最終話 月曜日、将軍との決着後編
ついに最終回です。更新がだいぶ遅れてすみませんでした。
3回の表。
今度は野球部の攻撃の番だ。
現在のスコアは、0-0で両者譲らない戦いが続いてる。
野球部の打者は源一樹だった。
源一樹は、俺の親友の1人で小学、中学も同じである。家もそこそこ近いので小学校の時はよく近くの公民館でカードゲームをして遊んでいた。それほど仲のいいやつだ。しかし、今回は残念ながら敵。親友だからと言って温情をやる余裕は俺にはない。そして、それはおそらく向こうも同じだ。野球部と陸上部。別の部活に入ったからのこその戦いなのだ。
悪く思わないでくれ。
俺は、別に投げるわけではない。投げるのは油井先輩だ。俺は、サードを守るだけ。サードにボールが回ってこない限りあいつとの勝負は起きない。だからこそ、直接対決ができないのが残念だ。
俺は、ホームの方を向く。
すると、一樹がちらっと俺の方を向いた……ような気がした。いや、今見たよな? 俺は焦った。何でこの場面で俺の方を見るんだ。偶然だ。たまたまだ。だが、俺はどこか嫌な予感がした。まさか。まさかそんなことはないよな。
油井先輩がボールを投げる。
そして、一球目で一樹はそのボールをバットに当てる。バットに当たったボールはまっすぐ俺のいる方へと向かってくる。
俺はあわててそのボールをキャッチしようとジャンプするもジャンプが足りずにそのままサードの後ろの方へと向かう。
「ちっ!」
思いっきり俺は舌打ちをする。
「レフトッ!」
俺のフォローするようにと清田が叫ぶ。
「おっけっ!」
そう言ってレフトの潮崎が駆け出しボールをワンバウンドでとる。
そして、ボールを1塁に向かって思いっきり投げるも間に合うことはなく、一樹は1塁で見事に止まった。
3回の表。ノーアウト、1塁。
「すまない。潮崎フォローありがとな」
俺は、感謝する。
「いいよいいよ。お前と俺との仲だろ。それに俺だって一樹に少しは勝ちたいという思いもあるからな。あいつ、俺達がこっちサイドにいることが分かってあえて狙ってきたぞ」
潮崎は、俺とそして一樹と同じ中学校出身だ。家は小学校の学校区が違ったので結構離れているが3年間で1年の時と2年の時に同じクラスになったことがあるため仲が良い。ちなみに中学の時からサッカー部である。肌が黒いのはなぜか年中のことだが。
「ああ、確かにな。次の打順でもきっとやってくるだろうな」
野球部の2人目は手堅くファーストの上にボールを飛ばし、足が意外と速かったためか1塁にすぐにたどり着いていた。
3回の表。ノーアウト、1,2塁。
3人目のバッターもボールをショートとファーストの間にうまくすり抜けさせて1塁へと見事たどり着いていた。気が付けばノーアウトなのに満塁というここ一番の大ピンチの状況に追い詰められていたのだった。
4人目のバッター。確か1年生だった気がする。さすがに油井先輩も1年生相手に負けることはないだろう。この時の俺はそう思っていた。
油井先輩の一球目はみごとなストレートでストライクだった。2球目は、1年生が反応したかのように見えたが、大きくスイングして空振りだった。
これは、いける。俺はそう思った。
しかし、3球目。油井先輩は思いっきりボールを投げる。いい軌道であった。おそらくはまっすぐストレートのボールだろう。これは、打てない。俺はそう感じたが、次の瞬間。
カキーン
金属バット特有の甲高い音が響き渡る。
油井先輩のボールは完全に捕捉されていた。
ボールは俺のいるサードとは反対側の方へと飛んでいく。
高い。
ファーストは余裕で越えていった。そして、ライトも越えていく。そのまま学校の周囲を囲むフェンスにボールは当たった。これはつまり……
「ホームラン!?」
『よしゃああああああああああああああああああああああああああああああ』
俺の驚きの言葉は野球部側のベンチからの歓声で消えてしまう。
あの1年生は、油井先輩のボールをかなりやすやすとホームランにしてしまったのか。
