だんだん商売人が板に付いてきた
翌日はハポネに行き、出来ている缶詰を全部仕入る。
「そんなに売れるの?」
「すぐに売れるよ」
「本当にそんなに売れるなら、設備拡張した方がいいかな?」
「魚は大丈夫なのか?」
「ここで働きたいっていう奥さん達が増えてきてさ、その旦那が獲ってきた魚があるから大丈夫だよ」
「あー、まだ全員に声掛けてなかったのか」
「うん、他の仕事してた人もいるけど、魚を捨てずに済むならこっちの方が良いって」
「なら、こっちでも売った方がいいね。ギルドと宿とかに声掛けてみるよ。取引始まったら後は自分達で納品してね」
「え、売り先開拓してくれんの?」
「デルモはこういうのやった事ないだろ?」
「じゃあ一緒に行っていいかな?」
「いいよ」
と、サンプルの缶詰を持ってまずはギルドに。
「あ、カナタさん。ようこそハポネギルドへ。何か受けてくださるんですか?」
「いや、今日は商人で来たんだよ。食堂に売り込みに行っていいかな?」
「何を売るんですか?」
「これ。魚の缶詰。食堂で出すよりハンターの携行食として売れると思うんだけどね」
と、物を見せて説明する。
「なるほど。ちょっと厨房の人を呼んで来ます。ここの食堂はギルド直営なんですよ」
ほぅ、そうなのか。
と、コックと受付の娘に試食してもらう。
「これは売れそうですね。遠征の時に干し肉ばっかりだと辛いみたいですし。これなら温めるのも簡単ですしね」
「いくつ仕入れる?1つ銅貨5枚なんだけど」
「じゃとりあえず50ずつ入れてくれ。これ、ここでも使えるわ。つまみで出るだろ。つまみなら1缶で5人前ぐらいに出来そうだからな。ビールとセットで銅貨10枚とかにしたら、いっぱいだけ飲んで帰る奴にちょうどいい」
「カナタ、こんなにすぐに売れるの?」
「ギルドは鉄板だと思うぞ。後は飲み屋。料理より酒メインのところね。後はお土産を売っているような所とか。次は商業ギルドに行くよ」
「あそこで売るの?」
「いや、よその街から来た商人とかあそこに来るからね。場合によっちゃドカっと買って行くかも」
と商業ギルドで試食してもらって、いくつか個別販売用として置いてくる。仕入れで売れた時は手数料が発生するけど、窓口をやってくれるからな。
「こんな感じ。サンプル見せて試食してもらったら美味しいから売れるよ。もし漁港で直売するなら、缶詰を使った料理とか実演したらいいよ。ご飯作るの面倒な時に缶詰をアレンジしてやると簡単ですよとか」
「なるほどねぇ。今度自分でやってみるよ」
「儲かったら俺の持ってる荷車買うといいよ。金貨10枚だけど、まけてやるから」
「頑張って稼ぐわ。カナタ、色々とありがとうね」
「友達だろ?」
「えへへ、うん。今度来るときは夜に来てよ。それならオリバーもいるし」
「わかった」
次はゴーレンに缶詰の納品。
厨房に缶詰を持って行くとリズが待ってたのに来ないと拗ねてクエストに行ったらしい。さっきまでハポネで営業してたからな。
「今年はこれで終わりか?」
「多分ね。他に仕入れて欲しいものある?」
「リズに・・・、いや大丈夫だ」
「なら、また来年。でも来年から商売に使える時間減るから、注文あったらまとめてしてね」
「わかった」
ドワーフのドグの所に行くと荷車が出来てるとのことなので何往復かしてギルドに納品と支払いを受けて、また違う商業ギルドに売り込みに行くことを伝えた。
「この調子で売れたら在庫もっといるな」
「うん、他の国もあるからね」
「人が乗る馬車も作ったら売れるか」
「多分。馬の負担が少なかったら長距離移動も可能になるだろうし、人力車とかあったら数がでるかも」
