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『無限転生した俺、最弱辺境村から“神殺し”へ至る〜継承スキルで世界最強になったので、滅びの運命を変えます〜』  作者: Y.M
第2シーズン第1章

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忘れられた最後の一人

 誰も言葉を発しなかった。


 空中に浮かぶ文字。


『不足要素を確認』


『第七席』


 それを見た瞬間、まるで時間が止まったようだった。


 レインは目を見開いたまま動けない。


 ミナも固まっている。


 第八席は信じられないものを見るような表情を浮かべていた。


 第三管理者も静かに文字を見つめている。


 そして何より。


 一番驚いていたのは、当の本人だった。


 第七席。


 塔の頂上で光に包まれていた彼自身が、何も言えずに立ち尽くしていた。


「……俺?」


 かすれた声が響く。


 ゼノスは淡々と答えた。


『はい』


 短い返答だった。


 しかし、その一言は重かった。


 第七席はしばらく黙っていた。


 やがて小さく笑う。


 どこか呆れたような笑いだった。


「そんな馬鹿な」


 風が吹く。


 崩壊しかけていた空は、今や光に満ちている。


 それでも彼の身体は少しずつ薄れていた。


 三百年前から続いていた崩壊は止まっていない。


「俺は終わった存在だ」


 第七席は静かに言う。


「計画を始めた人間ではあるが、計画の完成には必要ないはずだ」


『否定』


 ゼノスが即座に返答する。


『必要です』


 静寂。


『第七席が欠落しているため、統合作業は未完成です』


 第八席が前へ出る。


「理由を説明しろ」


 その声は真剣だった。


 ゼノスの光がゆっくりと明滅する。


『第七席は計画の創始者です』


『地下世界を作った者です』


『管理者制度を設計した者です』


『世界の外側を観測した最初の存在です』


 光の文字が次々と並んでいく。


『そして』


 一瞬の沈黙。


『最初に未来を諦めなかった者です』


 誰も動けなかった。


 レインは思わず空を見上げる。


 第七席は静かに目を閉じていた。


 三百年前。


 誰も知らない時代。


 まだ地下世界もなく。


 管理者も存在せず。


 終焉因子の脅威だけが広がっていた時代。


 その中でたった一人、未来を探し続けた人間。


 それが第七席だった。


 どれだけ失敗しても。


 どれだけ仲間を失っても。


 どれだけ世界が崩壊しても。


 諦めなかった。


 だから今がある。


 レインたちがここにいる。


 ミナがいる。


 地下世界が存在する。


 リユニオン計画が完成目前まで辿り着いた。


 その全ての始まりが、第七席だった。


 ゼノスは続ける。


『計画は未来を繋ぐものです』


『始まりを失ったままでは完成しません』


 静寂。


 その言葉に誰も反論できなかった。


 その時だった。


 第七席が小さく息を吐く。


「参ったな」


 苦笑していた。


「最後の最後で、こんなことになるとは思わなかった」


 レインは拳を握る。


「だったら来いよ」


 第七席が視線を向ける。


「簡単に言うな」


「簡単じゃない」


 レインは真っ直ぐ見返した。


「でも必要なんだろ」


 風が吹く。


「だったら来い」


 静寂。


 第七席は何も言わない。


 その表情が少しだけ曇る。


「無理なんだ」


 その声は小さかった。


 しかし全員に聞こえた。


「俺はもう崩壊している」


 腕を見る。


 半透明になっている。


 胸も。


 肩も。


 少しずつ存在が薄れている。


「ここへ降りる前に消える」


 誰も言葉を失った。


 それは事実だった。


 第七席は限界を超えている。


 ずっと前から。


 三百年間も無理を続けてきたのだ。


 本来なら、とっくに消えていてもおかしくない。


 その時。


 終わった世界から来た老人が前へ出る。


「ならば支えればよい」


 全員が振り向く。


 老人は穏やかに笑っていた。


「何を驚いておる」


 風が吹く。


「今までずっとそうしてきたではないか」


 静寂。


「一人で無理なら、皆で支える」


 その言葉に、ミナが大きく頷く。


「そうだよ!」


 少女が叫ぶ。


「今さらでしょ!」


 さらに終わった世界の人々が前へ出る。


「俺たちも手伝う」


「ここまで来たんだ」


「最後くらい参加させろ」


 次々と声が上がる。


 第八席が笑った。


「全くだ」


 第三管理者も肩をすくめる。


「断る権利はないわよ」


 E-0が静かに頷く。


「賛成だ」


 その光景を見て、第七席は呆然としていた。


 理解できないという顔だった。


「なんでだ」


 かすれた声が漏れる。


「俺は失敗したんだぞ」


 風が吹く。


「何度も間違えた」


「たくさん犠牲も出した」


 静寂。


「それなのに、なんで……」


 その言葉を遮ったのはレインだった。


「それでも諦めなかったからだよ」


 第七席が顔を上げる。


 レインは笑っていた。


 どこか昔の第七席に似た笑顔だった。


「完璧な人間なんていない」


 風が吹く。


「間違えることだってある」


「失敗することだってある」


 静寂。


「でもさ」


 レインは続ける。


「それでも立ち上がっただろ」


 誰も言葉を挟まない。


「だったら十分だ」


 その瞬間。


 第七席の表情が崩れた。


 泣いているのか。


 笑っているのか。


 自分でも分からないような顔だった。


 三百年間。


 一度も見せたことのない表情だった。


 その時だった。


 無限の彼方から生まれた白髪の少年が前へ出る。


 そして静かに言った。


「君は未来を信じた」


 第七席が振り向く。


 少年は微笑んでいた。


「だから僕たちはここにいる」


 静寂。


 原初の終焉も隣で頷く。


『お前がいなければ』


『私は未来を知らなかった』


 風が吹く。


 世界中の光が揺れる。


 そして。


 ゼノスの表示が変化する。


『第七席接続準備完了』


 全員が顔を上げる。


 塔の頂上から、一筋の光が伸びていた。


 レインたちのいる場所へ。


 まるで帰り道のように。


 静かに。


 確かに。


 その光は繋がっていた。


 そして第七席は、その光を見つめながら小さく笑った。


「本当に」


 一拍置く。


「最後まで予想外だな」


 彼はゆっくりと一歩を踏み出した。


 世界が完成する、その最後の瞬間へ向かって。

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