俺の空いた口は閉じなかった。
3回の表。0-4。ノーアウト。
一気に4点も入れられてしまった。かなりの痛手だ。
「タイムッ!」
こっち側の即席チームの監督を頼んだ沼宮内先生が審判にタイムを要求する。
そのタイムが受け入れられたことで全員1回ベンチに戻って態勢を立て直すことを考える。
「すまない」
最初に油井先輩が謝った。
しかし、俺らはそんなのを気にしていなかった。
「先輩がいなければ今まで抑えていられなかったんですよ。だから、謝る必要はありません」
「そうです。むしろバンバン打たれていないのは油井先輩のおかげなんですから」
みんなして言う。
「ありがとう」
「よかったな。油井」
東瀬先輩は若干泣いている油井先輩の肩を後ろからトントンとたたく。
「ああ、みんなありがとう」
もう一度油井先輩が感謝の言葉を言う。
「よし。もう一度気合を入れなおすぞ」
東瀬先輩が言う。
俺達は円陣を組む。
「絶対勝つぞおおおおおおおおおおおお」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおお』
3回の表。ここが正念場だ。
俺達は再び守備をするために場に出る。
その後、油井先輩のボールは球威が上がった。バッターを3人連続3振させる。
やっぱり油井先輩はすごい人だ。
3回の裏。
俺達の努力が報われることはなく3人連続3振で終わる。
4回の表。
俺達の気合の守備で1塁まで走者を一時出すも点を入れられることなく守りきる。
4回の裏。
俺の打順で2アウト1塁であった。俺が渾身のバッティングを見せることができ1塁にいた清田が全力で走り1点を返した。しかし、その後は3振で終わった。
5回の表が始まった時点で1-4という結果だった。
5回の表が始まる。
野球部はこのまま逃げ切ろうと考えているはずだ。だが、ただ逃げ切るだけのことを考えているはずがない。きっとさらに得点を増やそうとしているはずだ。将軍の性格からして圧倒的な差で勝ちたいと思っているはずだ。俺達にもう二度とは向うことがないようなほどの差をつけて見せるはずだ。
だから、それを俺達は防がなくてはいけない。泣いても笑ってもまずこの回の表の攻撃を止めなければ。
5回の表。最初の野球部側の打者は3回の表で油井先輩のボールをホームランにした1年生だった。彼の名前を聞いたらその強さの理由も良くわかった。
彼の名前は流山真亨。彼の兄貴は流山通司という。そして流山通司は、群馬県で近年甲子園に出場する何個かの高校の中で新星の高崎体育大学付属高校の4番エースの投手だそうだ。兄貴よりも頭がよく将来は野球で食っていくよりも勉強でいいところの大学に入り官僚を目指しているからこの中川高校に入学したと野球部に詳しい池山から聞いた。
さっき、ホームランを打たれた。順当にいけばこれは棄権するしかない。無理に勝負をしてもダメだ。油井先輩は先ほど打たれたということはもう読まれていると読み取っていい。東瀬先輩もそれを読み取ってか思いっきり立ちあがる。
頭のいい選択だと思う。
しかし、油井先輩は想像しない方向へとボールを投げる。
「っ!?」
東瀬先輩が油井先輩の行動に驚いて慌てて座る。
ボールはぎりぎりミットに収まった。
「ストライクッ!」
審判は声を張り上げる。
そして、東瀬先輩が審判に対してタイムを要求する。
タイムが認められ油井先輩の元へと駆け寄った。おそらく、いや確実に今の棄権しないで勝負を挑んだことに対する真意を聞き出そうとしているのだろう。
なんだろうか、言い争う意が若干おこった。しかし、最後は東瀬先輩が折れたのだろう。おとなしく戻っていった。
「プレイボール」
試合が再開される。
東瀬先輩は先ほどと違って座っている。これはつまり、油井先輩が勝負を選んだということみたいだ。また、打たれないといいが……いや、何を弱気になっているんだ。見方がやれると思ったんだ。だったら俺も応援しないといけない。それに、流山を打ち取ることにはかなり大きな意味がある。野球部のエースを打ち取ればそれだけ俺達に自信が出るし、相手チームには動揺をとりわけ将軍にかなりのプレッシャーを与えることができる。だったら、ここは投げて勝ってもらうしかない。
