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叶多の責任

ご飯を食べ終わった後にクロノを風呂に入らせる。


「髪の毛洗ってよ」


「自分で洗えるだろ?」


「何にも覚えて無い癖に」


「はい、スイマセン・・・」


叶多は申し訳なさで言うことを聞かざるをえなかった。


湯船にお湯を貯めている間にシャコシャコとクロノの髪の毛を洗う。


「んふふふっ」


「だから笑うなよ。気持ち悪いだろ?」


「気持ちいいのとなんかくすぐったいの」


ロングヘアは洗うのが結構手間だ。洗い残しがないかよく確認してからリンスを付ける


「ク、クロノ。ごめんな・・・」


「何を謝るのよっ」


「いや、お前女神なのにさ、人間の俺がって思うと申し訳なくてさ。責任ったって、俺が出来ることなんて知れてるだろ?」


「一生守ってくれるんでしょ?」


「一生ったって神と比べたら僅かな期間だろ。それに神器を取り返せたらお前は自分の世界に帰らないとダメだし」


「ずっとここにいればいいじゃない」


「100年以内に魔王を倒さないとダメなんだろ?なるべく早く神器を取り返して勇者を見付けないとダメじゃないか」


「勇者が魔王を倒してもずっとここに居たらいいじゃない」


「そんな事をしたら元の世界の時間が止まったままだろ。どれだけ多くの人の迷惑になるんだよ」


「止まってる人は誰も気付かないから大丈夫よ」


「それはそうかもしれないけどさぁ」


そんな事を話しながらリンスを流す。


「さ、身体洗って風呂に浸かって来い」


とクロノを風呂に入らせた。


その間に食器を洗っておき、柵に取り付ける文言を書いた。


【これより先、防犯結界作動中。ご用のある方は呼び鈴を押して下さい】


これを立てておこう。


風呂から出たクロノがバタバタっと寝室へ走っていった。また着替えを持っていかなかったのだろう。


あと今晩から寝る場所どうするかな?大人の階段を登ってしまった今となってはわざわざ寝室を別にする必要がないかもしれないけど。しかし、クロノは嫌ではなかったのだろうか?それとも俺が無理矢理したのだろうか?


せめて合意の元ならいいんだけど。


着替えて来たクロノに聞いてみる。


「なぁ、クロノ」


「なに?」


「その、あの、い、嫌じゃなかったのか?」


「何が?」


「その、俺と・・・ゴニョゴニョ」


「ハッキリ言いなさいよっ」


「俺とセッ・・・」


ピンポーン


誰か来た。


ドアを開けるとリンダだった。結界のスイッチをオフにする。


「おはよう。大丈夫?スープ持ってきてあげたよ」


「あ、ありがとう」


「お父さんに作った残りだけどね」


「なんかごめんね」


「昨日のカナタ凄かったわよーっ」


「えっ?宴会の時にもなんかしたの?」


「もうベロンベロンでさぁ。クロノを抱き締めて俺が一生守ってやるっとかずっとそばにいてやるっとか宣言してたよ」


マジか・・・


「みんなの前で?」


「そう。もうオバサン達もキャーキャーっ言って、いい見世物になってたよ」


最悪だ・・・・


「あ、お鍋は柵の所にでも置いといて。後で取りに来るから」


「あ、ありがとうね」


最悪だ。俺はみんなの前でそんな事をしていたのか・・・


貰ったスープを温め直しながら落ち込む叶多。


「はぁー」


大きくため息を付いて昨日の事を思い出してみる。


えー、リンダと話してて、リンダの父ちゃんが来て寂しそうだなと思ったんだよな。


時系列に沿って思い出していく。


で、クロノは自分の世界でずっと独りぼっちだったかもと思って・・・


あ、クロノが独りで座ってる姿を見てものすごく寂しそうに見えたんだ。そうだ、俺はクロノを守ってやりたくなって抱き上げたわ。


俺ってば・・・


宣言したのはよく思い出せないが、あの気持ちなら言ったのは確かなのだろう。


先月の事はリンダから聞いた。問題はその後だ。ここの人達って本当にいい人だよなと思った時にもクロノを抱っこしてたな・・・。で、そのまま寝室に連れて行って・・・


サーッと青くなる叶多。クロノがとても愛しく思えたんだ。そして頭を撫でてキスを・・・ん?してないぞ。


そういや、俺、ソファで起きた時に着の身着のままだったよな?そーっとクロノをみたら暴れたような感じがあったけどクロノも着の身着のままだった。


あれ?


