エルフの里の異変です1
後半は里長視点となります。ご注意ください
エルメラさんに研究の素材を献上してから数日が経ち、今日の試練のためにとエンシェントエルフ様のもとを訪れたが、今日はなかなかエンシェントエルフ様からの声がかからなかった。そのまま『再生』で魔力が完全に回復するまで待ってみたがそれでも何もない。おそらく執務室の方にいるとは思うが、以前のように手の離せない仕事中とかであると下手に向かってしまうのもまずい。
とりあえずエンシェントエルフ様からの呼びかけがあるまで待つことにした俺はヒメを呼び、サイコロ肉と引き換えにその頬をむにむにして遊ぶことにした。
「遅くなってしまいましたので直接来てみましたが……その子は?」
ヒメで遊びすぎてどれくらいの時間が経ったのかはわからないが、いつものように声だけを届けるのではなくエンシェントエルフ様が直接やってきた。
「お疲れ様です。これはちょっとやりすぎただけなので気にしないでください」
「ひゃーうー」
最初は単純に頬をむにむに触ったり肉球をいじったりひげを弾いたりして遊んでいたのだが、頬にお肉を詰め込んだ状態で頬をつまんで噛めないようにしたり、噛もうとした瞬間に口を開かせたりとちょっといたずらが過ぎてしまったのだ。そして調子に乗りすぎた結果、反撃にと肉球パンチを繰り出してきたヒメ。
さすがに悪いなという思いと、肉球パンチがしっかりと顎にクリーンヒットして痛かったためにイラっとした思いがせめぎあう中で、どんなもんだい! とばかりにどや顔でこちらを見るヒメを見てしまったのがトドメだった。そこから先はあまり思い出せない。気が付いた時にはヒメの頬は見るも無残な……とは言わないが頬をむにむにしすぎて少し腫れてしまっていた。反省はしている。後悔はしていない。
「ちょっとつついてみてもいいですか?」
「どうぞ」
「かう!?」
抗議でもしているつもりなのか俺の頭の上ではなく膝の上で俺のお腹をぺしぺし叩くヒメの胴を両手でしっかりと持ってエンシェントエルフ様に突き出してみる。じたばたと顔を振って暴れるヒメの頬をうまいこと狙ってツンツンと楽しそうに突くエンシェントエルフ様はとても900年以上生きているようには。
「あ"?」
「すみませんなんでもありません」
当たり前のように思考を読まないでほしいと嘆きつつ誠心誠意謝罪する。あまりに怖かったのかヒメもすっと引っ込んでしまった。
「残念ですね。思ったよりぷにぷにしていて気持ちよかったのですが」
「あー……出てこないですね。すみません」
「いえ、こんなことをしている場合ではなかったのを思い出しました。今日からのダンジョンでの試練は一時中断とします」
「それはいったいどういうことですか?」
「少々状況が変わりましてね。あなたにも手伝ってもらいますよ」
「それが試練の代わりと言うことですか?」
「そう捉えてもらって構いませんよ。まあ断ってもどうせ冒険者として強制徴収されるだけではありますが、その場合は単にBランクの冒険者として扱うことになりますね。例外扱いはなしで」
「強制徴収とはただ事じゃない気配がビンビンしていますが、それが試練と言うことであれば文句はありません」
「よろしい。里長には話を通しておきます。詳しい話は先に転移で向かってもらう冒険者数人とともにギルドで聞いてもらいますが、概要だけ伝えておきます。一度しか言いませんからよく聞きなさい」
「はい」
「今朝のことになりますが、北方のアーディアとの国境付近を警護する部隊から魔王軍の軍勢が姿を現したと連絡がありました。それまで何もなかった平野に突如として大量のモンスターの軍が展開したと。おそらく話に聞いていた転移魔法の使い手の仕業でしょう。森の中は守護龍様の領域と大量の木に阻まれて転移できないからその手前の平野に転移した。すぐには攻めてきていないみたいですがいつ攻撃が始まるかもわかりません。偵察という意味では既に何体か侵入してきたのを始末したと連絡が来てますが油断はできない状況です。もう魔力は回復してますね?」
「待っている間に」
「では一度戻り里長に指示を仰いでください」
「わかりました」
