50 どうやら婚約者に愛されているようです
ギルツハークに嫌われているかもしれない。
そう勘違いをして、婚約を解消して、恋人になって、学園を卒業した。
学園を卒業してから、あらためて婚約をして半年後。
今日は、私とギルツハークの結婚式だ。
「結局、結婚するんかいっ」
アルベルトがつまらなそうに、私のウエディングドレス姿を見ている。
「途中から、アルベルト様も応援してくださっていたじゃありませんか」
学園を卒業して、アルベルトもフレイアと婚約した。
「そうなんだけどね。…ワンチャン、あるかなって思ったこともあったんだよ」
「あら。そんな冗談を言うなら、フレイアに言いつけますよ」
私もフレイアとは仲良くさせてもらっている。
「あー、勘弁して。フレイアは君とは違う意味で怖いんだからね」
アルベルトがあたふたしている。
私とは違う意味とは、どういう意味だろう?
「ちょっと…花嫁の控室で二人っきりにならないでくれる~」
フレイアが扉の外からのぞいて、アルベルトは慌てて出ていった。
なんだかんだ、お似合いのカップルだと思う。
なにより、最初から言いたいことを言えてるところが羨ましい。
ここまでくるのに、ずいぶん遠回りをしてしまった。
私が婚約を解消したとき、ギルツハークが頑張ってくれていなかったら、今日という日は迎えられていない。
スタッフの方が「そろそろお願いします」と言って、父が目を真っ赤にして入ってきた。
「やっぱり、結婚はやめるか?やめるか?」
きのうから、何度もそう言って私を困らせる。
「もう…結婚しても、私はずっとお父様の娘ですよ」
そう言ってなだめるしかない。
ヴァージンロードを歩いて、ギルツハークの手を取った。
大泣きする父をみて、ギルツハークが苦笑いをする。
「…?」
どうしたんだろうと、ギルツハークを見ると「覚えてる?」と尋ねられた。
「婚約をした後、俺が君に『どんな男性が好き?』って尋ねたら『お父さんみたいな人』って言ったの」
ギルツハークにそう言われて、そんなことを言ったかもしれないと思った。
でもあれは、5歳だったし。
周りに男性といえば、父だけだった。
「俺が婚約したいって言いだしての婚約だったから、せめて、君の理想の男性になろうと思って。君のお父さんみたいな人になろうって思ったんだ」
ギルツハークがもう一度、父を見る。
「質実剛健、寡黙なイメージだったんだけど…人前で、あんなに泣く人だったんだね。しかも、愛妻家で娘にメロメロって…イメージと違いすぎる」
ギルツハークがそう言って、私の手を握った。
父の家の外でのイメージは、質実剛健で寡黙な人で間違いない。
そう言われると、婚約を破棄したころのギルツハークは、質実剛健で寡黙な人だったかも。
「ふっ…」
笑っちゃいけないと思ったのに、吹き出してしまった。
「え?…なに?」
ギルツハークが驚いた顔をした。
「…すみません。…私、ずっと、ギル様に愛されていたんだなって、ようやくわかって」
そう言葉にしたら、涙が溢れた。
「俺の女神は、ずっと君だけだよ」
ギルツハークがすごくクサイセリフを言うから、また笑ってしまった。
ギルツハークに愛されることはないと思っていたのに、ずっと愛されていたなんて。
私は、察するのが苦手なようだ。
だから、これからはしっかり、ギルツハークに気持ちを伝えていこうと思う。
父と母のような夫婦にはなれないかもしれないけど。
これが、私とギルツハークなのだから。
「婚約者に嫌われているようなので私も別の恋を探してみようと思います」、完結となります。
こんな自慰小説を、多くの方が目にとめてくださるのが嬉しくて、本当に執筆の励みになりました。
読んでいただいた皆さま、ありがとうございます。
普段は18禁の小説をメインで書いております。
18歳以上の方はよければ、のぞいてみてください。