「クロノ、俺お前になんかした?」


「初めて一生守ってやるって言われた」


「それだけ?」


「それだけ。ちゃんと約束守ってね。あんな事を言われたの初めてだったんだから」


クスクスと笑うクロノ。


「お前、俺の純情を踏みにじりやがってぇぇぇぇぇっ」


「何にも覚えて無いカナタが悪いんでしょっ。わっ、私もちょっと覚悟をしたんだからねっ」


「なんの覚悟だよっ」


しょわわわっ


「きゃーーっ吹いてる 吹いてるっ」


「あわわわわっ」


せっかく作ってくれたスープを吹きこぼしてしまった。


少し減ったけど、二人でありがたく飲んだ。これでさっきの話題はうやむやになってしまったのであった。


鍋をきれいに洗ってご馳走さまの手紙を付けて、柵には注意書きを付けて仕事に行ったのであった。



「ねぇ、アッキバに遊びに行こうよ」


「今日は仕事だよ」


「ぶぅー」


まぁ、クロノは付いてくるだけだから暇だろうな。今頼まれてる仕事が一段落着いたら遊びに連れて行くか。シーフードも仕入れたいからな。


翌日からシングルベッドをリビングに運んで叶多はそこで寝るようになった。どうしてもクロノを意識して眠れないのだ。


休みを取る為にハーテンでキックボードを納め、アッキバに荷車を納め、ベーリカの酒場に酒を納めて一段落。


「クロノ、海に行こうか?」


「何しに?」


「シーフードを仕入れに行きたいんだ。それに向こうが暖かったら泳げるかもしれんぞ」


「泳ぐ?」


「泳げないなら砂浜でパシャパシャするだけでもいいけどな。シーフードの仕入れルートが出来たら色々な料理作れるぞ」


「じゃ行くっ」


マップを見ながら海の近くにある国を探していく。


お、ハポネって国は島国だな。


「ここに行ってみるか?」


「私はわかんないから好きにすれば」


と、ワープゲートに入って2人乗りキックボードで移動。仕事中は荷車に乗ってたからこれに2人乗りするのは久しぶりだ。


背中の男のロマンを通じてクロノの鼓動が伝わって来る気がする。初めての場所が楽しみなのだろうか?


「クロノ」


「なっ、何よ?」


「しんどいとかじゃないよな?なんかドキドキしてんのが伝わって来るんだけど」


「す、スケベっ!変態っ」


「こ、こら暴れんなっ危ないだろうがっ」


真っ赤になって怒るクロノ。



ゲートから出て門のところで二人のハンター証を出す。


「仕事か?」


「いや旅行だよ。魚が食べたくてね」


「おお、そうか。ここは魚が旨い国だからな。試しに生で食えるなら食ってみな。他国から来るやつは気持ち悪いとかいうけどよ」


「え?刺身あんの?」


「刺身?」


あぁ、呼び方が違うのかな?


「いや、ごめん。方言だったかも。生の魚が食えるなら試すよ。オススメの店あるかな?」


「街中の大型店より、漁港街の店がいいぞ」


「ありがとう!」



「カナタ、刺身って何?」


「魚を生で食べるんだよ」


「えーー?」


「無理なら焼き魚とかフライとかにしとけ」


街中は道が舗装されてるのでキックボードで移動だ。クロノがあれ何?とか色々聞いてくるけど俺も初めてだっての。


「宿はどうする?夜に帰ってまた来てもいいけど。泊まってもいいよ。一週間休みを取ったから」


「んー、おまかせ」


なら泊まろう。さっきから気になるマークが宿屋に描かれている。多分温泉なんかじゃないかと思う。テレビで見て一度部屋風呂付きの宿に泊まってみたかったんだよね。


出来れば海の見える宿が良いよな。


中心地から外れていくと段々と道が砂利混じりになったので、キックボードを担いで徒歩に。


しかし、クロノはまたパンプスなんだよなぁ。乗り合い馬車があるみたいだしこれに乗るか。


「クロノ、足痛くないか?」


「おんぶしてくれんの?」


「いや、馬車に乗ろうかと思って」


通行人に馬車の乗り方を聞いてみると、馬の絵が描かれた所から乗るらしい。



早速来た馬車の御者に海の近くに行くか聞いてみる。


「あぁ、終点まで行くと海のそばだよ。乗ってくかい?」


「乗るよ。料金いくら?」


「一人銅貨7枚だよ」


ポーションバッグから銅貨を取り出してじゃらっと渡す。


それから馬車に乗り込むようだ。先に乗ってクロノの手を引いてやる。


「おぉ、若い者は羨ましいのぅ」


先に乗っていたお婆さんにそう言われた。


「お邪魔します。隣良いですか?」


とクロノと二人で椅子に座ると馬車が発車した。


ゴゴン ゴゴンとお尻から衝撃が伝わる。木の椅子にクッションぐらい敷けば良いのに。


「どっから来なすった?」


「ベーリカですよ」


「はて、聞いた事がない所じゃのう」


「結構遠いですからね。お婆さんは地元の人ですか?」


「そうじゃよ。海の近くで食堂をしておってな。こいつを仕入れに行ってたのじゃよ」


と包みを見せてくれた。


「立派なワサビですねぇ」


「おや、他国の人なのにこれを知っておるのかね?」


「はい、大好きですよ。お婆さんの食堂は生の魚出してますか?」


「もちろんじゃ、今朝取れたばかりの魚じゃよ」


「じゃあ、このまま付いて行っていいですか?」


「うんうん、ええとこを出してやるからの」


と、馬車が止まって次の人が子連れで乗ってきた。しかし一人しか座る場所がないな。子供二人を膝に乗せるのは厳しいか。と、叶多が立ち上がろうとすると先にクロノが立った。


「俺が立つからお前は座っ・・・」


すぐにストンと俺の膝の上に座るクロノ。


空いた席にてててっと子供が走ってきて座る。


「お姉ちゃんありがとう」


クロノはニコッと笑い返した。コイツ尻が痛くて俺に座ったんじゃなかろうな?


「す、すいません。こら、こっちに来てお母さんの膝に座りなさい」


「あ、お母さん。大丈夫ですよ。うちのは軽いので平気ですから」


さほど広くない乗り合い馬車の乗客に思いっきり注目を浴びたけど今更だ。


ゴトゴトゴトと揺れるのでクロノのお腹に手を回して抱きつくような形になってしまうが仕方がない。こうしてないと落ちるからなこいつ。


「若い者はええのぅ」


「いや、あははは」


叶多は苦笑いするしかなかった。


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