里の掟
里へ近づくにつれて、何段にも層を連なる巨大な里が目に映る。
岩壁が段の周りを囲い込み、下から上の段にかけて家屋が広がっている。
「す、凄い・・どれくらい高いんだ。」
「凄いだろう?ここまで巨大な人里は、グラードの中でここだけだ。」
壮大な景色に思わず言葉を無くす。
この様な光景は、そうそう見れるものではないだろう。
「でも、出入口が無いぞ。このまま家がある所に入るのか?」
「本当ですね、見当たらないです。」
ティームとアリアが里の周りを見ている。
確かに岩壁に囲まれており、出入口となる様な場所は見当たらなかった。
「あるぞ!今から現れる!」
「あ、現れる・・?」
ルパートが頭を傾げる。
「ガオ!」
マーサがガオに呼びかける。
すると、ガオが雄叫びをあげた。
それに呼応する様に岩壁の表面が扉の様に開き始めた。
「カモフラージュか、凄い・・。」
「その通り、ドラゴンがいないと入れない様になっている。」
ガオが岩壁で出来た扉の中に入る。
中には、ドラゴンが数匹と人が複数人いた。
ガオから降りて周りを見渡す。
どうやら整備場の様な空間であった。
「マーサ!」
男性が駆け寄ってくる。
マーサと似た装備をしていた。
「一人で出ていきやがって!どれだけ心配したか!」
「ごめん、バウアー。ジッとしてられなくて。」
「もう少ししたら追いかけ様としていたんだ。ともかく、無事でよかった。」
「心配かけたね。でも、平気だよ!彼らが奴らを撃退してくれたんだ!」
マーサが、こちらの方を親指で指す。
「彼らは?」
「彼らは、冒険者パーティーのクロノス・クロス。フレア協会に所属しているそうだ。」
「フレア協会!そんな人達がどうして一緒に・・まさか。」
「その、まさかさ。王龍の卵を取り返してくれたんだ。」
「本当か・・!あの集団から取り返したというのか!・・感謝しかしきれない!皆さん、ありがとうございます!」
深々と礼をされる。
「いやいや、突然襲われたから迎え撃っただけですよ。」
「それでもです、里の宝とも言える卵を救っていただいたなんて・・あ、遅れました。私の名前はバウアー。マーサと同じドラゴンライダーです。」
「よろしくお願いします、ルパートです。」
「ルパートさん。それで、肝心な卵はどこに?」
「そ、それなんですが・・。」
ルパートは、ティームの方を向く。
視線に気づいたティームは、背中に背負っていた袋を正面に出して開ける。
すると、勢いよくウズタマがバウアーの顔に貼り付いてきた。
「むぐっ!」
「うおっ!ウズタマ、何やってんだ!」
ティームはバウアーに貼りつくウズタマを顔から取る。
「アハハ!元気な子だな!こんなに小さいのに人懐っこい子龍は初めて・・ん?」
バウアーが何かを察したのか喋るのを止める。
「この兜の様な頭に、渦模様の身体。里に伝わる王龍の特徴とそっくりだ・・まさか。」
「その、まさかだ。こいつは、ウズタマ。お前らの言う王龍の卵から生まれたんだ。」
「え、ええええええ!!」
「その反応になるよね、そりゃ。」
マーサが、バウアーの驚き様を見て苦笑いする。
「マーサ!ど、どうするんだ!」
「どうするんだって言われても生まれたから、どうしようも出来ないよ!」
「それはそうだが・・この子、誰を親だと思っているんだ!?」
バウアーは、酷い慌て様だ。
やはり、ただ事ではないらしい。
「おそらく、俺だよ。」
ティームが自分自身を名指しする。
「こ、子供じゃないか・・。」
「子供じゃない!大人だ!」
「え!あ、申し訳ない・・しかし、長に何て言えばいいんだ。」
「私から伝える。とりあえず、今から報告しに行くつもり。」
「・・そうか、分かった。それなら、俺は皆に状況を伝えてくる。」
「分かった。」
「それでは、クロノス・クロスの皆さん、またどこかで。」
そう言うとバウアーは、奥へと走っていった。
「マーサさん、ウズタマが生まれると何か不味い事でもあるのか?」
マーサやバウアーの反応と言い、何か事情がありそうだ。
「王龍の卵は里が管理しているのは知っているよね?里には、卵が孵った時に決められている掟があるんだ。」
「掟・・?」
「この里の長は、昔からドランと言う一族が親から子供へと代々引き継がれてきたんだ。」
「ドルトン・ドランですね。」
アリアが話に入ってくる。
「里長にとどまらず、里のドラゴンライダーを纏める実力者と聞いたことがあります。」
「よく知ってるね、そうだ。その昔、ドラン一族の祖先が王龍に選ばれて里長を代々引き継いできたと言われている。」
「へえ、王龍に。」
ティームがウズタマを見つめる。
「ただ、王龍は選ぶ時に「我が子が生まれたら、今度はその子が次の里長になる一族を選ぶ事になる。」と言ったと伝えられてる。」
「え。」
ルパート達が何かを察した様に口こもる。
「なので。里では、こう解釈をしてきた。卵から生まれて、一番懐いている人に里長の座を引き継がせると。」
「え、え。」
皆の視線が、ティームに向く。
「なので、里の意向に従うなら答えは一つ。」
「・・まさか。」
ティームが汗をかき始める。
「その、まさかよ。ティーム君、あなたが里長になる。」
・・・。
「え、ええええええ!!」/「え、ええええええ!!」/「え、ええええええ!!」
お読みいただき、ありがとうございました!
まさかのティームが里長に・・!?
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