01 どうやら婚約者に嫌われているようです
もともと、好きかどうかはわからなかった。
ただ、家族から「今日から彼があなたの婚約者よ」と紹介されたから、そういうものなのだろうと思っていた。
学生生活を終えれば、結婚するものだと、ついさっきまで思っていた。
でも、そう思っていたのは私だけだったようだ。
彼は私のことが好きではないらしい。
婚約もなかったことに、したいらしい。
そう、御友人と話しているところを、うっかり聞いてしまった。
「違うんだ、ディア…」
ギルツハークは私が聞いていたことに気がついて、顔色を変えた。
ギルツハークでも、あんなふうに慌てることがあるんだと、少し面白かった。
私の婚約者、ギルツハークは、私といるときはいつも無表情だ。
おしゃべりもほとんどしないから、何を考えているのかわからない。
それでも婚約者だと思っていたからおとなしく、傍でニコニコしていた。
この人と生涯を共にするのだから、理解できるようにならなくてはと私なりに努力をしていたのだ。
それなのに…
「クラウディアとの婚約をやり直せればいいのに」
そう御友人に愚痴を漏らしていたのだ。
実はうすうす、気がついてはいた。
私の前では無表情だけど、御友人の前ではよく笑っているし、おしゃべりもしている。
私の前でだけ無表情なのだ。
嫌われているかもしれない。
でも、わずかな可能性として…シャイなだけなのかもしれないと思い込むようにしていたのだ。
思い込みは思い込み。
ギルツハークは、私との婚約を解消したかったのだ。
「ギル…、いえ、ギルツハーク様。そういうことでしたら、婚約を解消いたしましょう」
そう言って、いつものようにギルツハークに微笑んだ。
悔しいから、絶対にギルツハークの前では泣いてやらない。
「だから…違うんだよ、ディア」
ディアとは、私の愛称だ。
「いいのです、ギルツハーク様。以前から、本当はわかっていたんです」
ギルツハークが焦っている理由はわかっている。
婚約は、家が決めたこと。
それを当事者であるからといって、勝手に解消なんてできない。
「お互い、家のこともありますから、すぐにというのは難しいと思うんです」
私がそう言うと、ギルツハークは少しホッとしたようだった。
「ですから、こういうのはいかがでしょう。お互い、本当に好きな人を見つけてしまうんです」
そう、提案した。




