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マナの転移物語です14

今回もマナ視点です。ご注意ください。

「私が教える魔法たちは上位魔法と呼ばれる、少なくても900年以上前の魔法使いたちが使っていた、失われてしまった過去の(・ ・ ・)魔法です」


 私は、真剣な表情でトーチさんに上位魔法の話を始めた。


「過去の魔法? 失われたってなんで?」


「私も全部を知っているわけではないんですが、これから教える魔法たちはすべて、ここ900年の間に失われてしまった魔法なんです。何でかってところは知りません」


「それだけ難しい魔法だから失われたってことじゃないの? 3日前に見せてもらったあの魔法でも相当な実力がないと制御どころか発動すらできなさそうだったし」


 トーチさんが言うように、上位魔法は普通の魔法とは難易度がけた外れに高い。『力』でベルゼブブを喰らったことで暗黒魔法を使えるようになったメイや、棺桶の『力』の補助を受けて聖氷魔法を操るヒツギ。そして獄炎魔法を使う私もそうだけど、全員が制御にはかなり苦労した。ヒツギも使いだしたのは最近だったし、それも棺桶に聖氷属性を纏わせることがメインで、ヒツギ自身が使うというのはメイを苦しめたあれが初めてだったと思う。


「私の周りには異常な人が多かったので何とも言えないですが、普通の人だと無理でしょうね。でも、ただ難しいというだけなら存在が忘れられるなんてことにはならないはずなんですよ」


 上位魔法の現在について、1つおかしいと感じていたことはそれだ。

 上位魔法が難しいから扱える人間が減っていき、結果として使える人間がいなくなったというだけなら全然理解できる。でも、この世界ではそれだけにとどまらず、資料などもその大多数がなくなっている。私とメイが館の地下で見つけた資料も、地下倉庫の隅にポツンと置いてあったのをメイがたまたま見つけたからよかったものの、メイというイレギュラーが呪いの元になってしまっていたカルアちゃんの素体を対処しなければおそらく見つからないままだっただろう。


「トーチさん、今から単語をひたすら羅列しますけど、その中にいくつ知ってるものがあるか答えてもらえますか?」


「知ってるっていうのは聞いたことがあるとか、何かの資料で見た気がするとかそれくらいでもいいの?」


「はい。むしろ、見た気がするってところが大事なので」


「はーい。いつでもどうぞー!」


「では。闇魔法、光魔法、火魔法」


「ちょいちょいちょいマナちゃん? 光魔法や闇魔法なんて誰だって知ってることだよ? どうしたのさ」


「上位魔法と言うのは、その名の通り基本属性である闇、光、火、風、土、水、氷、時空の上位属性を操る魔法なんです。なので順番を意識してもらった方が思い出しやすいかなって思いまして」


「なるほどーと言いたいところだけど、雷魔法には上位属性はないの? 時空と雷の2つは私は適性が全くないから使えないけれど、上位魔法があって、それが私にも使えるかもしれないというのならそのための魔道具を探すことも視野にいれるんだけど」


「風魔法が使えて、雷魔法は使えないんですか?」


「残念ながらそうなんだよねー。私が使える属性は闇から始まって光、火、風、土、水、氷の全7種類。だから『七色の魔法使い』なんて異名がついてるんだよ?」


「異名の件はあまりピンときてないですが、雷魔法が使えないっていうのはちょっと気になりますね。私が知る限り、雷魔法は本来は雷光魔法という名前で、風属性の上位魔法なんですよ」


「えっ!? そうなの?」


「はい。風属性の上位魔法に当たるのは2つあるらしくて、雷光魔法と分解魔法がそうです。どうして雷光魔法だけが今も残っているのかはわかりませんが、私が聞いたのはそうでした。実際、雷魔法を調べ()ると風属性の名残といいますか、その構成が随所に見られますし」


「構成とかそのあたりは2級資料には多少書いてあったはずだよ。今の魔法学だと基本属性は時空と雷までを含めた9種類だけど、風魔法と雷魔法の構成要素の類似性を根拠として、基本属性が8つだっていう論文を書いた人物がいるんだ。その論文だと雷魔法は固有魔法の一種であるって結論づけていたっけな。あまりにも多様な種族、そしてモンスターが使えるからって論破されちゃっていたけど。でも、そうやって聞くとその理論は結論がおかしかっただけで途中まではあっていたかもしれないんだね……」


