死の草原です3
アンデッドたちが動き出したことで戦いが始まった。
人間のアンデッドたちは指示なのか生前の名残なのか、すぐには仕掛けてこず、戦闘における役割ごとにある程度固まろうと動いていたが、アンデッドオペラウルフたちはそれぞれが俺たちの方に突っ込んできていた。
「黄龍!」
「まかせるのだ! おちろいなずま、ゴロゴロー!」
それぞれが迎撃のために武器を構える中、黄龍の気の抜ける掛け声とともに上空に小さい魔法陣が生まれ、そこから的確にアンデッドオペラウルフたちを狙って雷が落ちる。目視してからかわせるような攻撃ではなく、全ての雷が直撃する。アンデッドオペラウルフたちは残らず地面に倒れた。中には黄龍の雷の熱で体の一部が溶け出しているものまでいた。
「どんなもんだい!」
黄龍は頭の上にすーっと降りてくると、いつもの仁王立ちで元気に笑った。とりあえずは様子見もかねてアンデッドオペラウルフだけを攻撃してもらったが、元となったオペラウルフ自体がさっき攻撃した感じだと耐久性はなさそうだったしこれくらいかと納得していたところ、倒れていたアンデッドオペラウルフたちが少しずつ動き出していた。
「無駄無駄ー。よっと」
エルフの女が杖を振ると、ゆっくりと動きだしていたアンデッドオペラウルフたちが、損傷はそのままに急に元気をとりもどした。足がないのはまだましな方で、頭が溶けているやつや目玉が飛び出しているやつまでいてアンデッドにしてもなんで動けるのかわからないほどに朽ちているものまでいる。
「ちちさま、こわいよー!」
黄龍はめっきり怖がってしまい、俺の頭にがっしりとしがみついて震えだしてしまった。微妙に首ががくがくして気持ち悪くなりそうだ。
コルクとヒメが近づいてくるやつらを遠くに飛ばしてくれている間に俺たちはお互いの声が聞こえるくらいの距離まで集まった。
「なにあれ!?」
「アンデッドならば頭を砕けば動かなくなるもんなんじゃがのう。普通ではないみたいじゃ」
「完全に潰しても動きそうだね。私は相性が悪そう」
「とりあえず俺があいつら引きはがすから、ヒツギとユウカはアンデッド以外を相手してもらえるか?」
「それがよさそうだね。黄龍ちゃんの火力でだめとなると私の炎も意味ないかも?」
「倒したつもりだったのが蘇るよりは、倒せてないけど動けないって程度に燃やし尽くしてくれ」
「了解」
「とりあえず行くわ」
黄龍に降りてもらって、俺は連続の『小規模ワープ』でアンデッドたちの間を抜けてエルフの女に手が届くところまで飛んだ。
「『獣の一撃』」
まずは多少なりともアンデッドの統制を乱そうとエルフに殴りかかった。しかし、その攻撃はヴァンハルトに受け止められた。一応巨人族すら殴り飛ばせる一撃なのだが、まさか片腕で防がれるとはな。
「どっせぇえい!」
横からドワーフののこぎりが迫ってきた。よく見ると両刃の刃が回転しておりチェーンソーのようで、俺はステュラで受け止めるのは諦め、『小規模ワープ』で上に飛んでそれをかわすとともに周囲に10発『ダークランス』を展開した。
「ご飯だー!」
声が聞こえた瞬間、即座に『空蹴り』で後ろに下がると、さっきまでいたところを大きな口を開けた真ん丸の男が通過した。その際、明らかに口の大きさよりも広い範囲の『ダークランス』が飲み込まれていくのが見えた。
普通に地面に着地した俺に対し、真ん丸の男はぽよんぽよんとお腹で地面をはねて、たまたまそこにいたアンデッドの冒険者の上にお尻から着地した。
「んぐんぐんぐんぐ、ごっくん!」
飲み込んだ『ダークランス』が口内で暴れているのは間違いないが男はそれでもお構いなしにそれらを咀嚼し、そのまま飲み込んだ。
「あーおいしい」
なんか余韻に浸っている男は無視して、ドワーフに『剣閃』で斬撃を飛ばしてヴァンハルトに向かって走り出した。
「うれぁあ」
ドワーフはその斬撃をのこぎりで砕いていた。ヴァンハルトは俺を迎え撃つように構えている。俺は『ダークナックル・纏』で強化して『獣の一撃』で攻める。しかし、俺の攻撃はすべてヴァンハルトに防がれていた。
「死んじゃえ!」
さっき地面から出てきたものと同じとげが背後から伸びてきた。一旦ヴァンハルトの相手を諦めて上に飛ぶと、そこにドワーフののこぎりが襲ってきた。だが、その攻撃はマナがマジックハンマーでドワーフ自身を殴って止めてくれる。