俺は祈る。
油井先輩の2球目。
ボールはまっすぐミットに収まった。
流山はボールを見逃した。敢えてだろう。
「ストライクっ!」
これで、2ストライクだ。かなり追い詰めた。ただ、あと一球で打たれてしまったら元もこうもない。どうにかしてくれ。
油井先輩は3球目を投げる。
ボールは今度もストレートだ。かなり球威が出ている。しかし、
カキーン
金属バット特有の甲高い音が鳴り響いた。
「えっ!?」
俺は、焦った。しかし、ボールはかなり左にそれた。
審判は叫ぶ。
「ファール!」
よかった。
危ない危ない。
冷や汗が背中から流れた。ここで打たれてしまったら俺達の希望が無くなる。勝負に負ける可能性が高くなるんだ。ここが天下分け目の関ヶ原。
頑張ってくれ。
油井先輩の4球目。
またしてもこれはストレートだった。
カキン
「っ!?」
そして、ボールは打たれる。しかし、今度は大きく右にそれていく。もちろんこれは、
「ファール!」
ファールだった。
だが、流山は確実に調整している。どんどんとボールに対する反応がよくなっている。最初の打席で打てたのもそういった直感というかポテンシャルが豊富なのだからだろう。さすがと言える。
5球目。
「ファール」
6球目。
「ファール」
7球目。
「ファール」
それから14球目までずっとファールが続いた。お互いがお互い譲らなかった。油井先輩もそして流山もこの緊張感をしんどく思っているだろう。この勝負先に集中力の途切れたほうが負ける。俺はそう思った。
8球目。
「ファール」
9球目。
「ファール」
だんだんとお互いの疲れが目に見えてきていた。油井先輩の額からはかなりの量の汗が出ていた。一方の流山の方もバットを振る時に重そうにしていた。普通ならあり得ない行為だが、かなり疲れている証拠だろう。
そして、勝負が動いたのは10球目だった。
油井先輩はボールを投げる。しかし、
「あっ」
かなり動揺した表情をしていた。油井先輩の投げたボールは投げる直前に今までの汗の影響で滑ったようでうまくボールが投げられていなかった。ボールの速度はかなり遅い。
打たれる。
俺はそう思った。
あのボールなら楽々と打たれるだろう。
俺は目を閉じた。
しかし、奇跡は起きたのだった。
流山はバットを振る。完全にボールをとらえていた。しかし、振る直前でボールが落ちた。いわゆるフォークボールの状態となっていた。偶然的に投げたボールが弱すぎてフォークのように落ちたのだ。ボールを投げれば普通は遠くに行くほど下がっていく。その性質を把握していたはずの流山もここまで遅いボールでは予想できなかったのだろう。
結果、審判が出した判断は、
「ストライクっ! バッタアウト!」
『よしゃああああああああああああああああああああ!』
グラウンドからベンチからそして観客から大歓声が上がる。
まだ試合は終わっていない。でも、歓声が上がった。それだけに俺達はすごいことをしたんだ。野球部のエースをどうにか倒したんだ。
あと、2アウト。そして次の回で4点を取る。ハードルは高いがまだ勝負は終わっていない。可能性が見えてきた。
まだ、俺達は終わっていない。
これからが本番だ──
◇◇◇
そして、残り2人を何とか油井先輩の力で防いだ。1つは3振。もう1つはフライだった。だが、どちらも油井先輩のおかげであることを忘れてはいけない。油井先輩がいなければここまで戦うことができなかった。本当に感謝の言葉しかなかった。
泣いても笑っても最後。
そうして、5回の裏が始まる。
5回の裏。
1-4。
最初の打席は、田澤だった。
「田澤、塁に出てくれー」
