第38話:ステージ2 開幕!
【公式チャンネル・配信再開】
「──さあ! みなさん、30分ぶりですっ!」
明るいMCの声が、画面いっぱいに響く。
「ちゃんとトイレは済ませましたか? 飲み物の補充はOKですか? いいですね? いいですね!」
カジュアルなトークで空気を温めつつ、司会はにこやかに続けた。
「これから始まるステージ2も、絶対に目が離せない内容になってます!」
「では、早速ルール説明いきましょう!」
「ステージ2の内容は──」
「ズバリ! ダンジョン攻略TA!」
「参加者5組には、それぞれ同一内容の特別ダンジョンに挑戦してもらいます!」
「インスタントダンジョン形式なので、チーム同士が中でかち合うことはありません。」
「純粋に、ダンジョンの攻略スピードを競うガチンコ勝負です!」
「なお、今回のダンジョン推奨レベルは──45!」
「制限時間は90分!」
「ちなみに……」
「これ、ぶっちゃけ裏話なんですが──」
「もともとはもう少し難易度低めのダンジョンを用意してたんです!」
「ところがどっこい、ステージ1で、倒せないと思ってたボスが2体も倒されるっていう……」
「予想を超えてきた参加者たちのせいで、急遽、難易度を引き上げました!」
「ほんと、みんな優秀すぎて運営陣は皆泣いてます!」
笑いながら、MCが肩をすくめる。
コメント欄にも「草」「有能すぎるプレイヤー陣」などの文字が並んだ。
「もちろん今回も、クリアタイム順にポイントが付与されます!」
「順位ポイントは、1位10P、2位8P、3位6P、4位4P、5位2P!」
「さらに──ステージ1と同様、平均視聴者数と瞬間最高視聴者数によるポイント配分も続行!」
「人数によるボーナスも、引き続き適用されますよ!」
「さあ、皆さん準備はよろしいでしょうか──!」
「ネクストスターアーカイブ第2ステージ──まもなくスタートです!!」
公式のアナウンスとともに、視界がふわりと切り替わる。
「──っ」
まどかといろはは、目の前に広がる光景を見渡した。
そこは──ゴツゴツとした岩肌に囲まれた、典型的な洞窟型ダンジョンだった。
天井は低く、かすかな光に照らされた通路がいくつも伸びている。
足元にはわずかに砂塵が舞い、遠くから不気味な唸り声のような音が微かに聞こえた。
「……見た感じ、普通の洞窟タイプだね」
まどかが小声で呟く。
「でも、普通なわけないよね、このイベントで」
2人は顔を見合わせ、自然と笑みをこぼした。
「さて、どうしようか」
歩き出しながら、まどかが問いかける。
「このダンジョン、推奨レベル45って言ってたし……死んだらスタート地点に戻されるんだよね」
「慎重に、安全第一でクリアを目指すか──」
「それとも、多少無理してでも、最速を狙うか」
「……もっちろん、勢いに任せて最速で!」
いろはが勢いよく言いかけ──
「──って言いたいところだけど」
「あはは……絶対そんな簡単にはいかないよね、これ」
少しバツが悪そうに笑ういろはを見て、まどかは小さく頷いた。
「うん、いろはも同じ意見で良かった」
「できる限りの最速は目指すつもりだけど、無策で突っ込むのはさすがに無理だよ」
「さっき説明でも言ってたでしょ? 急遽難易度を引き上げたって」
「──つまり、“クリアそのもの”が難しい設定になってると思う」
2人は歩を止め、周囲を慎重に見回しながら小さく息を整えた。
「それに、今回はステージ1で私たちの動きを見た後での調整だよ」
「運営も、簡単には勝たせてくれないってことだね」
いろはがきゅっと拳を握る。
「……でも、できる限りやってみよう!」
「まずは様子を見ながら、無理せずペースを上げる!」
「もちろん──戦闘の演出は、派手にいこうか!」
「おっけー、任せといて! ……まどにゃん!」
小さな拳を突き合わせ、2人は無言で頷き合った。




