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第59話:連合軍、反撃開始


 天魔主 《メルザレク=ルーメン》 の開幕即死雷撃から1分。


 リスポーンした配信者たちは、状況を把握するや否やすぐに理解した。


 ああ、これは“演出”だったんだ。


 本当にただ倒させたいなら、あの攻撃を連発してくるはず。


 でも2撃目は来ない。ならばこれは、「このボスがいかに強いか」を、視聴者と参加者に“見せる”ための、いわばイベントの幕開け。


 そう判断するや否や、全員が動き始める。


 「──行こう。今度は、本当に倒す番だ」


 戦場は広大だが、ボスの射程もまた広い。

 範囲攻撃、連続追尾攻撃、属性魔法の嵐──攻撃の手は決して止まらない。


 それでも、最初の10分はまるで誰一人“無謀な突撃”はしていなかった。


 最初に動いたのはコノエ。

 他チームの誰よりも早く戦線に入り、火力支援と展開解析に入る。


 「詠唱完了、 《断閃連牙》 。2.1秒後に範囲攻撃、退避。次にスタン付与系。魔法耐性はやや高め程度。次、連続魔法の差し込み。」


 まるで機械のようなスキル選択とタイミングの解析。


 その圧倒的な情報処理能力と精密な行動は、早くも他の前衛たちの判断材料となっていた。


 「……俺、前に出なくていいのって、こんな楽なんだな」


 ソラは不思議な感覚に襲われていた。

 これまでソロだった彼は、誰にも頼らずすべてをこなしてきた。


 けれど今、敵の注意はフィーノやまどかが引きつけてくれている。


 そこに、ただ集中して矢を放つだけでいい。


 冷静に、正確に、確実に。


 彼の矢は、外さない。



 「こっち、挑発いれた!」「いい位置、撃舞脚いくよ!」「回復まわす、カウント3、2、1!」


 フィーノ組の3人は、誰よりも声を出していた。

 “チームで動く”という当たり前を、彼らはステージ1からずっと貫いてきた。


 フィーノが的確にタゲを取り、ユーリが大胆に攻め、クレアが常に全体を見て支える。


 単体では決して突出していない彼らの連携は、すでに一つの完成された戦術だった。


 それに釣られ、自然と他のチームもチームプレイの形が出来上がっていく。

 


 「いっけー!ロロの必殺☆ちょーぷ!!」


 爆弾を抱えて飛び上がるロロを見て、サーシャは肩をすくめながらも剣を振るう。


 「はいはい、後先考えず突っ込むのはやめなさいよ、ちゃんと見てから撃て!」


 いつものテンション、でもちゃんと結果を出すのがこの2人。


 ロロの爆弾連投でスタンを入れ、サーシャがその間に火力を叩き込む。


 ハチャメチャなようで、成功率の高い攻撃パターンが確立されているのは伊達じゃない。


 

 「まどにゃん、右から回り込んでるやつ来るよ!」「任せて!」


 まどいろの2人は、フィーノ組の隣で最前線を支えるもう1枚の壁になっていた。


 まどかが左右に駆け回り、ヘイトを引き寄せながらも一切の無駄なくダメージを稼ぐ。


 いろはのバフと支援がそれを後方から絶え間なくサポート。


 派手すぎるほどの演出魔法が、視界いっぱいに広がる。


 「《光彩符》、重ねて張るよ! まどにゃん、少しだけ強気に出て!」


 「上等!じゃあ、ひと暴れいっちゃいますか!」


 ヘイトを取るのも、ダメージを稼ぐのも、すべてが計算された連携。

 まどかといろはのコンビネーションは、すでに完成の域にあった。



 もちろん、ノーミスで戦えているわけではない。


 時折誰かが倒れ、スタート地点から1分のリスポーンを待つ。

 しかし誰も諦めない。誰かが抜ければ他がカバーする。


 崩れない連携、広がらない焦燥感──

 それは、配信者たちが成長し、互いを認め合った証でもあった。


 ボスのHPバーは、まだまだ分厚い。

 だが確かに、少しずつ削れている。

 仲間たちの連携が、一つずつ確かな爪痕を刻んでいる。


 そしてまどかは、戦場のどこかでふと思った。


 ……本当に、こんなに“みんな”と戦えるなんて


 かつてはただの一視聴者だった少女が、

 今は画面の中心で、仲間たちと肩を並べ世界に挑んでいた。


 それが無性に嬉しくて、楽しくて、心地よくて。

 力が無限に沸いてくる。

 

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