第39話:立ちはだかる防壁
薄暗い洞窟を、2人の少女が駆ける。
通路は複雑に入り組み、所々に開けた空間もある。
その先々で、ちらほらとモンスターが姿を現した。
「──やっぱり、普通のダンジョンってわけじゃないね」
鬼のような姿の敵を睨みつけ、まどかが警戒するようにナイフを握り直す。
出会い頭、二連歩で一気に距離を詰め、すれ違いざまにスカーレットラインを一発。
振り返りざまに追撃をいれつつもバックステップ。
まどかに気を取られたスキにいろはの陽炎斬がモンスターの背後を襲う。
いろはに向き直る敵に、すかさずまどかのイリュージョンリリィで動きを阻害する。
そのすきにまどかが最接近して再度スカーレットラインを叩きこむ。
まどいろの基本戦術の1つで、相手が1体の時には非常に有効的である。
適正レベルであればこの1セットで大抵の敵は落ちるのだがここではそうはいかない。
倒しきるには結局、追加で数撃、交戦が必要となった。
遭遇するモンスターたちは、どれも推奨レベルを遥かに超えた手強さを持っていた。
1体だけでもまともにやり合えば、消耗は避けられないだろう。
「今回はタイムも重要、基本スルー優先でいこう」
「うんっ!」
できるだけ戦闘を回避しつつ、道を選び、前へ進む。
とはいえ、どうしても倒さないと通れないポイントも存在した。
──こういう場面、ソロだとスルーできるルートが多くて有利かも。
逆に、3人以上のチームでは、どうしても戦闘回数が増えてしまう。
まどかは冷静にそんなことを考えながら、進軍ルートを選んでいった。
「……っ、見えてきた」
1階層の最奥──そこには、明らかに異質な存在がいた。
「……あれ、ボスだね」
階段へと続く唯一の道を、巨大な影が塞いでいる。
見るからに、普通のモンスターとは違う圧倒的な威圧感。
「やっぱり階層ごとにボス戦、ってわけか」
タイムアタックとはいえ、ただ走り抜けるだけでは面白くない。
避けて通れない関門を設置してくるのは当然と言えば当然だろう。
まどかは素早く呼吸を整えた。
「支援、全部かけ直してからいこう!」
「了解、まどにゃん!」
バフの魔法が次々と展開され、2人の身体に淡い光のベールが宿る。
いろはの詠唱も、さすがに真剣そのものだった。
改めてボスを見やる。
「……見るからに防御特化型、かな」
ステージ1のボス程ではないが、全長3メートル近い大きな岩のゴーレム。
目や体の各所が青白く光っており、威圧感を放っている。
鈍重な見た目。分厚い装甲。そして何より亀っぽいフォルム。
一見してわかる、硬さ重視のいやらしい個体だ。
名称は……LV42・ヘヴィ ロック タートル。名前だけでも堅そうだ。
▶ また防御型かよww
▶ これ、タイムアタック向きじゃねえだろ運営w
▶ クレーム入れたいけど、難しいのも見たいんだよなぁ……
「まあ、文句言っても仕方ないか」
まどかは軽く笑ってナイフを構えた。
「とにかく! 全力でぶっ叩くしかない!」
──第1階層、突破作戦開始!




