第68話:孵化への旅
「こんにちわ~、まどいろチャンネルです!」
元気よく挨拶した2人の背後には、新たな街の景観が広がっていた。
石畳の広場に、円形劇場のような建物。
道行くプレイヤーも一様に高レベル帯の装備に身を包み、どこか緊張感すら漂う雰囲気だ。
「イベント後ってだけで、街の空気まで変わった気がするね」
「うん、LV帯が上がると街のレイアウトもなんかシュッとしてる!」
「シュッとって……まあわかるけど。」
▶ いつもよりフォントがカッコイイ街きた
▶ 新章突入って感じあるね
▶ 背景作った人に感謝
「で、本日の目的はコレ!」
まどかがインベントリから取り出したのは、薄く発光する卵。
光沢のある蒼い殻で、20cm程の大きさ。片手でもぎりぎり持てるほどほどだった。
「これがイベント報酬でゲットした、例のレア卵です!」
「ほっておくといつまでも孵らないんで、今日はその準備って感じなんだよね」
視聴者からのコメントも一気に盛り上がる。
▶ ついに来た!ペット編!
▶ 孵化器いるんじゃなかったっけ?
▶ レア卵って普通の孵化器じゃダメなんだよね?
「その通り。ノーマル卵なら、街のショップで売ってる孵化器でもいいんだけど、レア以上の卵にはクエスト報酬のレア孵化器が必要でして」
「ということで、今回はその“レア孵化器”を手に入れるためにクエストを受けにきました!」
2人はクエスト掲示板の前へと歩いていく。
お目当ては、掲示されているクエストの中でもひときわ目立つ、赤枠で囲まれた特殊依頼。
『翼竜の巣から卵を採取せよ』
発注主:ハウス・クラーレ 報酬:孵化器(レア対応型)+30000コイン
難易度:★★★★ 推奨レベル:40
「翼竜の卵を取ってきてくれ、か……」
「街の金持ちがどうしてもペットにしたいらしいよ?」
「自分の欲望のために命を……いや、ゲームだけどさ」
「いろは、ちょっと引き気味になってるけど、だいじょぶ?」
「だってさ、まだ孵ってない赤ちゃんを……」
「ま、気持ちはわかるけど……この世界は“強いものが生きる”っていうルールでできてるからね。私たちだってモンスター倒して素材集めてるし」
「う……たしかに……」
「しかも今回は、その人が使ったあと、不要になった“孵化器”をもらえるっていう流れ。てか翼竜もバリバリ人間襲う設定だからね」
「そ、それなら……いい……のかな?」
▶ いろはちゃん優しい
▶ まどにゃんの現実的な顔きた
▶ 倫理vsアイテム欲
かくしてクエストを受諾。2人は街の外、東に連なる山岳地帯へと向かう。
フィールドに出てしばらく進むと、視界に入ってきたのは高く連なる崖。
崖の中腹には鳥の巣のような地形が点在している。
「じゃあ、あのへんかな……翼竜の巣」
「登るの大変そう〜……」
道中、足を止めた2人の前に現れたのは、巨大な木の怪物──トレント。
そしてそれに続いて、小型の集団行動をとるゴブリンたち。
「まどにゃん、来るよ!」
「うん、いろは援護お願い!」
刹那、まどかの身体がステップを刻み、トレントの足元へ。
スカーレットラインの赤い軌跡が木の皮を裂き、ゴブリンたちはいろはの《陽焔の輪》による防御バフ+継続ダメージの領域内で徐々に弱っていく。
「うーん、やっぱ私たち強くなったかもね」
「前だったら囲まれてパニックになってたよね」
トレントの最後の攻撃をまどかが回避し、ゴブリンをいろはが魔法で一掃。
2人は軽く息をついてから、再び崖の上へと歩を進める。
──そして。
「……着いたね、翼竜の巣」
「あそこ! 卵、あるよ」
風が強く吹く崖の上。岩場の陰に守られるようにして、翼竜の卵が数個、静かに転がっている。
その中でも一際美しく光を放つ、淡い青緑の卵へと手を伸ばそうとしたその時──
バサァッ!
突如、上空から翼を広げた影が降り立つ。
全長は3m以上、金属のように硬質な翼膜。雄叫びのような咆哮とともに、翼竜が2人を見下ろしていた。
「親、帰ってきたぁ……!」
「これ、戦闘は避けられないね……!」
▶ ここでバトル展開!
▶ ま、そりゃそうなるわなww
▶ まどいろって、空中戦できるの?
巣を少し離れるように移動しながら、2人は戦闘態勢へと入る。




