何がしたいのだろう?
ハーテンの繁華街はとても上品でお金持ちがたくさんいそうな街だ。ショーウィンドウに並ぶ服もきらびやかでめちゃくちゃ高い。完全に場違いだ。道も綺麗に舗装されているのでキックボードでも走れる。人にぶつからない用にスピードを落としてスイッスイッと走る。
クロノはおんぶ体勢からちゃんと足場に乗っていた。それでもくっついているのには変わりがないので人目を引く。
「降りて歩くか?」
「このままでいい」
クロノはワンピースにパンプス。俺は茶色のズボンにきなりの襟つきのシャツ。どうみてもクロノと不釣り合いだな。今クロノに下僕よと言われても否定出来ないかもしれない。
街行く人に魔道具が売ってる店がどこにあるか聞いてみると少し嫌な顔をされてしまった。
で、何回か聞いてようやく店を発見出来た。
「すいまーせん」
「何かお探しかね?」
と出て来たのは怪しげなおじいさんだ。
「防犯の魔道具って奴を探してるんだけど」
「どんなのかね?」
「これぐらいの一軒家なんだけどね、誰か侵入したら分かるヤツが欲しいんだけど」
「なら、こういうタイプだね。これが一番安いドアに取り付けるタイプだ。魔法の鍵になっていて鍵をかけると登録した人しか開けられなくなる。1つ銀貨50枚。ドア毎に必要だ。これは半径5m~30mまで範囲を設定出来て登録した者以外が入って来ると警報が鳴る。金貨2枚だ。これは空中つまり円形に範囲が設定出来る。これは金貨5枚だ。どうするかね?」
扉は玄関と裏口、そして納屋。あとは寝室にも欲しいな。いざという時には少しでも時間が稼げた方がいい。円形に範囲設定するのと鍵4つで金貨7枚か・・・。仕入れ資金で金貨5枚は残したかったけど、クロノの安全が最優先だからな。
「じゃあ円形の結界とドア用の4つ下さい」
「ほう、若いのにずいぶんと用心深いのじゃな?」
「いや、こいつは色々と狙われやすくてね。俺は戦闘能力が無いから防犯が必要なんだよ」
「失礼だが支払い出来るのかね?」
「大丈夫。予算オーバーだけどこいつの安全には変えられないから。金は稼げるけど、こいつは一人しかいないから」
「ほう、若いのに感心じゃな。確かに可愛らしくて悪い男どもが寄ってきそうじゃな」
と、少しからかわれてしまったが、防犯装置の使い方を丁寧に教えてくれた。
「支払いは身分証でいいかな?」
「ええ、構いませんぞ」
ハンター証を渡すと
「おや、ハンターと商人の両方ライセンスをお持ちとは珍しい。しかもエスタートからお越しで?」
「登録はね。今住んでるのはベリーカだよ」
「ほう、ずいぶんと遠くから来たんじゃな?」
「まぁ、防犯の魔道具はハーテンに行かないと手に入らないと言われたんだよ」
「さようでしたか。もう1つ伺っても宜しいかな?」
「なんでしょう?」
「そのお持ちのは乗り物ですかな?」
「そうだよ。ここみたいに舗装された道だと楽に移動出来る乗り物なんだよ」
「少し拝見させてもらっても宜しいかな?」
「どうぞ」
店のおじいさんはまじまじとあちこちを舐めるように見ていく。
「これはどちらでお買い求めに?」
「ドワーフの国だよ。特別に作って貰ったから市販品じゃないけど」
「うーむ、これは素晴らしいものですな。魔道具でしょうが仕組みが全くわからん。かなり腕のある職人が作られたのでしょうな」
「他の職人はしらないけど、魔道具の荷車を作ってくれてるんだよ。300キロとか乗せても楽に引けるから凄いよね」
「ほう、そんなものまで。ちなみにその荷車はいかほどで?」
「人が引くのが金貨10枚、馬が引く奴は金貨30枚。ドワーフの国で売ってるけど遠いから俺が代行販売してるんだけどね」
「この乗り物はいかほどで?」
「どうだろ?市販品じゃ無いから値段まだ付いてないと思うよ。頼めば作ってくれるとおもうけど。ちなみにこれは2人乗り用で車輪とか大きくしてもらってるんだ。一人乗り用はもっと小さくて軽いから舗装されてないところでの持ち運びは便利だよ。乗ってみる?」
「宜しいですか?」
乗り方と強く蹴るとこけると説明する。
おじいさんは店の前の道路で試してみる。
「おーほっほっほ、これはいい。これはいいですぞっ」
めっちゃ嬉しそうだ。
「これを売って頂くことは可能ですかな?いや、先程の魔道具と交換でも宜しいですぞ」
交換・・・。金貨7枚と交換か。
「いや、それだとそちらが損すると思うから売値決めて貰って発注しておくけど?」
「しかし、ドワーフの国へは飛行船も飛んでおりませんし、時間と危険が・・・」
「あー、それは大丈夫。今日ドワーフの国に行くから明日には返事出来るよ」
「も、もしかして転移魔法の使い手・・・」
「ちょっと違うけど似たようなものかな」
「おお、そうでしたか。ならドワーフの国の物を仕入れを頼めますかな?」
「いいですよ。今取引してるの酒屋と荷馬車の所だけだけど」
「いや、その酒が欲しいのです。こちらではなかなか手に入りませんでな」
「火酒なら瓶で銀貨1枚、30本分の樽で銀貨20枚だよ」
「むっ?」
高いのばれたかな?
