第41話:ソロ組の岩亀攻略
まどかたちが1層の階段を駆け上がるその頃──
◆ コノエ
コノエは、すでにヘヴィ ロック タートルとの戦闘を終え、階段を上っていた。
1階層、道中はまるで最短ルートを熟知しているかのようにモンスターとの戦闘をほとんど回避。
数歩手前で敵の視界を切り、罠も全て無視して通過。
ソロの強みを十全に活かした立ち回りだが、もちろん誰にでも出来る訳ではない。
「階層ボスに到達。ボスは防御特化型ゴーレム。戦術は……防衛貫通型を採用かな」
「いつも通り断閃連牙を中心に、物理貫通効果のある幻理斬で削りきる。目標攻略時間は……9分。」
戦闘が始まると、ゴーレムの動きに合わせてスキルのクールタイムと詠唱のタイミングを完全に制御。
ただし、壁を食べられての回復だけはやや想定外だったようで、
数秒間だけ詠唱を中断し、やや苦い顔を見せ考える。
「物理耐性も貫通、魔法も有効。回復阻止のためにヒットストップ多めに変更、壁まで歩かせない。
断閃連牙から幻理斬連打。動きに合わせてスキルをキャンセルして、魔弾で硬直を維持することで回復阻止」
スキルによる魔法の連撃と、移動阻害のタイミングが完璧にかみ合い、
結果として、ボスの回復頻度は最小限に抑えられた。
▶ やっぱこれよ、理詰めのごり押し!
▶ こんなん出来るのコノエだけだってw
ボスの撃破タイムだけで言えば、まどいろとほぼ同タイム。
しかしボスにたどり着くまでのタイムの差で、まどいろより数十秒早く第1階層を突破。
◆ ソラ
一方その頃、最速でボスにたどり着いたのはソラだった。
まるで敵の配置とルートを全て予測していたかのように、
移動と回避、遮蔽物の利用が一切ブレない。
視界の隅、足音、敵の反応──
すべてを完璧に制御した静かな移動で、スタートから一度も戦闘に入ることなくボス部屋へ到達。
コノエの動きも十二分に見事だったが、ソラの動きは、それのもう1段階も2段階も上の領域にあった。
▶ ソラ、また敵の群れスルーしてるぞ……
▶ 移動距離の少なさヤバいな
▶ ステルス職じゃないのにこの動きって何者だよ
だが、ボス戦はさすがにそうはいかない。
誰よりも早くボス戦に突入したソラだったが思わぬ苦戦を強いられる。
ソラの矢はヘヴィ ロック タートルの甲殻に弾かれ、
射線の確保とヒットアングルの調整に苦しめられる。
“効率重視の継続射撃”では通用しない相手だった。
数発は命中しても、回復されてHPが帳消し。
スタミナも矢も、次第に尽きていく。
だが、そこで彼は切り替えた。
──岩と岩をつなぐ接合部。
──装甲ではない“内部”への攻撃。
画面越しではそんなものがあるのかどうかすら確認できない、
そんな隙間へ、毒矢と爆発効果のある特殊矢を、精密に打ち込む。
▶ え?……関節狙い!?
▶ おぉ、爆発通ってる!?
▶ 毒でスリップダメージ稼いでる!!
静かに、しかし確実に。
爆発とスリップで削られ続けるボスの体力。
15分近くの持久戦の末──ようやく撃破。
しかし1層の突破タイムは、まどいろやコノエよりも数分遅れていた。
決して失敗ではない。
むしろ単騎での撃破は見事だった。だが、結果は受け入れ次に進むしかない。
▶ ボスで思ったより時間くったな
▶ 相性がかなり悪かった
▶ 弓ソロでゴーレム倒してるのがおかしいのよ
静かな勝利の後、ソラは再び音もなく、階段を下り始めた。




