メイが弾けました
今回はマナ視点となります。ご注意ください。
コルクがメイと再びパスをつなぎ、その魔力へと戻っていった瞬間、メイの体中から血が噴き出して倒れ伏した。
「は!?」
「ご主人様!」
ここはカルアの貼った風の結界の内側。それをすり抜けて、私に魔力を感知させず、ユウカにも気配を悟らせずにこのような真似ができるとは到底思えなかった。
では他の可能性は? 毒はメイの持つおびただしい量のスキルの耐性をぶち抜けるほどの物が遅効性で発揮したというのも考えられるけど、ダンジョンで受けた攻撃であればユウカとキャラビーに何も影響がないのも不自然だ。
「って、考察してる場合じゃない! 『ヒール4・改』」
『魔法学園』で研究者気質を持つ方々と一緒に過ごしているうちに自然と私にもうつってしまった、物事に対する考察癖を放棄して、メイの『喰らう瞳』に喰われないように調整した回復魔法を使用する。光や聖属性を一切含まないように改造した魔法は、それらを弱点とするメイにもしっかりと効果を発揮して耳目から垂れる血が止まるも、それは一時的な物でしかなく、すぐに再び血が流れ始めた。
「どうなっておる? 何も攻撃なぞ見えんぞ!?」
「ご主人様、ご主人様しっかりしてください!」
ユウカの瞳がうっすら輝いてメイの様子を見ているけど、この感じだと現在進行形でダメージを受けているこの状況であっても平常であると見えているのだろうね。
『マナ様、回復ではなく肉体、そして精神に対しての防御力を高めるエンチャントをお願いします。それで主様のダメージも減らすことができますので』
「え? 『ガードエンチャント・改』『マジックエンチャント・改』」
驚き、慌てる私たちとは対照的に、『やはりこうなりましたか』と淡々と私に対処法を告げるアンナの言葉に従ってメイに2種のエンチャントを施す。すると『ヒール4・改』を使った時ほど即時ではないがメイが流す血の量が目に見えて減り、メイの持つ回復系スキルによってダメージも引いていくようだった。
「ひとまず落ち着いた、のかな?」
『コルクの溜め込んだ量は相当な物と聞いていますからしばらくは目を覚まさないでしょうが、致命的なダメージとはなりません。ご安心くださいませ』
「お主の言葉を疑うわけではないが、そういわれてもすぐに安心はできんの」
「ひとまずご主人様を屋敷の中へ運びましょう。外で寝かせるよりよろしいかと」
「それもそうだね。アンナ、エンチャントはずっとかけ続けた方が回復が早まるんだよね?」
『はい。現在主様はコルクがこの期間に喰らい、溜め込み続けてきた魔法や魔力を受け取って、それを糧にした成長に体が耐えられず、結果的に回復が追い付かずにダメージを受けている状態です。肉体の強度を。そして魔法を受けるための力をあげることでダメージ自体を減らすことに繋がります。主様であればどこかでスキルが成長するなりして回復が上回ることでしょう』
アンナがさらりと告げる事柄に、あと少し理解が届かないものの、これが成長に体が耐えられていないために起きたダメージということには納得ができた。そりゃ誰かから攻撃を受けたわけじゃないのであれば全員気づけないはずだ。
メイを寝室に寝かせた後で話を聞くことにして、私はメイにかけたエンチャントが長時間続くように次の魔法を用意し始めた。
メイを寝室に寝かせ、メイへの魔法の追加も終えた私たちは、アンナに詳しい話を聞くべく玄関に戻ってきた。
「ひとまずは落ち着いたご様子ですね」
「うん。『エンチャントプロテクト』もかけたから何事もなければ明日の朝までなら続いてくれるよ」
「いや助かるんじゃが、エンチャントの効果を一晩延長させるとかどんな無法じゃ」
「改良したからましにはなったけど本来は副作用が強くて廃れた魔法だからね。私たちは基本高火力で速攻するからあまりそういうことはないけど、基本的にエンチャントが切れるほど長時間の戦いになるなら切れる前にかけなおせばいいんだから」
「軽くなったとはいえその副作用は今の状態のご主人様の害にならないのですか?」
「本来の副作用である魔力の放出ができなくなる効果はなくしたから、追加で魔法を受けにくくなったくらいかな。完全に副作用を抑え込めればよかったんだけど、本質的にはエンチャントを受けた状態で対象の魔力を固定化することによって効果が切れることを防ぐって魔法でね。かけたエンチャントの方じゃなくてかけられる対象に作用する物だからどうもできなくて……。まあ回復魔法は一時しのぎにしかならないって話だったから、エンチャントが切れなければ追加で魔法をかける必要もないでしょ」
「前衛に立つ戦士であればとも思うたが、攻撃のためのスキルも使用不可になりそうじゃな」
「その通り! そこがこの魔法が廃れた一番の理由でね。400年くらい前のとある魔法使いが残した論文で、どういうスキルであればこの魔法が効いた状態でも発動可能なのか調べた物があるんだ。何種類もの従魔も動員した結構大規模な検証で、メイの一番の回復系スキルである『再生』は効果を発揮してるけど、回復効果をもたらす『オートヒーリング』のスキルは効果を発揮しないとか、なかなか興味深くて」
『マナ様、それくらいに。お二方が引いておられます』
ついついハッスルしてしまった私のことを優しい笑みで眺めている二人。やめて! そんな目でみないで!
「それでアンナよ。先ほど成長に体が耐えられておらぬと言っておったがどういうことじゃ?」
「先日、ご主人様のレベルが上がったことに驚いていましたが、それにも関係あるのでしょうか?」
『そこはコルクも半ば賭けだったようですがうまくいっていたようですね。もしかしたらロスはあったかもしれませんが、ここしばらくの間で手に入れた能力値をすべて捧げたとのことでした。しかし、そうもいかなかった物もあったようで……』
「それがメイの元に戻ったところで一気に還元されたということ?」
『ええ。コルクが使ったとあるスキルはすべてを喰らい尽くすことが可能なのですが、コルクには使えず主様にのみ使える別のスキルによって自らへ還元するしかないのです。制御を手放せば関係なく周りのすべてを喰いつくして消え去る。そうなればマナ様も、周りの皆さまも含めて無事では済まなかったでしょう。私もしっかりとは知りませんが、喰らいつくすだけで済めばよく、それまで喰らったすべてを放出してしまう可能性もあったそうです』
アンナが告げた内容は、コルクが私のために頑張ってくれていたということに他ならなかった。
どうもコクトーです。
マナ視点のため職業レベルはなしです。
オープン戦も始まり、もう2月も終わりに近づいてきましたね。花粉がつらい季節が!!(憎)
ではまた次回




