第11話 月曜日の朝練
県立中川高等学校。
それが俺の通う高校の名前だ。県内ではトップ層に当たる進学校というわけでは別段なく、一応は進学校と言われているが中流クラスの学校である。ただ、それでも2~3年に1度はあの旧帝国大学の中でも最大の難関、この日本を代表する東大に現役生を送ることもある。それに毎年旧帝大の北大、東北は必ず出している。だから、進学校とも言われているわけだ。中川市という県の中央に位置しているため県の北、南、西からと各地から生徒が通ってくる。
ちなみに男子校。共学校ではない。そもそもこの県には共学校というものが存在してない。進学校の中ではの話だが……。
さて、そんなことよりそろそろ自己紹介をしたいと思う。
俺の名前は川波重。
2年4組出席番号12番。誕生日2月12日。血液型A型。身長171センチ、体重58キロ。好きな食べ物ハンバーグ。嫌いな食べ物漬物。好きなこと陸上の長距離特に5000m走。陸上部所属。
嫌いな先生
将軍こと大泉先生。
これが俺のプロフィール的なものである。
さて、いよいよ物語をはじめていこうじゃないか。
◇◇◇
月曜日。
ついに決戦の日になるかもしれない。
将軍を倒すために俺達は動いていた。
俺は昨日のオフを満喫させてもらっていた。それもこれも清田のおかげだ。清田は何か作戦を考えると言っていた。
あいつは頭がいい。何か思い浮かんでいるに違いない。
朝練が月曜日なのである。
あいつは何を考えているのだろうか。
それを考えながら自転車をこいで学校に向かっていた。
学校に着いた時刻は7時。
いつもよりもかなり早く着いてしまった。7時20分に着けば上々なのでどうしてこんなにも早くなってしまったのだろうか。俺の心の奥底にある浮いた気持ちが早くに着かせてしまっただろうか。
まあ、そんなことを考えても仕方がない。
7時に着いたということは部室には誰もいないはずだ。
1階の事務室は7時に開く。そこにある部室のカギを取りに行く。
「すいません、陸上部の部室のカギを取りに来ました」
「はいよ」
俺は事務員さんに向かって、そう言う。
事務員さんは、俺の言葉を聞いて陸上部の部室のカギを取ってくれた。
部室のカギを取った後は、部室へと向かう。
部室を開けてから左手にはめている腕時計で時間を確認する。まだ7時8分であった。誰も部室に来ていない。ここまで早く来たのはいつ以来だろうか。俺の傾向であるが、1年の頃の集合はとても早く来るのだが、学年が上がるにつれて集合時間ぎりぎりまで来ないということがある。これが、先輩として威厳が高まっていることからの心の余裕なのだろうか。
それともただのクズなのだろうか。どっち等にせよ、今はその話はどうでもいいか。
部室で、一人床にポツンと座っていた。
少し時間が経つ。すると、清田が来た。もちろん一緒に富田もいる。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
「おはようございます。川波先輩」
俺のあいさつに清田そして富田が返事をする。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはよう」
「おはようございます」
富田が着いてから、次々と長距離の部員たちが集まってくる。
7時23分を俺の腕時計は差していた。
この時間に全員が集まっていた。それはこの代になってから初めてのことではないだろうか。みんながみんな時間にゆとりを持っていつもより早く来ていた。いや、時間にゆとりがあったのではないはずだ。逆にずっと気になっていたのだろう。今日が天王山だから。
部室は狭い。
この時間に全員来ることを想定していなかったため窮屈だ。部室の入り口の全員のランニングシューズを入れるスペースと靴を履くスペースはとても狭くて靴下のまま部室の外に行かないといけないぐらいになっていた。
「おはよう」
そこに沼宮内先生が来た。
先生が7時30分に来るのは史上初めてだ。史上と言ったが、それは俺がこの陸上部に入部してからの話だ。
でも、それほど珍しいことなのだ。
沼宮内先生も気が気ではないのだろう。
みんなが心配している。この陸上部と野球部との抗争を。
