よん
一番最初、入学式が終わって教室に入って、まず担任が挨拶らしき事をする。
あいつ、笹原は教室に入って黒板の前に立つや否やまずこう言った。
『知ってるか?ケツが何故二つに割れているのかッ!?』
さすがの下ネタ大好き男子諸君もその唐突さと勢いに圧倒されて言葉が出なかったからね。
勿論私はどん引き。
それ以後コイツとは必要最低限話さないと心に誓ったのだった―……、
が。
「新崎。お前放課後生徒指導室に来い」
コイツ生徒指導部管理教師だった……ッ!
「朱麗、気をつけろよ」
早いもので一日が過ぎ、私はこのポーカーフェイスの裏に焦りの色を漂わせていたが、チヨに部活に行く前に釘を刺された。
「何が?まぁあの頭のおかしい教師に密室に呼ばれてしまったんだからね。用心しない事はないわ」
夏美は先に部活に行ってしまったらしい。チヨは男子バレーで夏美は女子バレーだ。
私は教科書を鞄に詰め込み終え、生徒指導室に行こうとするとまたチヨに腕を掴まれる。
「そうなんだけど……、その、あいつ変態だって有名らしいからさ。先輩に聞いたんだ」
「そんなの言動からして気付いてる」
「……お前また腐女子眼力とか何とか言うの使ってんじゃねぇだろうなぁ?」
フフフ。腐女子眼力ねぇ。
説明しよう。
腐女子眼力とは同性愛に少しでも興味を抱いているか、嫌悪感が無いか、または誰か同性とくっつく気配があるか等を察知してしまう能力の事である。
今馬鹿だろお前、と思った奴、挙手。
「とにかくあの変態には気をつけんだぞ!」
チヨは言いたい事だけ言い切って走って行ってしまった。
私は呆然と夕暮れに近付いた廊下に一人たたずみ階段をゆっくり下りていく。
「大丈夫。一瞬で感じた。あいつにはそっちの要素は全く入ってない」
生徒指導室が見えてきた。