Dogging;2
蝶々ヒラヒラ比良の坂、転げて墜ちるは何処へか。超々多角の邁の舞、くるりくるくる繰るは誰ぞ?
天が地返り宵ふらり、穿って鵜断れて更に飛べ。
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<<slave_4 Down>>
光に貫かれた機関から火が上がる。それは間も無く、音の壁に自ら分解され形を失って行く。文字列の後に他の無人機の`目`を通してそれを確認すると、彼は落ちて行くそれに最後の命令を与える。
<<give_controle `ray`>>
落ち行くものはそれを送られたことを確認するとハッチを開いた。全弾放出。点火されたそれらの群れは送り主へと向かい、同時にそれを成し遂げた親機は失速し、遥か下へと落ちて行った。
カウントダウンは2:12。中心へと向かいはじめ僅か48秒で6いた無人機は2に減り、更に残った弾もほんの僅かだった。いいや、あるいはそれで済んでいるのは僥倖と言ってしまっても良い。唯一の有人機、すなわち彼の乗った機はその役割から武装よりも電子機器類に積載量が割かれている。優秀なそれの捉えた`敵性`反応は220。全てが彼を射程内に捉えているわけでは無かったが、量の差は圧倒的だった。僅かに余計な時間をかければレーダーの光点全てを相手にしなければならなくなる。そしてそれはできるはずも無い。だから、彼は無人機を盾に矛に前を守らせ、最高速で`中心`へと向かっていた。
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くそ、と彼は毒づいた。勝てると思ってやったのでないにしろ、まさかここまで短時間で無人機を持っていかれるとは考えていなかった。`中心`まで最高速であと72秒。このままでは無理か。
<<コントロール下のrayを敵性反応へと誘導開始>>
<<オフライン。ハックチャネル開放。あと54>>
<<敵性反応6、接近中>>
<<ロックオン警報。数24。`チョーカー`作動。ハックチャネルあと30>>
<<敵性反応へのミサイル誘導開始>>
本体に火力をほとんど持たない有人機は、その自衛のほとんどを無人機とECMによるミサイルのカウンターによって行う。そしてそれはこと無人機に対しては圧倒的な力だった。たった一機の有人機は、ただその無人機にかけられた首輪においてのみ百の無人機を上回っている。だから無人機との戦闘で有人機が負けることは有り得ない。真っ当ならば。
<<ロックオン警報。数38>>
<<敵性飛翔体の掌握に失敗>>
<<ハックチャネル限界数オーバー>>
<<slave_5_6にrayが向かいました>>
<<slave回避行動に移行>>
しかし、これは真っ当が相手では無く。
<<更に飽和攻撃、回避不可能>>
故に、有り得ないことは有り得ない。
<<slave 5_6 Down>>
今まで用いていた目が捉えていた景色が二つ消え。
<<目標地点到達まで推定64sec>>
空いた隙間に、その文字列だけが主張するように大きく映った。
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