第67話:現状確認、次なる日常へ
大会終了直後の仮拠点。
まどかといろはは、小さな拠点部屋に腰を下ろすと、2人で並んで大きく背伸びをした。
「いやー……濃厚な一日だったね」
まどかがつぶやくように言った。
「まさか1日でレベルが2つも上がるとは思わなかったよー。ボス、何体倒したんだっけ……?」
いろはが照れくさそうに笑う。
「数えてないけど……多分、相当な数だったよね」
2人の冒険者として、そして配信者としての成長が刻まれたイベントは、確かに今、ひとつの節目を迎えていた。
【イベント終了時ステータス】
◆まどか(LV36)
職業:トリックスター(シーフ派生職)
シーフから転職可能な派生職で、敵を“惑わせる”ことに特化。
スキル演出が派手で、観客を楽しませるのに向いている。
現在、この職業についているのは、まどか一人しか確認されていない。
主武器:ブレイザークロー・改
ダンジョン 《ディセント・フォレスト》 のボス「ツインヘル・レギオン」討伐報酬のナイフ。
鍛冶士ミナトによって強化され、防御力の一部を無視する性能を持つ。
主な所持スキル:
- 《スカーレットライン》:軌跡を描くような赤い斬撃を走らせる。線からは赤いバラエフェクトが発生し、バラにもダメージ判定がある。
- 《絶影》:発動中10分間素早さが上昇、ただし効果終了後10分間は反動で半減する。
- 《シャドウステップ》:HPを20%消費して分身を1体生成。生成から5分間その分のHPは回復不能。分身は攻撃力を持たないが、デコイとして敵を引きつける。
◆いろは(LV35)
職業:エンチャンター
攻撃、支援、回復など多彩な魔法を扱える汎用支援職。
それぞれ専門職には及ばないものの、エフェクトが派手でスキル種も多く、配信映えするため配信者人気が高い。
主武器:ゲーミングロッド(片手杖)
スイッチを入れると七色に発光する鉄製の片手杖。
光っている間は少量ずつMPを消費する。物理的には軽い鈍器としても使用可能。
主な所持スキル:
- 《光彩符》:バリアスキル。耐久度はそこまで高くないが、応用力次第で多彩な使い方が可能。
- 《陽焔の輪》:範囲内に持続回復+防御バフを付与。範囲から出ると10秒で効果終了。
- 《戦鼓の印》:攻撃力と攻撃速度を小幅に上昇させるバフスキル。
2人の配信チャンネル「まどいろ」の登録者数はイベント後12,722人に達し、
初登場から一気に注目を浴びたこのイベントは、まどいろの名を大きく広める機会となった。
「チャンネル登録も爆増してる……! すごいな……コレ」
まどかは画面を確認しながら、どこか現実感のない声を漏らす。
「うん! イベント視聴者、数十万人いたらしいし、他のみんなもめちゃくちゃ伸びたみたい!」
いろはは興奮気味に言う。
まどかはその様子を見て、思わず苦笑いを浮かべた。
「……でもね。これってつまり、つまらないことしたら、一瞬で見限られるかもしれないってことでもある」
「だいじょーぶ! まどにゃんはまだまだ、こんなくらいで納まる器じゃないよ!」
いろはは本気で言っている。まどかはそのまっすぐさに目を細めて、笑った。
「……いろはもね」
「えへへ」
そんな、何でもないようなやりとりの中に、次の挑戦への覚悟がにじんでいた。
「じゃあさ、次の配信……何にしよっか?」
「うん。やっぱり、アレじゃない?」
「……ペットの孵化!」
「だね。視聴者のみんなも、気になってるだろうし」
「よーし、じゃあ次回のタイトルは──『ドキドキ!ペット孵化生実況!』で、決まり!」
2人の笑い声が、仮拠点に響いた。
彼女たちの旅はまだ、始まったばかり。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
本日、こちらの第67話にて第2章が完結となります。
少しでも楽しんでいただけた方は、これを機に評価や感想などいただけると、この先の執筆の大きな励みになります……!
また、2章まではほぼ1日2回更新でやらせてもらっていましたが、3章からは1日1話更新(17時くらいかな?)で進めていこうかと思います。
というわけで次回更新は明日の17時くらいを予定しております。
引き続き、ゆっくりお付き合いいただければ嬉しいです!




