第47話:職人の連携、爆発の美学
フィー農場の戦い──
「正面突破でいくぞ!」
フィーノの掛け声とともに、フィー農場の3人は巨大なスライムドラゴンへと突撃した。
王道中の王道──フィーノが前に立ち、巨大な盾で攻撃を受け止める。
その横をすり抜けるように、ユーリが鋭い蹴りと拳でドラゴンのボディを打ち込む。
防御を完全にフィーノに任せられる分、攻撃に集中できるのがユーリの強みだ。
そしてクレアの支援が、常に遅れることなく飛び込む。
更にユーリが弱らせたスライムはフィーノが剣で攻撃し続け、回復するスキを与えさせない。
「シャドウの翼、弱ってる! 今だユーリ!」
「任せろ!」
跳び上がったユーリの【撃舞脚】が、フィーノの妨害により回復しきっていない暗黒の翼にめり込み、シャドウスライムのコアを破壊。
続いてライトの翼も、3人の連携で仕留める。
一度崩せば連携は加速する。
エアスライムの風には、フィーノの盾が風圧を受け止め、アイスの冷気にはクレアがバリアを展開して対抗。
ユーリの拳とフィーノの剣劇がその隙を逃さず攻撃を叩き込む。
「次は胴体、ジュエルとポイズン!」
「ジュエル硬いな……でも、削れないわけじゃねぇ!」
ポイズンスライムの猛毒攻撃に対しても、クレアの解毒と回復が寸分違わず差し込まれる。
ジュエルのコアは堅牢だったが、ユーリの【連牙撃】が確実にひびを刻んでいく。
そしてマグマスライムの頭部──最後のコアを狙って、フィーノのシールドカウンターからの連携で総攻撃。
「ここだ! 一斉にいくぞ!!」
スライムドラゴンが、重たい音を立てて崩れ落ちる。
意図したわけではなかったが、ジュエルを最後に残さないことで結果的に自爆攻撃をも回避することが出来ていた。
▶ 安定感すごい、信頼できる戦い方
▶ クレアが地味にMVP
▶ このスタイル、真似したい
最も堅実、そして最も連携された職人芸。
フィーノたちは安定感でボスを攻略したものの時間はかかり、結果として2階層突破は5番手となった。
サロロ組の戦い──
一方サロロ組に関しては、他のチームと同じダンジョンを攻略してるのかすら疑問に思える状況。
1階層のトラップにより、1番手で2階層にたどり着いたサロロ達は、当然ボスへも一番乗りを果たしていた。
「うわー! ドラゴンだー! ロロ、ドラゴン大好きー!」
「……だからそれはドラゴンじゃなくてスライムだってば……!」
ドラゴンの見た目に目を輝かせるロロに、2人分の警戒を強いられるサーシャ。
「ドラゴンかっくい~!! よーし倒すぞー!!」
「待てロロ!! 作戦くらい──」
勢い任せに殴り掛かかろうとするが、7属性のブレス攻撃に中々近づくことが出来ず、
苦し紛れに投げた爆弾も簡単によけられてしまう。
「むー!! あたらない!!」
「だから、ちゃんと考えて動かないと……っていっても無駄だよな」
「でも、せっかく1階層をパスして時間に余裕はあるんだから、確実にいこう」
時間に余裕があると聞いてロロが何かを閃いた。
それに気づいて嫌な予感を抱えてサーシャがロロを止めようとするが……
「あたらないなら……それ! 自爆アタックーっ!!」
なんとロロが、サーシャを囮に突撃し、大量の爆弾を抱えてスライムの懐に飛び込み自爆。
まさかの行動に、出遅れたポイズンスライムとシャドウスライムがコアの破壊許す。
当然ロロはそのまま戦闘不能となり、ダンジョン入口へ戻される。
が──
「ただいまー! また来たよ〜!」
ロロは、前層の落とし穴ショートカットを再利用して、最短ルートでボス部屋に帰還。
それを繰り返すこと数度、シャドウ・ライト・エア・アイス……ひとつふ、たつと確実にスライムのコアを破壊していく。
時間の余裕と、ショートカットの存在があるサロロ組だからこそ成しえたゾンビアタック戦法だった。
ロロが3度4度と自爆を繰り返し、気づけば残りのスライムはジュエルのみ。
「さすがにそろそろ普通に戦っても倒せそうなんだけど……」
「ロロは満足したの!」
サーシャと視聴者の総ツッコミを背に受けながら、最後はふたりの火力で残ったジュエルスライムのコアを攻撃。
お返しとばかりに今度は相手からの自爆をくらい、サーシャと共に再度スタート地点へ。
結局最後も爆発するのかよ! と、サーシャが悪態をつきながら…
ロロはスライムの自爆に爆笑しつつ2階層ボス部屋に戻り、丸裸状態のジュエルスライムのコアを破壊する。
「ロロたち、勝ったぞーっ!!」
▶ ロロの体力すげぇ
▶ サーシャが完全に保護者で笑う
▶ もう何回目の爆散かわからん
もはや常識外の戦い方で2階層を突破したサロロ組。
1番手でたどり着いた2階層ボス部屋も、出る時には4番手まで大きく順位を下げていた。
しかし唯一無二のスタイルで、着実に観る者の心を掴んでいたのだった。




