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漆黒の聖騎士  作者: 鷹峰
三、紅蘭の舞姫
24/39

三、紅蘭の舞姫(25)

「とんだお人好しを拾ってきたのね、ジャスティン」

 カトレアはやや呆れた面持ちで、ロウを眺めている。

「ふふ、イイ男でしょ?」

「……うげ。男に言われても嬉しくねっつの。

 で?ほかに仲間の手がかりはねぇのか?」

 なんとはなしに尋ねてみるロウに、カトレアは空を仰ぐ。

「そんな都合よく情報なんてつかまらないわよ。

 まあ……シュヴァルツ団長もミンも、そうそう死んだりしないとは思うけど……」

「シュヴァルツ??」

「ああ、ウチの芸団を作った人よ。

 お酒ばっかり飲んでたけど、子供たちにはほんとうに優しかったわ。

 いまは大陸のあちこちで、ちいさな子供が笑顔を失ってる。そんな子たちがひとときでも笑顔を取り戻せるように――アタシたちは、旅をしているの」

 目を細める吟遊詩人。視線はどこか遠くへ向け、静かに、しかし確りとした声で語る。

 そ、か――と、ロウはやや微笑んだようだった。

「ほんじゃ、そろそろ行くか!」

 彼はひとつ頷くと踵を返し、かしゃんと得物を鳴らす。

「行く……って、何処へ?」

「領主館に決まってんだろ!

 この落とし前はキッチリ着けねぇとな!」

 訝しげに問いかけるブラック。一方で、

「そうだな。騒ぎに気づいて守りを固められても厄介なことになる。

 噂に聞けば、伯爵は横暴の限りを尽くしている。溜まった年貢は納めるのが道理だ」

 ラグナは街の中央に聳える屋敷を見据え、表情を険しくした。

「よし、話は纏まったな。

 っつーわけで、お前はその姉ちゃん連れて宿屋に戻れ」

 ぽん、とロウの手がブラックの肩を叩く。

「なんだって!?そんなわけに――」

「明らかに動きが悪りぃだろーが。

 元々、目だって視えてねぇんだ。ドジ踏んで死なれたら困るんだよ」

 ぽい、と。

 掴んでいた肩を押し返す。

 数歩たたらを踏んだ盲目の青年を押しのけ、カトレアが割って入る。

「ちょっと待ちなさいよっ!

 なんであたしが宿屋に行かなきゃならないのよ!?あのエロジジイ、一発ぶん殴らなきゃ気が済まないわ!!!」

 少女の剣幕に圧され、思わず半歩下がるロウ。

 しかし、

「ば、……馬鹿野郎!

 戦えもしねぇ女を戦場に連れていけっか!」

「ロウ。言葉を返すようで悪いが、僕は戦える。

 宿屋に戻るつもりはないぞ」

「アホか!誰かが見張ってねぇと、この女ぜってーついてくるぞ!

 それとも何か?てめーは女を危険な目に遭わせてぇのか!?」

「ちょっと、さっきから女女って……あたしにはカトレアって名前があんのよ!」

「ふ、二人と……いや、三人とも落ち着いてくれ」

 喧々囂々と捲くし立てる様子を流石に見かねて、三人の間に割って入るラグナ。

「僕は、ロウさんの意見に賛成だ。

 戦場にカトレアさんを連れてはいけないし、何より僕等が不在の間にまた追手が来たらどうする?

 彼女を人質にとられる可能性だって、充分にあるんだ」

 静かに諭す相手に、ブラックはなおも食い下がる。

「それは……そうですが、」

「それに、本調子じゃないのだろう?あまり無理をしないほうがいい」

「アタシもそう思うわ。このお転婆、どうせ言ってもきかないもの。

 お守りがついているなら安心だわ。頼んだわね、ブラックちゃん」

 心配そうに顔を覗き込むラグナと、カトレアの頭をぽんぽん撫でるジャスティン。

「――ッ、……判り……ました」

 二人の言葉に、渋々ながらもブラックは承諾した。

「カトレア。ちゃんと待ってるのよ、いいわね?」

「……………………」

 頬を膨らませ、黙ったままのカトレア。

「……、行きましょ、二人とも」

「あ、ああ……しかし、」

 膨れっ面で黙ったままのカトレアを示し、いいのかい?と尋ねる。

 ジャスティンは、いいのいいの――と、少女の髪をふわりと撫でて、そのまま歩き出した。

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