「人力車?」
「馬車より手軽に乗れるから街中を移動するのに便利かなって。街中の馬車は行き先決まってるだろ?二人ぐらいお客さん乗せて、行きたい所に行ってもらえるのがあったら楽じゃない?」
「なるほどな。よし、試作品作るから売り先考えておいてくれ」
「了解」
ついでにザイルの所に寄って酒を仕入れてから帰ろう。
「おう、いくつじゃ」
「10樽仕入れてく。うちで在庫持っておくよ」
「お、そうじゃ。これ持ってけ」
「これは?」
「とうもろこしの酒じゃ。ちょいとクセがあるから好き嫌いが分かれるの」
「ありがとう。帰ったら飲んでみるよ」
今年の商売はこれで終わりでいいか。
ベリーカに戻って、家の近所に売り土地があるか聞いてみることに。
「カナタの近くならどこでも土地を売ってくれるだろうけどよ、店をするなら街か、家が集まってる近くの方がいいんじゃねぇか?」
叶多の家は畑とか生産者達の家が点在しているところ。はっきりいって何もない。エリナが商売を考えてるならあまりにも不便だな。
エリナに直接見て貰って方がいいな。
「クロノ、今日はこれで終りだ。アッキバに行くぞ」
「何買うの?」
「バーベキューセットと卓上で網焼きかなんか出来るものないか見に行こう」
もうすっかり殺気が抜けた叶多はクロノにベタベタしてこない。手も繋ぎに来ないし、起きてる時にぎゅっとしてきたりもしない。お風呂も泡風呂の時以来一緒に入ることはない。
ただダブルベッドで一緒に寝るようになり、寝ている時だけ時々苦しくなるぐらいぎゅぅぅうと抱き締められる事があるぐらいだ。それもすぐに終わってしまうけど。
アッキバに着いて街中を歩いていく時にクロノは手を繋いだ。
「どうした、疲れたか?」
「ううん、こうしてたいの」
叶多は特に嫌がりはしないが反応が薄い。ちょっと寂しい。
アッキバの店で卓上網焼きの道具とバーベキューセットを購入。いつもの店員が叶多を見つけると素早く寄ってきてあれこれ勧めてくる。普通ならウザイけどこいつはどこに何があるか知ってるから便利ではある。
あ、人力車の事を聞いてみよ。
「他店と競争厳しいの?」
「はい、お互い値段を下げるのはもう限界まで来ていますので、品揃えやサービスで競争していくしかありません」
「お客さんってここに来るのは徒歩か乗り合い馬車?」
「さようでございます」
「個別に送迎とかやってみる?有料でも需要あると思うんだけど」
「どういった物でございますか?」
「馬車って馬の管理が大変だろ?あちこち糞するし、馬の世話も大変だよね」
「まぁ、馬車は違う商会がやっていますので、我々は店の前にした糞の片付けぐらいですけども」
「馬車の代わりに人が運んだら楽だと思わない?2人乗りの人力車ってやつなんだけど。小回りも効くし、個別に行きたい所ににいけるから」
「そんなのがあるのですか?」
「作ってもらおうと思ってるんだけどね。あったら買う?」
「うううむ、そうですな。少し考えさせて頂いてもよろしいでしょうか」
「まだ試作車も出来てないから別にいいよ。いつもまけてくれるから先に話しただけで」
「お気遣いありがとうございます」
「ちゃんと一番に話したからね」
と、叶多は店員に念を押す。
「はい?ありがとうございます」
帰りは叶多の両手が荷物で塞がっているのでクロノは手を繋げずに家に帰った。
晩御飯に焼肉を食べて風呂に入って寝る。
叶多はベッドで少し離れて寝る。寒いのを理由に叶多にくっつきに行くと、しばらくしてからぎゅぅぅうっと抱き締めてきてすぐに離して後ろを向く叶多。
これが旅行に行くまでに続いたのであった。




