49 やはりギルツハークとはうまくいかないのかもしれません
部屋に帰って、ベッドの上で考える。
ギルツハークとの婚約を解消しようと思ったときと、気分が似ていた。
やっぱり、ギルツハークとではうまくいかないのかもしれない。
私がもっと素敵な女性だったらよかったんだろうか。
ギルツハークの気持ちを察することができて、暴走しないで。
ギルツハークの考えの全てを肯定できる、そんな女性だったらよかったのか。
心配してくれているってわかっていて、あんなことしか言えない私が悪いのか。
折れなかった私が悪いのか。
…でも、それが全てできたとして、それって、どうなんだろう。
ギルツハークの気持ちを察して、ギルツハークの考えを全て肯定して、ギルツハークの思い通りに行動する。
自分をなくせば、できなくもないだろう。
でもそこに『私』はいない。
息を吐く。
明日、お別れを伝えようと決心した。
翌日、神妙な面持ちで家までギルツハークが迎えに来てくれた。
「ギル様。少しお話があるんですが、よろしいですか?」
そう切り出すと、ギルツハークが頭を下げた。
驚いて、彼を見る。
「きのうは、ごめん。ディアの言うとおりだ。俺が暴走してしまって…その。ごめん」
あまりにも素直に謝られて、きょとんとしてしまった。
「でも、わかってほしいのは…本当にディアのことが心配だったんだ。束縛するつもりなんて、本当に、これっぽっちも…いや、これっっぽっちもなかったんだ」
そう言って、親指と人差し指で隙間を作って見せる。
「これからは、ディアがひとりでいたいって言うなら、その…近づかないように…我慢するし…」
ギルツハークが面白くなさそうに唇を突き出す。
これは、納得してない。
「ディアが、友達といたいから、俺に席を外してほしいっていうなら…外すから」
ギルツハークがさらに面白くなさそうな顔をした。
うん、全然、納得してないんだろう。
それでも、私の気持ちに寄り添おうとしてくれたことはわかった。
「…ありがとうございます、ギル様。私もきのうは強く言いすぎてしまったと反省していたんです」
そう言って、ギルツハークの手をとる。
「いつも、私のことを心配してくださっていたんですよね。ありがとうございます」
そう言って、微笑んだ。
また、私はひとりで結論を出してしまうところだった。
ちゃんと話し合わなくてはいけないと学んだばかりなのに。
私は、まだまだ未熟だ。
学園に向かいながら、トイレにはひとりで行きたいこと、友達と大切な…女性同士でしか話せない会話のときは席を外してもらうことをお願いした。
「ギル様…私と向き合ってくださって、ありがとうございます」
そう伝えると、ギルツハークは、ちょっと恥ずかしそうにして頭を掻いた。