「では、朝練は今日はフリーにする」
沼宮内先生は、それだけ言うと職員室に戻った。
気が気ではないというのはどうやら本当らしい。そして、俺達が部活に集中できないと判断したようだ。だから、朝練を事実上休みにした。本来なら昨日言うことであるが、朝に話し合えと言うことみたいだ。
先生が職員室に帰ってから俺達は部室に集合した。
もちろん、話のテーマは決まっている。
清田が話し始める。
「みんな、今日が決戦の日だ。今日ですべてを解決させてみせる」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
清田の言葉に俺達は叫ぶ。
「で、具体的にはどうするんだ?」
森水が言う。
「ああ、そうだよ。清田何かいい案が思い浮かんだんだな」
射水も続けて言う。
「そうだな。さすが清田」
まだ何も言っていないのに池山は清田をほめたたえる。順番が逆であるんだが……だが、誰も池山に突っ込みを入れない。それほどまでみんなが清田に期待しているのだ。
「ああ、どうにか案は思い浮かんだ。案はこれだ。将軍については頑固で人の話を聞こうとしない傾向がある。だからこそ、将軍相手に何か勝負を挑むことにした。勝負に勝てば素直に認めてくれるだろう。すでに、野球部の部長には話をしてある。今日の部活の時間は野球部とのグランドの使用権をかけた野球の試合だ。将軍もほかの部に負けたとなれば自身の指導がダメダメだということが分かるだろう。さすがにそれすらわからないバカではないと信じたいが」
なるほど。
勝負をするのか。
しかも勝負の内容は将軍が直接指導をしている野球部と。清田はよく考えたと思う。将軍は自身の指導内容に満足を持っている。中学時代に強かった友達がうちの野球部に入ったのだが、将軍に矯正をさせられて変なフォームになり弱くなってしまった、やりずらくなってしまったと愚痴を言っていた。
「で、野球部と対決をするのは俺達でいいのか?」
「いや、わかっていると思うが今回の件には同じグラウンドを奪われている部活のサッカー部にも協力してもらった。さらにはたまにグラウンドを使うラグビー部も協力することになった。この3部活に加えて油井先輩ら3年生の反将軍派の人たちも参戦してくれるみたいだ」
「わかりました。で、清田先輩。俺達からは何人輩出するんですか? それだけ大勢いるのならば陸上部からはあまり出ないということですよね。清田先輩は中学時代野球部ですから参加するのは確定としてあと陸上部からは誰を出しますか?」
啓太が言う。
陸上部からは誰が試合に出るのか。これは結構大事な話だ。絶対にこの勝負に勝たなくてはいけない。そのためにはなるべく野球経験者や、野球を遊びでもしたことがある人、運動神経のいい人など勝負に持っていけるような人を選ばなくてはいけない。だから、陸上部からは誰が参戦するのか重要な話になる。
「それについてはもう決めてある。まずは、陸上部の部長の田澤には陸上部の代表という形で出てもらう。あとは、野球部経験のある長島かな。それと川波ももちろん参加だからな」
「えっ!?」
清田のその言葉に俺は驚いた。
どうして俺が野球をすることになっているんだ。そもそも俺は野球なんかできないぞ。
「いや、お前が今回の騒動のきっかけを作ったんだから責任を取って野球して来いよ」
「まあ、そうだけどさ……俺、野球できないぞ」
「こういった何かをかけているときほど人は強くなるのさ。だから大丈夫さ」
「どこからそう言った根拠が出てくるんだよ」
俺は呆れて言い返す。
「波ちゃん頑張ってね」
「頑張れよ」
「頑張れ!」
池山、射水、森水の3人が俺のことを応援する。ますます逃げることができない状況を作られてしまった。
はぁ。
素直に試合に出るか。
「分かったよ。出ればいいんだろ」
「素直でよろしい」
他の全員が万年の笑みでにやり計画通りとも言ってるような表情をしていた。完全にほかの奴らの罠に俺ははまっていたようだ。
まあ、出る以上は全力でやる。
さあ、試合は夕方だ。
さあ、次回でついに将軍を倒せ! も最終回です。社会問題シリーズで最も難産となってしまった作品を無事終わらせて見せます。