「安すぎますな」
「え?」
「いや、安くで販売してくださるのはありがたいのですが、ここでその値段で販売されるのはお止めに成られた方が宜しいですな」
「どうして?」
「他の商会と揉めますからな。ここだと瓶で銀貨10枚はしますからな」
「そんなに高いの?」
「仕入れはもっと安いでしょうが、先程申しました通り、ドワーフの国は飛行船が飛んでおりません。しかも山越えになりますから荷馬車はたくさんの護衛を雇い飛行船のあるところまで行き、高額な飛行船代を払って持ってくるのです。しかもこの街は物価が高いですからな、銀貨10枚ぐらいになるのは仕方がないのです。そこでこんな値段で卸したら命を狙われますぞ」
おー、これでもぼったくってたつもりなんだけど、やはりワープはチートなんだな。
「樽で金貨2枚ならなんとかなるでしょうな。5樽まとめ買いとかの条件をつければ」
「良いことを教えてくれてありがとう」
「いえいえ、うちには1樽金貨2枚で卸して下さるとありがたいですがね。あとその乗り物をこちらで販売させてもらえませぬかな?1人乗りと2人乗りを10代ずつの見積りをお願いしたいのです」
「解りました。明日返事しに来ます。酒はその時に持ってきましょうか?」
「ぜひお願い致します」
良かった。これでまた稼ぎ復活だな。
「終わったの?」
「あぁ、あとちょっと土産物買って帰るから」
「何買うの?」
「シンシアに髪飾りだよ」
「ふーん、女の子にそんなの買うんだ」
「シンシアには世話になっただろうが。俺は文字も教えて貰ったし。あそこのギルドにはお前も世話になっただろ?あそこで皆が親切にしてくれたからこうやって買い物も出来るようになったし、生活出来てんじゃないか」
「だってさ他の女の子にだけ買うんでしょ?」
「クロノも欲しいなら買ってやるよ。今日欲しいならあんまり高いの買えないぞ。お金貯まったらいいのでも買ってやれるけど」
「ふふ、別に高くなくてもいいの♪」
という事であまり高く無さそうな所を選んで入る。
シンシアのはピンクとリクエストがあるから選ぶのが楽だ。
これがいいかな。トーマスからあんまり高いの買うなよと言われてたので、銀貨10枚のピンクの石がちりばめられた奴だ。どうやって髪を止めるかわからないけど、髪飾りを見せてといったら持ってきたので髪飾りなのだろう。
で、クロノが見てるのは指輪だ。
「ねー、ねー、カナタ。これどう?」
「指輪が良かったのか?」
「うん。じゃこれにしよ。カナタの指輪サイズはどれ?」
「は?俺にいらないし」
「旦那様、奥様がお選びになられたのは普段使いに邪魔にならないシンプルなタイプでございますので大丈夫でございますよ」
「えっ?あのちょっと・・・」
有無を言わせずサイズを計られお揃いの指輪を購入させられてしまった。
指輪2つで金貨1枚、髪飾りが銀貨10枚のお支払い。
今はめて帰るということでお互いの左手の薬指に指輪をはめられてしまった。めちゃくちゃ違和感があって気持ちが悪い。
しかし、鈍い俺でもこれの意味は知っている。これは結婚指輪って奴だ。
確かにクロノとは形式上結婚しているけど、それはあくまでもこいつを守る為のもの。クロノは何を考えているのだろう?
もしかして人間の真似事をしてみたかったのか?疑似恋愛的なものを。
まぁ、パッと見ただけで結婚してるのが解れば変な奴も寄ってこないからいいか。しかし、指輪って気持ち悪いな・・・
叶多ははめた事のない指輪を親指でくにくにといじりながら一度ベリーカに戻るのであった。




