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『無限転生した俺、最弱辺境村から“神殺し”へ至る〜継承スキルで世界最強になったので、滅びの運命を変えます〜』  作者: Y.M
第2章

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名付けられる前の層

地下世界の“揺れ”は、もう揺れと呼べるものではなかった。


 空間そのものが、ゆっくりと呼吸している。


 ミナはその変化に気づいて、思わず一歩下がる。


「ねえ……これ、また広がってない?」


 セリアは首を振る。


「違うわね」


「“広がる前の状態が見えてるだけ”」


 リシアが不安そうに周囲を見る。


「でもさっきより絶対増えてるよね……?」


 ネアは静かに言う。


「増えてない」


「“まだ決まってない場所が増えてるだけ”」


 レインは剣を肩に担いだまま、空間を見上げる。


「めんどくせぇな」


 ゼノスが答える。


『新規層生成進行中』


『未命名領域:拡張状態』


 その瞬間。


 未登録領域の“線”が一度ほどける。


 ほどけたのに、消えない。


 むしろ――“形になる直前の揺らぎ”だけが残る。


 ミナが顔をしかめる。


「今の……なんか気持ち悪いんだけど」


 セリアも同意する。


「ええ。“決まりかけて戻った状態”ね」


 リシアが小さく呟く。


「それって……生まれる前?」


 ネアは少しだけ間を置いて答える。


「うん」


「“まだ意味を持っていない状態”」


 未登録領域の奥で、小さな“音にならない音”が鳴る。


 それは警告でも起動でもない。


 ただ、“命名待ちの信号”。


 ミナが息を呑む。


「今の、何か始まった音じゃない?」


 セリアは静かに言う。


「始まってない」


「“始まるかもしれない状態”」


 レインはその中心を見ている。


「で、どうすんだこれ」


 ゼノスが淡々と返す。


『回答不能』


『新規層は定義前のため干渉基準なし』


 ミナが叫ぶ。


「またそれ!?便利ワードじゃないのそれ!!」


 リシアが震える。


「じゃあ……触れないの?」


 ネアは静かに首を振る。


「触れる」


「でも“触れた結果が決まってない”」


 セリアが低く言う。


「最悪ね……」


「ルールが存在しない状態に触るってことだから」


 未登録領域の中心が、ゆっくりとレインを向く。


 向いたように“見える”。


 だがそれは正確ではない。


 “観測者ごと向きを決めている”。


 ミナが青ざめる。


「今のやつ、こっち見てない?」


 ネアは答える。


「見てない」


「“見られていると感じるようにできてる”」


 レインは一歩前に出る。


「じゃあやることは同じだろ」


 ミナが叫ぶ。


「全然同じじゃない!!」


 その瞬間。


 未登録領域が、わずかに“形”を持つ。


 ただし完成しない。


 形になりかけては崩れ、崩れてはまた形になる。


 リシアが息を呑む。


「これ……生まれかけてる?」


 ネアは静かに言う。


「うん」


「“まだ決まっていないまま生成が始まっている”」


 ゼノスが静かに告げる。


『新規層:仮名称付与待機』


 ミナがぼそっと言う。


「名前ついた瞬間やばいやつでしょそれ……」


 セリアは苦笑する。


「ええ。“名前がルールになる”からね」


 レインは剣を軽く回す。


「なら決めりゃいい」


 ミナが叫ぶ。


「またそれ!?そのノリで世界決めないで!!」


 レインは続ける。


「名前がねぇなら」


「俺が勝手に決めりゃいいだろ」


 未登録領域が、一瞬止まる。


 初めて。


 “決定を待つように”。


 ネアは静かに目を細める。


「来る」


 セリアが呟く。


「選ばれるわね……今」


 地下世界は、静かに息を止める。


 そして――


 名前のない層が、初めて“名前を待つ状態”へと変わった。

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