようなら、焼き蟹と熱燗などいかがでしょうか?ここより寒いですけど、それがまたなかなか評判がよろしくて」


「行く 行くっ!」 


「カナタ、カマクラって何?」


「雪で作った部屋だよ。見ればわかるよ」


浴衣に丹前を羽織ってるけど、雪もチラついて来て寒い。クロノは俺にべったりとくっついてブルブルしている。他の皆は結構平気そうだな?俺も寒いからクロノとぎゅっとくっついた。



カマクラに入ると風もないし、七輪の熱でそこそこマシだ。会場の係の人が毛布とカニ、酒を持って来てくれる。七輪の横には湯が張ってあり、そこにお調子を浸けておいて熱燗にするようだ。


「寒っ寒っ〜」


七輪に手を当てて暖を取る。


「カナタ寒い」


「そうだね。毛布に一緒に入る?」


クロノに自分の毛布をかけてやろうと思ったら膝の間に入ってきた。二人羽織スタイルだ。


「ク、クロノさん。食べにくいし飲みにくいんだけど」


「でも温かいよ」


確かに。背中は冷や冷やしてるけど、クロノがいる前は温かい。


飲もう。熱燗を飲めば寒いのも収まる。 


熱燗をキュッとやると一気に体が暖まってくる。


「カナタ、焼き蟹食べたい」


「こんな状態で身をほぐせるわけないだろ。食べたいなら横に来い」


膝の間から横に移動させる。クロノも熱燗を飲んで暖まったのか震えが止まったようだ。


焼けたカニの身をこそぎ食べやすくしてからクロノに渡す。香ばしい匂いがたまらんね。クロノがおかわりする前に早く食べなければ。


パクっとな。


ウンウン、香ばしくて旨い。


ワイワイと話しながら焼きガニと熱燗をガンガンいく。


クロノはカニに満足したのかまた膝の間に入ってきて、叶多を座椅子代わりにする。


「キャハハハハツ」


そして笑い出すクロノ。


「何がおかしいんだ?」


「寒いのに暖かいんだもーん」


「意味がわからんぞ?」


「カナタが暖かいの。お尻に当たってる所とか」


「お、おまっ。何を言い出すんだよっ」


それを聞いてニヤニヤしてくるエリナ。男連中は知らんぷりしてくれる。


「カナタくーん」


「はっ、はいなんでしょうっ」


「今夜大丈夫?間違いが起らないようにスッキリさせてあげよっか?」


それを聞いて酒を吹き出すゴードン、ザイル、ドグであった。



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