folklore;4
さるはほねふり
動き蠢く雲海の、浮き世の浦の潮風よ。
泳ぎ渉れば深沈み、越えて往かねば真逆様。
跳ねて渡ったわだつみを、はてさて己は何故越えた?
-----------
`それ`は万能だと思われていた。もちろん演算-もしくは観測-で磨り減りはしたけれど、増やせるから問題無いと思われていた。だから、増やして使って使い切り、そうして増やしてまた捨てた。
`それ`はある種の触媒だと考えるものもいた。ある一定の物質に対してではなくて、あらゆる反応を触媒する-もはや完全に絵空事と言われた-錬金術の産物なのだと言うものまでいた。
ともあれ、`それ`はヒトが見出した、最も有用な一つであることは間違なかった。`それ`を通せば大抵のことを知る事ができた。`それ`があれば瞬く間に欲しいものができた。`それ`があれば。`それ`さえあれば。磨り減りながら、増えながら。`それ`の為した事は莫大だった。
しかし有史以来、いいや、生物が生まれて以来、新しいものを得た生物が単純に有利になったことなど1度たりとも無い。
`それ`は違うのだと、我々は今度こそ完全に有益な進化を得たのだとある研究者などは声高に吠えた。`それ`をもたらしたのは神なのだと、我々はその御心にかなったのだと。
或いはその発想は正鵠を射ていた。ほんの幾分かではあるけれど。
ひつじはゆめみる