Dogging;3
ただ高くただ早く空叩き、うち震えうち砕き空歩き、意味無く弧描き空泳ぎ。
貴方と彼方の上の空、凪いで薙がれた啼く声が、私の耳に反射する。
此岸彼岸を渡つ身よ、銭が無くるば只泳げ。
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多重アラート。発射された高高速度ミサイル、通称`ray`の大群に視線を走らせると、それに沿うようにハッキングが行われそれらは`敵`に打ち返された。貫かれた`敵`は爆発を起こす。しかしアラートは止まらない。マニュアルでは間に合いそうも無かった。最近距離にある飛翔体をハッキング対象にするようにモードを変え、彼は最速でそこへ辿り着くルートを取り始めた。
A/B出力80%。対地速度マッハ2.6。高度28058ft。ほんの僅かに揺れているが、驚くほどに安定している。バイザーから見える機体の各部には何の異常も無い。盾と矛、言わば手足を無くしたが、それでも羽には、飛び行く機には何の支障もないようだった。
相変わらず鳴り続けるアラートはオートで処理され、それら全てが無力化された旨が記されて行く。6機の手足を守っていたその見えない手は、しかしたった一機を完全に守りえていた。少なくとも、今のところは。しかしどうやら彼のレーダーはその先はそういかないことを示し始めていた。
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ああ、チクショウ。敵に行き先が完全にバレてやがる。もっとも、ここまで真直ぐ飛べば当たり前ではあるんだが。
レーダーに映える光点が侵攻ルートをふさぎ出す。完全に`壁`ができるまで想定残り時間32秒。更に速度を上げたいところだったが、これ以上のアフターバーナー出力にはリミッターが掛かっている。機体ではなく、中身が保たないからだ。特に無人機が発展してからは最も高く、最も脆い、そのパーツを守るためのリミッター。だが。
この場において、そんなものは意味が無い。辿り着けさえすれば良い。
それを眼で機に伝える。
リミッター解除。
≪all manuva limitter releace≫
最大戦速。
≪maximum speed≫
機械が情報を無駄無く、ミス無く受け取った旨が視界に記されると、途端アフターバーナーに注ぎ込まれる燃料量が爆発的に増えると同時に、僅かに揺れていた機体のブレが止み、代わりに猛烈な圧力で全身が後ろへ押されるのを感じた。
無人機にはこの双発エンジンは搭載されていない。必要が無いからだ。単発で十二分に有人機に出来ない機動を行える`消耗品`には余りに高価なそれは、故にこの場において有用な武器になった。
ミサイルロックを報せるアラートに、燃料を急速に消費していることを伝えるアラートが加わる。しかしどうやらそれが示す数値は目的地までは十二分だ。
追い付き追い越せ椋の群れ、向かうは向交うの椋の棟。交わせ躱すは微火よ、盗み火返れ、火帰おろう。警告鴇告耳に鳴き、赤が目に常入るなら、射成すを往なせ、行くが為。
アラート、アラート。追い越す光に包まれてはいるが、僅かに機動することでそれらを躱していく。本来の機動からいえばほんの僅かな、けれどその速度では余りに大きな圧力が、意識を上へ下へと引きずり出そうとする。バイザーに写る`光`の予想の軌道から僅かに僅かに身を逸し。軌跡に奇跡が截り然って、そうして矢鷹は群抜けて。何も無き場所へ辿り着く。
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