40.ドラゴニアへの旅立ち(第一章エピローグ)
本日の更新4話目。
城の朝。
アーデルとの今後の話し合いも終わって、僕とシャロンは廊下を歩いていた。
開いた窓から爽やかな風が入ってきてカーテンを膨らませる。
シャロンが僕の腕を大きな胸で挟むように腕組みしながら尋ねてきた。
「……ノイスさま。アーデルハイトさんとは、どういったご関係で?」
「昔一緒に修行した。仲良くなって、一緒に逃げようって言われた。でも僕はアーデルの気持ちに応えなかった。人と付き合ったり人を好きになったりする資格がないと思ってたから。僕は迎えに行かなかった。それだけ」
「むぅ……なんだか羨ましいのか悲しいのかよくわからない気持ちになりましたわ……今は好きになる資格は手に入れられたのでしょうか?」
「努力中だね」
するとシャロンが腕組みを外して手を握ってきた。しなやかな指先が絡まる。
「頑張ってくださいませっ」
「うん」
なんとなくそのまま手を繋いで歩いていった。
そしてお城を出た。
すると爽やかな朝の青空の下、たくさんの子供たちが集まっていた。百人ぐらいいる。
――僕たちが助け出した子供たちだ。
みんな目に涙を浮かべてお礼を言ってくる。
「ノイスさん、助けてくれてありがとう」「生きてるのはノイス様のおかげです!」「ありがとうございますっ!」
「人として当然のことをしたまでだから、気にしないで。これからは大人に騙されないようにね」
「「「はいっ!」」」
威勢の良い返事が青空高く響いた。
すると子供たちの集団をかき分けて、ヨハン少年と妹エルザロッテが傍へ来た。
「ノイスさん、助けてくれてありがとうございました」「またお兄ちゃんと会えるなんて嬉しいです。ありがとうございます」
二人は髪を揺らして、ペコッと頭を下げた。涙がきらりと朝日に散った。
僕は微笑みつつ語りかける。
「うん。元気に生きていくんだよ。また何かあったら幸運の金貨に祈ってね」
「「はいっ!」」
朝日に照らされる子供たちの笑顔が眩しい。
嫌いだった暗殺スキルで守った笑顔たちだから。
嬉しさが募る。
――この調子でもっと守ってみよう。助けてみよう。
当然一番は助けたいのは――。
僕は隣にいるシャロンを見下ろした。腰までの青い髪が風に揺れて美しく輝いている。
「じゃあ、行こうか。ドラゴニアを取り戻しに」
「はいっ、ノイスさまっ!」
そして僕らは子供たちの声援の中、手を繋いで歩き出す。
魔界経由でドラゴニアに向かうため、まずはマウエルブルグへ。
晴れた朝日が田園の道をどこまでも照らしていた。
◇ ◇ ◇
見渡す限りの青い大海原。
その中にドラゴニアの島があった。
島と言っても、大勢のドラゴンが住めるのだから、とても大きい。
そんな孤島に打ち寄せる高波が砕けて、白い飛沫が朝日に輝く。
島は周囲を断崖絶壁で囲まれている。
空を飛んでくるしか入国する方法はなかった。
島の中央には巨大な白亜の城が築かれていた。
大きなドラゴンでもゆうゆうと入れる城門と廊下。
その奥にある玉座の間。
壇上には闇のように黒いドラゴンが横たわっている。
かなり大きい。
その下には一回り小さな金色の竜が頭を垂れている。
「ご報告申し上げます、アンヘイロン皇王」
「なんだ? 申してみよ」
「シャロン皇女とラン皇女の探索を命じていましたペイエンディ副司令官が、人間の国グランツフェズンで消息を絶ちました。呼びかけにも応じませんので倒された模様です」
「ほほう……ペイエンディが皇女に負けるとはな。だが、人間の国に潜んでいるようだな」
「はい。人の姿になって隠れているとの報告です」
アンヘイロンはナイフのように鋭い牙をぎりっとかみしめる。
「忌々しい……ドラゴンどもは抵抗をやめたが、いまだに心からは従っておらぬ。早く皇女を我が物にしないと、ドラゴニアのすべての力を手に入れて世界を手中に収めることができぬ」
「その通りでございます」
「ドラゴンたちを派遣して、人間の国を焼き払えばよい。焼け出された皇女たちが出てこよう」
「お待ちください、アンヘイロン皇王。焼き払っては将来、不毛の土地を手に入れることになってしまいます。そこで私に考えがあります」
「ほほう、どんな策だ? ジンフォン総司令官よ」
金色の竜は顔を上げて、目をきらりと光らせる。
「人間の国は戦火に巻き込まれようとしています。人間の国には勝ち目はない様子。だが周辺国では全土支配も難しいようです。そこでドラゴニアが力を貸して、全土を支配させてしまうのです」
「見返りに王女を見つけさせるというわけか」
「ドラゴン部隊の駐屯も取り付ければ、後日、世界を征服するためのよい前哨基地となるでしょう」
「なるほど、次の布石にもするとは考えたな。よかろう。やってみるがいい。――だが、その作戦には誰を派遣する?」
「私が出ます。軍の指揮はメイシィ副司令官に任せておけばよいでしょう」
ジンフォンは何気なく答えた。
しかしアンヘイロンの目つきが鋭くなる。
牙の隙間から煙を漏らしつつ口を開く。
「ほほう……? 総司令官、自ら出陣とは……何を企んでいる?」
「いえいえ、何も。ペイエンディが倒されたのですから、彼より強い私が向かわなければ生け捕りは難しいでしょう」
「わかった。許可する。一日も早くどちらかの皇女を連れてくるのだ」
「ははっ!」
ジンフォンは頭をこすりつけると、金色のうろこにおおわれた体を大きく動かして玉座の間を後にした。
◇ ◇ ◇
ジンフォンは金色の巨体を揺らして城の外まで出てくると、空を見上げた。
しかし口角がニヤッと吊り上がる。
――くくくっ……報告が正しければ、ラン皇女が【極光竜撃破】を放ったのこと。皇王自慢の【極黒竜守鱗】すら貫ける! アンヘイロン、その王座は本来私のもの! 私こそがドラゴニア皇王! 必ず奪って見せますよ!
ジンフォンは抑えきれない笑みを浮かべながら翼を広げると、高い空へと飛びあがった。
『第一章 グランツフェズン王国編〈終〉』
これにて第一章終わりです。
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二章はぼちぼち書いていますが、3日~一週間後ぐらいから投稿することになりそうです。