執務室に戻っていくエンシェントエルフ様が完全に部屋から出たのを確認して俺は転移の魔法陣を起動しなおして里長の館へ戻った。
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「……承知しました。すぐにこちらに戻ってくるでしょうし私は転移の準備をしてギルドへのメッセンジャーを頼むとしましょう。戦闘能力はあなた様のお墨付きと思ってもよいのですよね?」
『もちろん。広範囲殲滅、単体戦闘能力いずれも優秀な駒です。前線の隊長には連絡を入れておきますから彼と選抜した冒険者を先に送ることを優先しなさい』
「かしこまりました」
例の彼をエンシェントエルフ様の下へ送り出してすぐ、緊急回線で全ての里長に敵襲の連絡があったのも束の間、エンシェントエルフ様から直接の指示が出された。既にギルドには一定ランク以上の冒険者をとどめておくように使いを出したが既に依頼などに動いている冒険者も多いだろう。
大規模転移による戦力の大量展開。里間の転移によって特記戦力とでも呼ぶような個の実力者を輸送して運用している我々があまり言えた話ではないが厄介な能力が相手にいるようだ。幸い今国内にはAランク冒険者が8名に彼らには及ばないがA-、B+、Bランクに該当する冒険者が百人以上滞在している。大軍では役に立たないタイプの冒険者もいるが彼らにも重要拠点の護衛やはぐれた個体の討伐など役目はいくらでもある。
「さて、気合を入れなければなりませんね」
各所に指示を出しながらエンシェントエルフ様のもとから彼が戻ってくるのを待つ。毎日のようにこことエンシェントエルフ様のもとを行ったり来たりするという馬鹿げた量の魔力と、それを1日とたたずに戻してしまう異常なまでの回復能力があれば転移に結界にと様々な場所で使いたくもなるが、エンシェントエルフ様からは敵に当てる駒としての運用が指示されている。実際に使うのは最前線の部隊長たちかギルド側で選抜した指揮官になる。私は私のすべきことをするのみだ。
敵が転移を活用している以上、この里まで敵がこないという保証はなく、全騎士を動員して町中に目を配る。既にこの場には結界を貼り、探知のための魔導部隊の配置を急がせた。敵をエンシェントエルフ様のもとへは行かせない。
一通りの指示を出し終わり、次々に上がってくる情報に目を通し始めたのを見計らったように彼が戻ってきたのを感じとった。直接向かうほどの暇はなく、緊急事態特例として小精霊を向かわせる。同じように各所に指示を出すため、副指揮官とでも呼ぶべき担当者はまだ館についていない。今この場を離れるわけにはいかないのだ。
そして小精霊に導かれ、すぐに彼もやってきた。
「エンシェントエルフ様よりあなたの指示を仰げと言われました。転移で最前線に行けとも言われましたがまずはどうしますか?」
「この里から一緒に向かう冒険者が1パーティいる。ギルドに彼らを迎えに行ってくれ」
「了解です。少し寄り道してエルメラさんのところに武器を取りに行っても構いませんか?」
「……5分以内に済ませよ」
「ありがとうございます。では『スピードエンチャント』」
ここで5分を惜しんで戦力が下がってしまっては意味がない。そう判断し許可を出した。彼はすぐに自身にバフをかけて館を後にした。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
龍人 (20) 死龍人(20)
有効職業
聖魔??の勇者Lv20/?? ローグ Lv64/70
精霊使いLv32/40 舞闘家 Lv59/70
大鬼人 Lv20/40 上級獣人Lv15/30
魔導士 Lv81/90 魔人 Lv12/20
探究者 Lv31/99 狙撃王 Lv1/90
上級薬師Lv1/80
非有効職業
呪術師 Lv1/80 死霊術師Lv1/100
アーマーナイトLv1/99 剣闘騎士Lv1/99
上級龍人Lv1/30 死龍王Lv1/30 』
気が付けば1月もあいてしましました。遅れてしまいすみません。
体調不良ありワクチンあり友人の結婚式あり夜勤あり法事あり仕事ありともう大変でした…
ではまた次回




