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第40話:亀といえば

 

 「亀か~……亀って言えば、ひっくり返せば動けないよね?」

 

 いろはの言葉に、まどかは握ったナイフを一旦鞘に戻し、駆け出した。


 「よしっ、まずは──ひっくり返し!」


 亀のようなゴーレムの側面、体と地面の間に

 トリックスターの高火力スキル《バルーンボム》を叩きこむ。


 まどかが取り出した小さな風船がみるみる膨らんでいき、

 亀の足元で大きくはじけ飛び周囲に大量の紙吹雪が舞い散る。

 

 ……が、亀ゴーレムの巨体はびくともしない。


 「重っ……だめだ、無理に倒すのは厳しいかも」


 だが、亀ゴーレムの動きは遅い。

 いろはもタイミングを合わせ、魔導具から魔法弾を連射する。


 「数で押そう!」


 まどかといろは、二人がかりで着実にダメージを重ねていく。

 その間ほとんど抵抗という抵抗はない。

 

 このペースなら、そこまで時間をかけずに倒せるかもしれない──


 ──そう思った矢先だった。


 ゴーレムが、壁際へとズリズリと歩き──

 ──ガリガリと、岩を噛み砕き始めた。


 「えっ、壁を食べてる!? なにそれ!」


 みるみるうちに、ボスのHPバーが回復していく。


▶ 亀が壁食ってるwww

▶ しかも回復すんのかよ……

▶ 防御型で自己回復ってズルくない!?


 「……でも、ギリギリこっちの火力が上回ってる……!」


 焦りを押し殺して、攻撃を続ける。

 しかしボスは壁を渡り歩き、別の場所へ移動、また岩を食べ始めた。


 「やば……これ、持久戦になったら時間で詰むかも」


 ──最悪、デバフ覚悟で絶影を使うしかないか──

 しかし、それで倒しきれなかったらデバフを受けた上でまた振り出しに戻る。

 

 そう考えていた時、ふと気づく。


 「……壁の色が違う」


 周囲を見渡すと、亀の食べている岩壁だけ、周りに比べてほのかに色が薄い。

 それをいろはに伝えると、いろははぱっと閃いたように指を鳴らした。


 「じゃあ、こうしちゃえばいいんだよっ!」


 いろははゴーレムの近く、食べられそうな岩の周りだけを、

 ピンポイントで光彩符、バリアで覆っていく。


 「なるほど、バリアで食事妨害か!」


 作戦は的中した。

 バリアに邪魔されて岩を食べられず、ゴーレムの回復速度が明らかに鈍る。

 

 食事がとれずに煩わしそうに唸る亀ゴーレム。


 「今だ、いける!」


 まどかはいろはの支援に応え、猛攻を開始。

 ゴーレムはバリアを壊すのに手間取り、攻撃の手が鈍っている。


 ──こうなればもう、パターンに入ったも同然だ。


 ナイフによる連撃。

 トリックスターのスキル群が華やかに炸裂する。


▶ ひたすら無抵抗の亀を削り続けるまどにゃんww

▶ 亀が可哀そうに見えてきて困る

▶ 回復なしだとしても普通に堅そうなんだけどな……


 そして──


 「これでおしまい……! スカーレットライン!」


 まどかの紅い一閃が、ゴーレムの心核を穿った。


 岩の巨体は、恨めしそうにまどかを一瞥し、静かに崩れ落ちた。

 

 崩れ落ちたその場所には次の階へとつながる階段が出現していた。


 「……よし、行こう、いろは!」


 「うんっ!」


 2人は、またひとつ、確かな手応えを胸に、

 次なる階層へと足を踏み出した。



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