「実際、私も直接使っている人たちがいた時代の話を聞いていたから上位魔法ってすんなりと理解できてますけど、普通に考えたら固有魔法だと考えますからね。仕方ないかと。それより、続けていいですか?」


「あ、どうぞどうぞ。でも、基本属性はいいからね?」


「一応さっきの順番の通りに言いますので、今度は最後まで言ってからでお願いします」


「はーい」


「上位魔法として聞いているのは暗黒魔法、聖魔法、獄炎魔法、聖炎魔法、溶岩魔法、雷光魔法、分解魔法、還元魔法、大地魔法、毒水魔法、聖水魔法、氷河魔法、聖氷魔法。以上ですがどうですか?」


 私が知っている全ての上位魔法を連ねると、トーチさんは口元に手を当ててしばし考えこむ様子を見せた。自分の記憶をたどっているけれど、あまり芳しくないようだ。


「……ほとんど聞き覚えはないかなー。『魔法学園』のギルドマスターとしては情けない限りだけど」


「そんなとんでもない! 私だって上位魔法のことが書いてある書物なんて今持ってる一冊だけですし、900年も昔の人間と話す機会なんて普通ならありえないですから」


「でも、大地魔法と還元魔法だけはたしか一級資料の中に載ってるものがあったはず」


「どんな資料なんですか?」


「御伽話だよ」


「……御伽話?」


「まあただの御伽噺じゃなくて、『消された英雄の』って言葉が頭につくけどね」


「……『名もなき物語(ネームレス・テイル)』ですか? その中に大地と還元、土魔法の上位魔法の名前が出てくるんですね」


「マナちゃんなら許可も出してるし、いずれ読むことになってあの2人から聞くことになると思うから言うけど、『名もなき物語(ネームレス・テイル)』、『国を盗んだ幻影大泥棒(ファントムシーフ)』。ベスティア獣神国が今の状態になるはるか前、大小様々な国に分割されていた時代のお話でね。今残っているのはベスティア獣神国で厳重に管理された数冊と、ここの一冊だけ。国王様によると、王家の罪がそこに記されてるって言ってたっけな」


「その話の中でその大泥棒が使っていた魔法なんですか?」


「たしかそんな魔法を使ったっていう言葉だけが出てたはず。まあ『嘘か真か、それは誰にもわからない。それこそが幻影(ファントム)の名を冠す者なり』。なんて一節があるくらいだし、どこまで魔法だったのか幻覚だったのかはわからないけど、魔法だったんだろうね」


 幻影大泥棒、ファントムでありシーフ。ヒツギのかつての仲間の中にそんな人がいたはずだ。怠惰(スロース)のエルギウス・ファントム。私が見たのは仮面をつけた猫獣人の姿だったし、あの黄龍ちゃんを一対一で相手どれる実力者だ。『名もなき物語(ネームレス・テイル)』の題材となった英雄たちは、全員が七つの大罪の名を持っているっていう仮説を勝手に考えていたけど、その人物であればますます仮説が真実である可能性が高くなってきた。


「……その、さっきからちょくちょく話を聞いた(・ ・ ・)って言ってるけど、誰に聞いたの? 900年って年月も随分中途半端だし」


 考え込む私に、トーチさんが遠慮がちに尋ねた。


「1人は私が初めて出会った魔族で、もう1人は900年前のこの世界に呼ばれた私の元仲間。魔王が私たちのところに来た最大の理由にして、私が殺す(・ ・)べき(・ ・)女です」


 私は、最高の笑顔で、そう答えた。 


どうもコクトーです。


今回もマナ視点ですのでステータスはなしです。


先週は投稿できずすいませんでした。普通に書けなくて…


世間は大変なことになってますね。自分も交代で出社は必要ですがテレワークになりました。必要に応じてちょこちょこ出社がいりますけどね。夜勤もあるし…

作者のどうでもいい現状はさておき、いつも誤字脱字報告ありがとうございます。何というか多すぎてすいません。


ではまた次回

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