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第58話:天魔の主・降臨


 インスタントフィールドが展開されると、5チームすべての参加者たちが一堂に会する巨大な闘技空間へと転送された。


 頭上には何もない。曇天と雷光が交錯し、地面は円形の聖堂とでも言うべき構造──光と闇を象徴するような紋様が幾重にも刻まれている。


 「……すごいねこれ、まるで神殿じゃん」

 

 「雰囲気だけでボス級ってわかるやつだ」


 参加者たちが警戒を強める中、空間が突如として激しく脈動した。

 光が、そして闇が空間の中央にねじれ、重なり、反発し合う。


 そしてその中心から――それは、現れた。


 ──白銀の翼と、黒き角。

 ──顔を覆う仮面と、禍々しくも神々しい鎧。

 ──背丈は人の数倍、気配はプレイヤー全員のそれを合わせた以上。


 《天魔主メルザレク=ルーメン》 LV60


 名前と共に、フィールド上空に巨大なHPバーが表示される。

 “共闘ボス”らしく、その残量はとてつもなく分厚い。

 端数だけでも普通のフィールドボスを一体倒すレベルだ。


 「……これ、本当にたった9人で戦うボスか……?」


 「やばい! 映えそうなのに心が映えてるヒマない!!」


 「でっかーい!! かっくいー!!!! 魔王だ、魔王だー!!」


 動揺と期待の混ざる空気のなか、


 ボス──天魔主メルザレク=ルーメンが、静かに、右手を天へと掲げた。


 その瞬間。


 フィールド全域に強烈な雷撃エフェクトが走った。


 「え、なにこれ、いきなりピンチなやつ!?」

 

 「分かんないけど、とんでもない火力の攻撃が飛んでくる!」


 天が割れ、無数の雷槍がすべての参加者に容赦なく降り注ぐ。


 まるで『お前たちは塵だ』とでも言いたげな、神罰のような攻撃。


 避けようと試みる者、盾やバリアで耐えようとする者、被弾は諦めてボスに攻撃を通そうとする者。


 各々が最適と思う行動で対処を試みる。


 ──そして、全滅。


 ソラも、コノエも、サロロも、まどいろも、フィー農場の3人すらも、

 誰一人抵抗の意味もなく、雷に焼かれ、崩れ落ちた。


 全員の画面上には「リスポーンまで 00:59」の文字が並び、実況席は静まり返る。


▶ は????

▶ 開始10秒で全滅とか聞いてない

▶ 何あれ??イベントボスの威厳見せてきた??

▶ ロロ笑いながら燃えてたwww

▶ まどにゃんなら避けるかと思ったけど無理か

▶ ソラ、口あけて倒れてて草

▶ コノエが一方的にやられてる所なんて初めて見た

▶ 運営やっちまった感あるなwwww


 1分後。

 各リスポーン地点から、全員が同時に立ち上がる。


 「──挨拶がわりに全体即死攻撃とか……やってくれるじゃん」


 サーシャが呆れたように吐き捨て、


 ロロはケロッと「ロロ、まっくろこげ~」と笑いながら飛び跳ねる。


 「なんというか……逆に燃えてきた」


 「どうせ倒すしかないんだもんね」


 「……さあ、ここからが本番だ。いくよ!」


 気を取り直した参加者たちが、再び構え直す。

 冗談のような開幕を超えて、ついに真の戦いが始まる――!

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