田澤は陸上人生は長い。それは逆に言うと、陸上しかしてこなかったというものだ。陸上部の特徴としてほかのスポーツができない人が結構いると思う。とりわけ球技が苦手という人がいる。陸上だったら基本は走る、投げる、跳ぶぐらいの単純スポーツだから誰でもできるという感じはする。
そういったことを考えて田澤が撃てる可能性はかなり低いだろう。でも、あいつはまあまあの運動神経を持っている。陸上部の部長を務めているからある程度能力もなければだめだ。だから、俺は打ってくれると信じている。
相手の投手がボールを投げる。
スカッ
1球目を田澤は大きくバットを振ったが完全に遅かった。空振りだ。肩に力がかなり入っている。
「田澤力ぬけー!」
叫ぶ。
清田も同じようなことを言う。野球部の言うことと同じことを言えてうれしかった。
清田と俺の言葉を聞いて田澤は深呼吸をする。
「はぁ~」
そして、もう一度バットを持ち直した。視線の先には投手が見えている。
2球目。投手はボールを投げる。かなり速い球だ。しかし、田澤はそのボールを、
カキン
見事バットを振ってボールを当てた。ボールはフライになることなくかなり低めに飛んだ。2塁と3塁との間をワンバウンドした。
田澤は短距離だ。相手のショートがボールを取ったときにはすでに1塁についていた。
「ナイスだ! 田澤」
1塁に1人進んだ。これは、大きな一歩だ。
2人目の打者はまたまた陸上部。今度は長島の番だ。
「いけー、なっしー!」
長島の間はなっしーだ。どこかかわいい感じの名前がするが、体型は身長が高いかつ横もまあまあでかい。型あたりの筋肉量が多いというかがたいがいいと表現するのが一番だろう。眼鏡をかけていて顔もこわもてだ。そして、彼は中学時代は野球部。清田と同じような奴だ。
ちなみに結構寡黙かつ、いじられキャラ。
投手がボールを投げる。
カキン
一発めどというのに長島は思いっきりバットを振るとボールに当てた。いい当たりだった。ボールは、かなり遠くまで飛んで行った。センターよりも後ろに飛んで行ったが、ホームランにはならなかった。田澤と長島の2人が走る。ここは陸上部。足が速い。長島は長距離なのでスピードはないから2塁まで走った。
そして、田澤はどうかというと、
「はぁはぁはぁ」
3塁ベースを思いっきり蹴ってホームに走ってきた。野球部側もボールをキャッチャーに向かって投げる。
どうだ。ぎりぎりだった。
田澤の足でも少しきついのではないか。それほどぎりぎりであった。
田澤はホームベース手前で滑り込む。
そして、ボールの方もキャッチャーの方へと飛んでくる。
田澤がなだれ込んだことで砂埃が起こる。
どうだ。
結果は。
砂埃が風で吹き飛ばされ視界がよくなっていく。さあ、審判。結果はどうだ。
「セーフ!」
『よしゃあああああああああああああああああああ』
よくよく見ると、キャッチャーはボールをミットに納めることができずに下に落としていた。一方の田澤は見事ホームベースの隅っこに手を当てていた。
1点取り返した。
これで2-4だ。
あと3点で逆転ができる。活路は見えてきた。
その後、油井先輩、東瀬先輩と野球部の2人が続いて1塁、2塁に進んだ。そのあと、野球経験のないラグビー部安濃がボールを思いっきりいい当たりで打つもののフライ。
試合は1アウトとなっていた。
その次に潮崎が立つ。
サッカー部の実力はかなりのものである。運動神経はいい。きっと打ってくれるはずだ。俺はそう信じた。
投手がボールを投げる。
「ストライク!」
潮崎はピクリと動くこともできずそのままボールはミットに収まる。
は、速い。あの投手さっきよりもボールの球威が上がっている。ここで、完全に終わらせようとしているのだろう。いや、だろうじゃない。確実に終わらせるつもりだ。俺達でも絶対に同じようなことをしている。ここが、勝負どころというやつだ。
2球目も潮崎は見送った。見送ったのか、それとも本当に打つことができないのかここからでは判断がしづらい。何を考えているんだ。
3球目。潮崎はバットを思いっきり振る。しかし、ボールはバットに当たることなくそのまま捕手のミットに収まった。
