↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きみの頬をなでる風になれたら  作者: 朝倉いろは


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/55

第四十六話 祝福の歌

 予想だにしなかった再会の後、漏れ出す殺気にあてられたのかレグルスが泣き出し、アシュベルとアリシアはハッと我に返った。また明日にでも話そうと、アリシアの家を後にしたアシュベルは、ルーシィと手を繋いだまま、ぼんやりと歩いていた。鼻を啜る音にふと隣を見れば、ルーシィはポロポロと涙を流していた。

「ごめんな、ルーシィ…」

「良いの…アリシア様、酷い目にあって可哀想…でも…生きてて良かったね…」

「一体何が起こってるのか分かんねぇよ…正直、混乱してる」

「ねぇ、旦那…あたし、大丈夫だからね。旦那がアリシア様を選んでも、あたし…」

「俺がアリシアを選ぶことなんか、ねぇよ」

 ルーシィには散々心情を吐き出してきた。出会いからして、アリシアが結婚したことに自棄を起こしたのがきっかけだ。いかにアリシアのことが好きだったか、本人には言えなかったことを全部知っている。アリシアが生きていたことを知った今、ルーシィがそう言い出すのは無理からぬことだった。そしてそれは、アシュベルが恐れていたことだった。だからこそ、アリシアと二人で話すことはしなかったのだ。何を話すのか、全部聞かせたかった。

「俺を客みたいに、呼ぶなよ」

「ごめんなさい…」

「言っただろ。アリシアは親友だけど、三番目だって。あいつには好きな奴がいるし、俺の一番はルーシィだよ。好きなんだ。信じてくれ」

「…うん」

「親友を物みたいに扱われて、そりゃ怒るだろ。死んだことにするなんて、尋常じゃない。そんなこと考えないだろ、普通は」

 剣技の試験で主席を勝ち取り、アシュベルはアリシアに剣を捧げた。だが、その剣は主を亡くしたまま時が過ぎ、新たな主をルーシィにと考えていた。こうなったからには、ヴィンセントとリヒトとやらに会い、真相を糺さねば剣を鞘に納められない。

 アシュベルはルーシィの手を引き、神殿へと向かった。神殿では、丁度神徒達が音楽を奏でるような祈りを捧げているところだった。

 二人並んで、一番後ろの席に座る。美しい祈りの声を二人で聞きながら、アシュベルは先程露店で買った指輪を手に取った。

「ルーシィ、好きだ。俺と結婚して欲しい。俺の妻になって下さい」

 真っ直ぐにルーシィを見つめると、ルーシィは両の目から涙を溢れさせて俯いた。

「なぁ、返事は?」

 傷だらけの大きな手で頬を包み、上を向かせる。指で涙を拭った。

「…でもやっぱり、ちゃんとした貴族のご令嬢の方が…」

「まだそんなこと言うの?」

 アシュベルは、そんなことは聞きたくないと言わんばかりにルーシィに口付けた。

「お前が躊躇するのも分かるよ。身分とか、貴族だ平民だって考えてしまうのも…貴族社会は面倒なことも多いし、俺だって社交は苦手だから夜会にも出たことないしな。でも…そんなこと抜きにして、俺はルーシィが良いんだ。俺を…選んでくれないか」

 ルーシィはアシュベルの手を握り、一度目を瞑ってゆっくりと開いた。

「あたしをあなたの妻にして下さい。あたしの夫になって下さい」

 小さな声で、だがはっきりと言葉にしてくれたルーシィを抱き締め口付ける。指輪を薬指にはめ、その指にキスをした。同じように、ルーシィもアシュベルの薬指に指輪をはめてキスをしてくれた。

 二人見つめ合って笑顔になる。まるで夫婦神が祝福してくれているような、神徒達の美しい歌声が響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。