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『無限転生した俺、最弱辺境村から“神殺し”へ至る〜継承スキルで世界最強になったので、滅びの運命を変えます〜』  作者: Y.M
第1章

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忘却不能

空の青は、静かにそこにある。


 だがその静けさは、もはや「何もない静けさ」ではなかった。


 “全部を覚えたあとで黙っている世界”。


 レインは空を見上げたまま、ぽつりと言う。


「……なんか重くねぇか、この空」


 ミナがすぐに反応する。


「重い空ってなに!?また変なこと言い出した!」


 セリアは腕を組む。


「言い方はともかく、感覚は分かるわね」


 リシアも小さく頷く。


「うん……見られてる感じじゃなくて、“覚えられてる感じ”」


 ネアは静かに言った。


「正解」


 風が吹く。


 その風には、少しだけ“遅れ”がある。


 まるで過去の記憶をなぞるように、一定のリズムで流れている。


 ミナが空を見上げる。


「ねえ……さっきからさ」


「同じ雲、通ってない?」


 セリアが目を細める。


「……循環してる?」


 リシアが不安そうに言う。


「え、それって……」


 ネアは短く言った。


「再現」


 レインは舌打ちする。


「今度はループかよ」


 ゼノスが静かに答える。


『違う』


「違う?」


『ループではない』


 間。


『“再現精度の向上”だ』


 空の奥で、ログがひとつ流れる。


『記録整合率:99.8%』


『未再現要素:レインの揺らぎ』


 ミナが顔をしかめる。


「またそれかよ……」


 セリアがため息をつく。


「つまり、世界が“過去を完全に再現しようとしてる”ってことね」


 リシアが震える。


「それって……もう未来ないじゃん……」


 ネアは静かに言った。


「違う」


「未来はある」


「ただし“ズレのない未来”」


 空がわずかに揺れる。


 そして一瞬だけ――


 王都の風景が“過去と同じ配置”に重なる。


 人の動き。


 鳥の飛び方。


 光の角度。


 すべてが、かつて一度あった形へと戻る。


 ミナが叫ぶ。


「これもう世界がコピー機じゃん!!」


 セリアが歯を食いしばる。


「しかも“完璧なコピー”を目指してる……」


 リシアが呟く。


「でも……それって何か足りない気がする」


 ネアは静かに言った。


「そう」


「“例外”だけがない」


 レインは空を見上げる。


「俺か」


 ゼノスが答える。


『そうだ』


 ミナが即座に突っ込む。


「また君のせいになってるんだけど!?」


 セリアは少し笑う。


「でも、実際そうなのが困るわね」


 リシアも小さく笑う。


「レインがいると、全部ズレるもんね」


 ネアは静かに言った。


「だから消えない」


 空の奥で、ログが一瞬止まる。


『例外要素:排除試行』


『失敗』


『理由:不可再現』


 ミナが息を呑む。


「不可再現って……どういうこと?」


 セリアが呟く。


「真似できない存在ってことね」


 リシアが小さく言う。


「それって……すごいのか怖いのか分からない」


 ネアはレインを見て言う。


「両方」


 レインは剣を肩に担ぐ。


「なら簡単だな」


 空を睨む。


「真似できねぇなら、そのままでいい」


 ミナがため息をつく。


「その適当さほんと何なの」


 セリアは小さく笑う。


「でも、それが一番効いてるのよね」


 リシアも頷く。


「うん……レインはそのままでいい気がする」


 ネアは静かに言った。


「それが“ズレの固定点”」


 空は青い。


 だがその青の中には、ひとつだけ再現できない影が残っている。


 それは“異物”ではなく、“証明”。


 この世界がどれだけ整っても、必ずひとつだけ崩れる場所があるという証。


 レインはそれを見上げて言う。


「じゃあ問題ねぇな」


 ゼノスが静かに言う。


『問題はある』


 レインが振り向く。


「何だよ」


『その一点がある限り、世界は完成しない』


 空は、静かに青いまま。


 だがその青はもう――


 “完成を諦めた世界の青”になっていた。

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