「ストライク、バッターアウト!」
2アウトになった。
潮崎は顔をうつむかせながら戻ってくる。
「すまない。全く打てそうになかった。俺には野球は無理だ……」
さっきの打順では見事打って1塁に出た男の言葉とは思えなかった。投手は別に代わったわけではない。変わったのはボールだ。あのボール。生き返っている。3回あたりで点数を稼いでおくべきだったな。今となっては遅いがほかの試合展開があったらよかったとつい思ってしまう。だが、そんなイフの話など存在しない。俺の頭の中で勝手に描かれているだけだ。
そして、描かないといけないものがある。
それは、俺の手によって勝利すること。
次の打順は俺だった。
5回の裏。2-4。2アウト。1.2塁。ここで俺がホームランを打てば逆転だ。俺が主人公であるのならば打たないといけない。
俺自身の手で始めたこの物語に終幕を──
俺はバッターボックスに立つ。力が自然と入ってしまう。1回呼吸をする。そして、投手の方を見る。
俺は打つ。絶対に。
バットを持つ力が再び強くなる。
投手がボールを投げる。
俺は、バットを振る。
「ストライク!」
しかし、タイミングが遅くてストライクになる。
ダメだった。
2球目。
再びバットを振るもまたしてもストライクだった。
やばい。完全に俺は追い詰められていた。これで俺がストライクになるかアウトになれば試合は終了。野球部に負けてしまう。そんなの嫌だ。ここまで来たんだ。絶対に俺は、俺達は負けるわけにいかないんだ。
これが、おそらく最後のボールだ。この試合最後となる。
俺は、1回深呼吸をする。勝つんだ。何としても勝つんだ。どうしても勝つんだ。絶対に勝つんだ。勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ絶対に勝つんだ。
バットを大きく振り回し、投手の方に向ける。いわゆるホームラン宣言。ここで、すべてを終わらしてやる。
じっと見つめる。
投手が俺に向かってボールを投げる。ストレートかそれともカーブかそれともそれ以外なのか。どの球種が来るかわからない。でも、俺の直観を頼りに打つしかない。最後のボールだ。俺自身も将軍には嫌な思いがあるがそれ以上にこの野球の試合をどう思うかも大事なのかもしれない。
楽しかった。
試合を起こした理由はどうあれスポーツをやるのならばこの感情がないといけないと俺自身は思っている。楽しくないのならスポーツはやらなくていいと思っている。
だから、この野球もここまでやってきてよかった。楽しかったと思う最後の1振りにしたい。いや、するんだ。
投手がボールを投げる。
俺は最後の最後までボールを見続ける。そして、ここだと直感的に思ったタイミングでバットを振る。
「おりゃああああああああああああ」
ものすごいと声を出す。自分でも後でこのことを思い出したら絶対に恥ずかしいだろう。でも、そんなことを気にしない。気迫だけは負けたくない。
バットに思いっきりボールを当てる。そして、
カッキーン
この試合で最も甲高い音がグラウンドに響き渡る。
俺は、ボールの行方を見た。走らなくてはいけないのに自然とボールの軌道が気になった。
俺だけじゃない。ボールの行方を見守っているのは反将軍チームのほかのみんなや今戦っている野球部、そしてこの試合をずっと野次馬している観客。この場にいる全員がボールのを行方を見ていた。ただ例外はボールの飛んで行った場所を守備する野球部のセンターの人だけだった。ボールを見ながら走る。ボールは徐々に高度を落としていく。どこまで飛ぶのか。
野球部の子が飛ぶ。しかし、
ガン
鈍い音がする。
それは、学校のグラウンドの周囲をかこっているフェンスの鉄部分にぶつかった音だ。
そして、ボールは彼よりも若干高い位置のフェンス部に当たった。
フェンスに当たった……すなわちそれが意味するものは……
『よっしゃあああああああああああ! ホームランだあああああああああああああああああああ!』
