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体育館にはまだあかりが灯っている。

ご苦労な事。


私は日頃運動のしない強張った体をキシキシと動かして校門をくぐろうとした。

少しさっきの人達が気になったけどここは寒いし……。


その瞬間、体育館の方で何かが割れる音がした。


「えっ」


小さな音だったけど何かあったのかもしれない。

私は体の動くままに走っていく。



が、結局体育館の隅は隅でしかなく、ただ暗い空間が存在するだけだった。


「何だ。走って損した」


ふいっと体を反転させたその時ッ!

私は幸運にも決定的瞬間に立ち会ってしまう!



「……危ねぇ」



カサ、と木の陰で声がした。

それはどこかで聞いた事のある低い声。


そしてその奥には緑っぽいジャージに身を包んだ細そうな生徒がおどおどと顔を出す。


(あ、あれ私の担任の……笹原、亮真?あぁ。確かバスケ部の顧問だっけ……)


本能的に私は闇に紛れて(ただ木陰に隠れただけだが)身を潜めていた。



ん?ちょっと待ってよ。

今彼ら、部活の顧問と新入部員?は二人きりでしかも顔が近い……っ!?


物が上から落ちてきたみたいだけど、これって私にとってめちゃくちゃオイシイ場面なんじゃ……っ



ブー、ブー、ブー……、



突然存在感を示すかのように震え出すブザー。

私の胸元で静かな空気を断ち切って。


恐る恐る顔を上げると案の定二人は思いっ切り、凝視するかのように見つめていた!


ヤ・バ・イ!



私は無言で立ち上がり、彼らが見ているにもかかわらずまるで何事もなかったかのように立ち去っていく。


無我夢中だった。

この忌ま忌ましい携帯を公衆便所にでも投げ込んでやろうかと思ってしまう程に。





思えばこの瞬間に、私の平穏なる日々は崩されかけていたのだった……。


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