エピローグ:《死神》のおっさん
・主人公 : 死人、男性。
・・一人称 : 俺。
・・呼ばれ方 : 兄さん。
・おっさん : ホームレス(見た目)、男性。
・・一人称 : オレ
・・呼ばれ方 : おっさん
あれからどれほどの時間が経っただろうか。
俺が、もう、誰なのか、忘れてしまったけれど。
けど、何をするのか、したいのか。
それだけは覚えてる。
なあ、おっさん。ようやくだ。
ようやく、そっちに行ける。
まだそこにいるかな?
待っててくれればいいな……。
※※※
『よう、兄さん。久しぶりだな』
よう、おっさん。会えて嬉しいよ。
『今日は、手土産はないのかい?』
ごめんよ、おっさん。手を伸ばして掴めるものしか、持ってこれなかったよ。
『こいつはまた、たくさん、たくさんの人の事を、救ってやったんだなぁ……。さすが、兄さんだ』
ごめんよ、おっさん。何個掴んでも、何度掴んでも、アレは一個になってしまうんだ。
『死して亡者に堕ちながら、人に纏わりつく負の力を、死の気配を、こっちの邪鬼を、一体どれほど、その身にその魂に宿したんだい?』
ごめんよ、おっさん。もう、どれほどの数か覚えてないんだ。
『いいさ、いいさ。兄さんがそんなになってもここに来たってんなら、オレはその遺志に応える義務があるだろう』
ごめんよ、おっさん。もう、俺……。
『死してなお、幾千幾万の人を救い、未練を果たしに来た人間よ。その、気高き魂に敬意を表し、自らの意志でこの姿を晒そう』
おっさん、が、ガイコツ、に……。
『我は《死神》。死者の未練を断つ存在。さあ、気高き魂よ。もう苦しむことはない。その重りはこちらで引き受けよう。未練を捨て、天へ逝くといい』
灰色のローブをまとったガイコツ姿へ変わったおっさん。
その姿は、怖さ、恐ろしさよりも、尊さや気高さを感じた。
そして、その手には、身の丈ほどの大鎌。
ああ、本当に、《死神》だったんだな。
死者が、迷わず天へ逝くことが出来るように、死者の遺した未練を刈り取る存在。
ああ、だから、おっさんは、ずっとここにいたんだな。
ごめんよ、おっさん。さよなら。元気でな。
『さよなら、兄さん。来世は、今世で助けた人の数だけ幸せになりなよ』
聞こえてるよ、おっさん。
来世でも、また会おうな。
『もう、来るんじゃねぇぞ!』
泣くなよ、
笑ってくれよ、
なあ、おっさん。
さよなら、俺の友達。