一気に声が広がる。
そう、ホームランだ。逆転ホームラン。満塁だったらさらに格好いいことだが、それでも逆転は逆転だ。俺は歩いてすべてのベースを回る。
野球部は悔しそうにしているが、どこかホッとした表情も見せている。内心野球部は将軍に対して反抗したいという思いがあったと江本は言っていた。この光景を見る限りやはりそうだったようだ。
ホームベースに俺は戻る。
「川波、よくやった!」
「すごいぜ!」
「川波!」
『川波! 川波! 川波!』
みんなが俺の名前をコールする。ちょっと、恥ずかしい……どうにかならないのか。
そこに清田が来る。
「すごいな、川波。お疲れ。これで将軍と直接交渉をすることができる。この結果を受け入れて将軍も俺達の意見を聞かなければならなくなるだろう」
「ああ、ようやくここまで来たんだな」
俺は、清田の話に頷く。
「川波君。お疲れ。よく最後のボールをホームランにすることができたね。野球部経験者の僕でもそんなことできないよ」
「油井先輩そんなことないですよ。勝てたのは油井先輩が投手をしてくれたからです。俺達だけでやっていたらきっと勝つことなんてありませんでしたよ」
「ははは。そんなことを言ってくれると嬉しいよ。それでも、最後の最後で頑張ったのは川波君だ。本当にお疲れ」
油井先輩が右手を差し出してくる。俺も右手を差し出す。力強い握手をする。
「おい、お前ら!」
そこに不機嫌そうな声が響き渡る。
「……将軍」
誰かがつぶやいたがその声の持ち主は将軍であった。今まで俺達が戦ってきた相手だ。
俺達が倒すべき相手だと考えていた相手だ。
「さあ、俺達は勝った。約束は守ってもらう。もう少しほかの部活にもグラウンドの使用権を譲ってくれよ」
「……そんな簡単に決めることができると思うのか? そもそもこんな遊びで決めると思っていたのか?」
『……』
絶句した。ありえない言葉だった。これが教師の言葉なのか。俺達との約束は一体どうしたんだ。約束を守らない大人とかありえない。教師のいや、大人の片隅に置けない。
「おかしいでしょ」
長島が文句を言う。
「そうです。約束した以上ちゃんと守るのが教師の役目じゃないんですが」
潮崎も文句を言う。
しかし、将軍はそれらの言葉を全く聞こうともせず帰っていこうとする。
「ほら、お前ら練習をするぞ。こんな遊びで負けるとはまだまだだ。ちゃんと練習だ。今日は絶対にしごいてやるからな」
「ふざけるなよ!」
俺は怒鳴る。その言葉を聞いた将軍はいかにも不機嫌そうな表情をして俺をにらむそして俺に対して怒鳴る。
「お前らそれが教師に対する態度かっ! お前らなんて退学にしてやるぞ! 大学に行けなくて後悔するのはお前らだからな!」
脅しの言葉だった。誰もが進学を目指しているこの高校においてもっと生徒に効果のある言葉だった。だが、そんな言葉で脅す教師とはなかなか卑怯だ。ありえない。
しかし、そこにとんでもない助っ人が現れたのだった。
「小泉先生。それは一体どういうことですか?」
「こ、校長先生……」
そこに現れたのは我が中川高校の校長である一波校長先生だった。あと、2年で定年退職をする予定の先生で、優しくていい人である。よく、学校の周りを放課後ジョギングしているため陸上部とあいさつしたりすることもかなり多い。自らこの年になっても運動する校長先生というのは本当にすごいと思う。前の校長の評判がすこぶる悪かったことを考えるとこの反動はとてもいいものだと思う。っと、校長先生の感想はそこまでにしておく。
「小泉先生。私はあなたの指導を信じていたためあえて言いませんでしたが、高校の部活においてもっとも注目されるものは甲子園野球です。そのことは私もわかっています。でも、野球だけを優遇しようとする考え方はいただけません。あなたの考えのせいで今まで多くのもしかしたら才能があったかもしれなサッカー部、陸上部、ラグビー部の選手がいたかもしれません。そのことで我が校が注目を浴びていたかもしれません。その損失は計り知れないですよ。わかってますか」
