第四十話:みんなで、
ノイズは、朝のホームルームが始まる前、運動会に出るメンバーを集めて、教室の後ろの方に固まっていた。
「それで、ノイズ殿。話ってなんでやんすか?」
ケミスは、なぜ呼ばれたのかいまだに分かっていないようで、不思議そうな顔を浮かべている。
「それは、あれですよね。運動会の件についてですよね?」
ウツイは、自信なさげに、ケミスの質問に答える。ノイズもうなずいて、
「そうだよ。運動会の件について、みんなに話したい事があるんだ」
と、はっきりと言った。ドッグはつけている眼鏡を外して、眼鏡を拭きながら、
「どうしたんだ? 話したい事とは、珍しいな。君は、あまり運動会を頑張らないタイプと思っていたが」
「ドッグは、何となく察してるのか。それなら話は早いかもな。……なぁ、みんな、今回の運動会、絶対に勝たないか?」
ノイズが、真剣な顔をしながら、そう問うと、ケミスは手を叩きながら、笑い出す。
「ノイズ殿。それは、どういうことを言っているか分かってるでやんすか? 運動会。そんな言葉だから、体力勝負とか、運動ができる奴が勝てると思っているかもしれないでやんすけど、それは嘘でやんすよ?」
「えっ。違うの?」
ノイズは、ケミスの発言に驚いて、すぐに聞きなおしてしまう。ウツイや、ネクロは少し暗い顔をしている。
「……ノイズさん。運動会は、お互いの魔法をぶつけ合う場所なんです。つまり、本来の運動会とは違うんです」
ネクロは、ノイズの顔を見ないようにしながら、丁寧に説明する。ノイズは、それを聞くと、自分の机に行き、鞄から一つの本を持ちながら、戻ってくる。
「これで、運動会を学んできたんだが、ここには魔法なんて出てこなかったよ」
ノイズは、そう言いながら、運動会メンバーに一つの本を見せる。その本の表紙に書かれた題名は、やさいのうんどうかいと書かれている。
「……ノイズ君、これは多分だけど、学ぶところを間違えてるね」
「そんなことはないはずだよ。だって、ドラコに聞いたんだよ。運動会ってものをよく知らなかったから、どこから学べるか聞いたら、この本を」
後ろに固まった五人は、一斉にドラコの方を見る。そこには、まず読書をしている姿が見えるが、よく見てみると、口元を手で抑えながら、笑いをこらえている。
「あの女には、後でクレーム入れておきます」
ノイズは、真顔でそう言った。
「というよりも、そんなことは関係ないでやんすよ。本来の話は、運動会に本気で取り組むか否かという話であったはずでやんす。みんなはどう思うんでやんすか?」
ケミスは脱線してしまった話を元に戻す。ドッグは、外していた眼鏡を付け直す。
「正直な話を言えば、あまり行事に全力になるタイプではないのでな。こういう時に素直にハイとは言えないんだ」
「……私もですかね。まず運動も苦手ですし。別に魔法ができる人だけが勝てるわけじゃなくて、結局は運動もできないと話にはなりませんから」
ドッグとネクロは、消極的な姿勢を見せる。ノイズは、ここまでは分かりきっていた展開であったが、賛同を得られなくて、少し悲しげな雰囲気を漂わせている。
「私は、別にいいですよ。ノイズ君は、運動会でどうしても勝ちたいのでしょう? それに協力しないので、適当に運動会を過ごすのはつまらないし、何よりも君の姿を見て、羨ましく思うでしょうし。みなさんもそう思いませんか?」
ウツイは、そう言いながら、他の人の顔色をうかがう。ドッグは腕を組みながら、
「それも一理あるな。二人が勝ちにいくならば、俺も加えて三人だ」
と、微笑みながらそう言った。ケミスはその発言に驚いて、ドッグの顔をまじまじと見つめている。ネクロは、うつむきながらも、
「……そうですよね。何事も全力で取り組まなさいって、幼い頃から言われてたんでした」
と、自信なさげにそう言った。ケミスは、二人の言動に衝撃が走っているようで、しばらく黙っていたが、一度咳をすると、
「しょうがないでやんすね。みんなが言うんだから、僕はやらないとはいかないでやんすね」
と、仕方なさそうにそう言った。
「よし! これで、みんなが運動会に向けての気持ちが作り終わったな。絶対に勝つぞ! おー!」
ノイズは、そう言いながら拳を天に突き上げる。他のメンバーも、それに続いて、拳を上げるのだった。