俺は『空蹴り』と『小規模ワープ』を連続で使ってマナたちの方まで下がった。
「どうじゃ?」
「強いな。なんかおかしいくらいに」
俺のように大量のスキルで強化できたりもするし、絶対というわけじゃないのは間違いないが、それでもやつらの強さはおかしかった。近くで見てみて昨日のボスの宝箱で出たやつのような自身を強化できるようなアクセサリーは見つけられなかった。服に隠れている可能性もあるけど、4人とも首にひもやチェーンも見当たらなかったから、それもなさそうな気がする。
「あの丸い男は魔法を食べる能力でもあるみたいだからいいにしても、他のやつはおかしいと思う」
「おかしいって言うのはひどいんじゃないのかな?」
俺の声にエルフが反応してきた。さっきみたいにある程度大きな声で話していたならともかく、今の声は明らかに聞こえないくらいの距離はある。ゾンビが声を中継でもしているのだろうか。
「私たちの強さにおびえてるその姿……最高!」
エルフが話している間はアンデッドたちもこちらを威嚇するように止まっているからアンデッドを操るのと並行して何かはできないんだろう。
「でも、もっと好きなことがあるんだよねー」
「おい、言い過ぎは」
「じゃーん、これなーんだ」
エルフが服の首元を下げると、そこにはヒツギにはない谷間のすぐ上に何かの球体が埋まっていた。
「かう! かうかう!」
それを見たとたんに足元でヒメが吠え始めた。
「なんでそっちのチビ虎ちゃんが反応してるのかは知らないけど、これすっごいものなんだよねー」
「あまり言いふらすものではないのだぞ」
「ええー。これが何なのか知って、さらに絶望する姿が最高なんじゃない。ヘイクも前ドヤってたよね?」
エルフに視線を向けられたドワーフが視線を外すのを見て呆れながらもヴァンハルトが説明を引き継いだ。
「『闇の爪』には特殊な能力や魔法を持ったやつがたくさんいてな。例えば……壊れた道具を修復する能力とか」
「それで、そいつが直した道具を体に埋め込んでるってことか?」
「まあそうなるな。人によって埋め込む位置の違いはあるが、埋め込んだ者の能力を数段階上昇してくれる素晴らしいものだ。どこかのダンジョンから破片が回収されて修復したものでな。我々はこれを魔王珠と呼んでいる」
「魔王珠……」
ヒメが怒るように吠えていることと、やつの言っていたダンジョンから破片をという話を考えると、『アントホーム』でヒメが砕いたものがそうだったんじゃないかと思い始めていた。
あの時、アンナの元になった真アンセスタークイーンアントが取り込んでいた物はもっと大きく、そして禍々しいものだった。そして最後には力を求めすぎて逆に飲まれかけていたが彼らもそうなる可能性はある。できれば完全に破壊しておきたい。ヒメの様子を見ると喰らうのはまずそうだしな。
「いろいろ話を聞きたいところじゃのう。少なくともその魔王珠とやらはさすがに危険じゃ」
「私も気になるかな」
「あたしたちに勝てたら教えてあげてもいいよ。ま、勝てたらだけどね。魔力の回復も終わったし!」
再びエルフが怪しく光る杖を掲げた。これまであまり動いてこなかった冒険者のアンデッドが動き出した。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
有効職業
聖???の勇者Lv15/?? ローグ Lv42/70
重戦士 Lv45/70 剣闘士 Lv41/60
神官 Lv35/50 龍人 Lv5/20
精霊使いLv12/40 舞闘家 Lv12/70
大鬼人 Lv5/40 上級獣人Lv3/30
魔導士 Lv5/90
非有効職業
死龍人 Lv1/20 魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99 狙撃王 Lv1/90
上級薬師Lv1/80 』
忙しいのが少し落ち着いて風邪ひいてました…。
でも、昨日一日寝てたおかげで回復しました。ほんと頭回らなかったんですよ…。
戦闘シーンは好きですが複数人数での戦闘はやっぱ難しい。
ではまた次回