「で、でも。そんな練習をしただけでいい成績が残せるとは思いませんよ」
「では、あなたはこう言っているんですね。野球部は練習をたくさんしても成績を残せないと」
「え、ああ。あの、それはですね……」
校長先生の方が一枚上手だった。将軍の言葉を見事にブーメランのように返した。将軍は言い返すことができなくて口をもごもごしている。
そして、将軍は最後に言った言葉は。
「わかりました。彼らの言うことを聞くことにします。野球部以外の部活にもグラウンドの使用権を大きく認めることにします」
「はい。それでいいのですよ。そう言ってくれてよかったです。もしも認めてくれないのであれば教育委員会にでも報告して懲戒してもらうつもりでしたから」
笑顔で校長先生は恐ろしいことを言っていた。
将軍もその言葉を聞いて恐れおののいていた。
そして、俺達に言う。
「お前、良かったな。校長先生に感謝しとけよ」
そのままふんと言って校舎の中に戻っていった。
校長先生に言われて仕方なくという雰囲気を思いっきり醸し出していた。何だか、最後まで納得いっていないことを考えるとこの先が怪しい再び野球部による独占が始まりそうだが、一応しばらくは安泰だろう。これも俺達の活動の一定の成果と言っていいはずだ。
「川波君だよね」
校長先生が声をかけてきた。
「はいそうです」
「あの様子を見ると小泉先生はあまり納得のいっていないようだから苦労すると思うけど頑張ってくださいね。あと、君達に対する処分は特に行わないことにしました。これをもしかしたら正々堂々とした野球勝負ではなく暴力で訴えるなどしていたら厳しい処分をしなくてはいけなかったのでそのあたりは良識にまかせてくれてありがとう」
「いえ、校長先生の寛大な処置には感謝します」
「そうか。では、これからも部活も学問もがんばってください。この学校の校風は文武両道ですから」
そう言って、校長先生も校舎内へと戻っていった。
「はあ、終わった」
「お疲れ、川波」
「お疲れ!」
陸上部のメンバーが集まってくる。
みんな俺にそして、俺達にお疲れと言ってくれた。これで、俺達は正々堂々と部活をグラウンドですることができる。目指すのは、陸上部として関東大会に行くこと。俺達ならできる。みんな力はあるから。あとは、このグラウンドで切磋琢磨してがんばるだけ。
そうこれは、俺達がグラウンドで部活をするまでの闘争史──。
これで、この話は終わりです。私は、このあとがきという欄があるのでとりわけあとがきだけの回を作るといったことはしたくありませんので、ここであとがきをさせていただきます。
この話は社会問題シリーズ第4弾です。今まで政治がテーマであった社会問題シリーズの中で初めて政治以外がテーマとなったものを作りました。そして、今まででもっとも長い話になりました。自分でも予想外です。ここまで長くなるとは思っていませんでした。感想までいただいてしまい本当にうれしい限りです。
この作品のズバリテーマは、高校野球が何でこんなに優遇されているのだろうかです。私は陸上部であったので高校のグラウンドを使うことがほとんど使うことができなくていつも野球部が使っていました。それに対して大変苛立ちを覚えていました。もっと、陸上部に使わせてくれてもいいじゃないか。そして、当時の野球部の顧問がこの将軍のモデルになった先生です。実際は、生活指導も担当していたのでここまでの悪役といったイメージになりましたが、まあ怖い先生でしたよ。頑固でしたし笑でも、そこまで悪い先生ではありませんでした。ただ、野球部顧問というところが私のポイントを減らしていたのでしょう。また、自分の身の回りの話が話題となっていましたが、ほかにも今陸上100mで最も期待されている桐生選手がグラウンドをうまく使えていないという話もありました。そのこともこの話を書くきっかけの1つです。
長々と書きましたが、ここまで読んでくださった皆様方本当にありがとうございます。




